長島昭久のリアリズム 第十一回





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「海洋国家日本」の外交・安全保障戦略(その8)



 前回述べた日米共同の動的抑止力をどのようにアジア太平洋地域の戦略環境に対応させるべきか。とくに、これまで数回にわたって詳述してきた中国の戦略的な意図に鑑み、第一列島線と第二列島線の間の広大な海域(ここは、米国向け物流の太平洋航路が輻輳し、米軍のパワー・プロジェクション進路にあたる重要な海域)における日米共同の警戒監視能力を充実させ、中国による同海域の聖域化を許さないという断固たる姿勢を示していくことは重要だ。

 また、我が国本土と台湾とをつなぐ南西諸島は、中国海軍の太平洋進出を扼する関門のような位置にあり、平時においては中国人民解放軍(PLA)海軍の北海艦隊、東海艦隊の動向を掌握しながら、有事においては中国艦隊に対する日本にとっての接近・地域拒否(A2/AD)能力を駆使した「防護壁」をここに構築していく必要がある。パワー・プロジェクション能力の再構築をめざす米軍の新たなエア・シー・バトル戦略との連携を深めて行くために、我が国は、次期中期防衛力整備計画で潜水艦を増強し、新たな次世代戦闘機の取得を決定したのだ。

 いずれにせよ、米国との連携・協力を緊密化させることにより、東アジア・西太平洋の平和と安定に積極的に貢献し、米国が背負っている米軍の前方プレゼンスに伴う膨大な負担を地域の同盟国・友好国間で分担する必要がある。同時に、米軍の前方展開兵力との戦略・政策・作戦の各レベルにおける緊密な協力の枠組をより精緻に組み上げて行く。そうすることで初めて、効果的で、持続可能な米軍の前方プレゼンスを支援する多国間システムの構築が可能になるであろう。私はこれをHost "Region" Support(受け入れ「地域」支援)と呼ぶ。

 日本は、西太平洋における米国の同盟国や友好国との間にHRSのメカニズムを構築するための政策調整をリードすべきである。HRSは、各国バラバラのHost "Nation" Support(受け入れ「国」支援)を地域全体で再配分することによって、東アジア・西太平洋の安全保障基盤を安定化することに大いに貢献するはずだ。もちろん、日本のリーダーシップで、このような試みがなされれば、中国の警戒感を煽ることは必至といえる。しかし、このHRSのアイディアは、いかなる国の参加を排除するものでもない。いかなる国であっても、①米軍のプレゼンスが地域の安全保障のために価値があるとみなし、②この負担の一部を自国で受け入れる意思さえあればいつでも参画し得るのだ。