奮闘の杉並区――災害救助と地方自治体

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南相馬市第二庁舎内にて。真ん中が石橋さん

 南相馬市と30年以上の親交を結び、平成17年には「災害時相互援助協定」も結んでいる杉並区。震災発生後、いち早く援助体制を整え、物的支援などを行ってきた。義援金募金も区をあげて協力し4月には1億円を突破。5月に入ってからは人的支援にも乗り出し、南相馬市役所に職員派遣をスタートした。

 今、南相馬市に常駐している職員は7名。4名は区役所内の各部署から持ち回りで1週間の短期派遣の態勢。短期派遣の職員は、南相馬市内の避難所や社協などの現場で、物資の仕分けのような作業を担当している。残り3名が3カ月長期派遣で、現在は市内の産業の復興計画の手伝いのため、市役所の経済部に入っている。主な仕事は市内の産業復興の実態調査だ。どれくらいの人が戻り、どれくらい操業を開始しているかを把握し、今後の復興体制を整えるために役立てる。

 派遣されている区職員の石橋さんによると「職員派遣では長期で入ることが大切」で「最低でも1カ月は必要」だという。激甚な被害を受けた自治体では職員が3カ月経とうとしている今なお休みなく復興のため働くなど、職員の“疲弊・疲労”が大きな問題となっているが、今回の長期派遣もそれに応える形のものだ。「少しでも現地の自治体の職員の方が休みを取れるようにしたい」と石橋さん。「同じ基礎自治体で、仕事は似通っているものの違うところも多々ある」。例えば杉並区の産業の多くはサービス業で、対する南相馬市は製造業・建設業が多い。「勝手が分からない点もあるし、言葉が分かりにくいこともある」と若干の苦労はある。しかし、「原発事故が収束しないため、一向に先が見えない状態ですが、一刻も早く、みなさんが元の仕事に戻れるようがんばりたい」。

 こうした長期派遣の必要性は今後ますます高まっていくが、実はネックになるのが「災害救助法」(以下救助法)だ。救助法では、都道府県知事を介しての援助依頼、そして支援と定められており、実際の支援運用に時間がかかり過ぎるのが問題だ。もっと基礎自治体同士が水平間でスピーディーに援助を行うため、杉並区・南相馬市とともに災害時相互援助協定を結ぶ群馬県東吾妻町、新潟県小千谷市、北海道名寄市の首長が「自治体支援スクラム会議」を結成し、被災地援助を進めながら、4月8日には管首相宛てに救助法の改正を求める要望書を出した。

 被災地の復興には、長い時間がかかる。被災を免れた東京に暮らす人も、さまざまな物資不足から、地方と東京が実は非常に密接だったことも実感したはずだ。東京23区を始め基礎自治体レベルでの積極的な支援、そして、その自治体を支える読者のみなさんの気持ち、支援が求められている。