鈴木寛の「2020年への篤行録」 第5回 新知事が着目すべき「絆」の力

 ソチオリンピックも、浅田真央さんは残念でしたが、メダルも8個獲得できてよかったです。3月から始まるパラリンピックもみんなで応援しましょう。
 早いもので都知事選が終わって、まもなく1か月になります。新知事が舛添さんになったことで、2020東京オリンピック・パラリンピックを返上しなくてすみそうです。ようやく知事も決まりましたので、オリンピック・パラリンピックの準備の遅れを、一挙に挽回していかねばなりません。

 今のところ新知事の動きにそつは無さそうです。13兆円の補正予算案のうち、選挙中の公約を反映できたのは77億円にとどまりました。年度末の選挙でしたので、本当の意味でのお手並みは再来年度の予算からになりますが、自転車レーンの推進計画の調査費等として2000万円を計上するなど、独自色を少しでも出そうと工夫しています。東京は先進諸国の大都市のなかでも、自転車レーンの整備が遅れています。自転車の活用を主張するNPOが知事選中に各候補に対し、公約化を求めていましたが、就任早々、NPOや市民団体の要望に応じた動きをみせました。

 一方、自民党、公明党を始めとする手堅い組織選挙での圧勝だった分、特定の支持母体におもねらないか心配もあります。ただ、就任早々、自民党の憲法改正草案について「『国防軍』はダメ。せめて自衛軍までだ」などと手厳しく批判して周囲を驚かせました。リベラルな国家観をお持ちの舛添さんらしく、是々非々の姿勢は貫いていただきたいと思います。

 前々回でも申し上げたように、新知事の大きな仕事は急激な高齢化への対策。震災対策も喫緊の課題です。厚労相経験者ですから行政手腕は折り紙つき。高齢化対策の公約を見ると、「予防医療・認知症対策の拡充」「特別養護老人ホーム、ケア付き住宅等の高齢者向け住居の増設」などを掲げています。また、防災については「木造住宅密集地域の改善」「防災・維持更新を中心としたインフラ整備の効率化」などを進める意向を示していました。当然のことながらハード面の整備は重要で、老朽化した首都高の建て替えのような大型プロジェクトは、オリンピック・パラリンピック開催準備の流れを最大限に活用すべきです。個人的には、日本橋の上にかかる首都高速道路をぜひ取り払ってもらえば、青空に開かれた日本橋界隈を新しい東京の観光名所にしていけると思います。テムズ川やセーヌ川に負けない、東京の風情となることは間違いありません。

 さらにソフトパワーも欠かせません。一人暮らしのお年寄りの孤独死を防ぎ、大震災直後の自力救助のためには、日ごろから隣近所で助け合い、見守り合うことが求められます。しかし現実の都会生活では、人間関係が希薄化しています。かつて私が、地域住民が学校の運営に参加する学校コミュニティづくりを進めてきたのは、実はいざという時に助け合える関係性を再構築することが「裏テーマ」でした。都知事選で家入一真さんが「居場所づくり」を公約に掲げていましたが、私と同じ問題意識からでしょう。舛添さんなら、人の絆の力は重々承知していると思いますが、私からも追々提言していきたいと思います。

(元文部科学副大臣・前参議院議員)