映画『予告犯』の約1年後を描いたドラマで主演 東山紀之

6月6日に全国でロードショー公開される生田斗真主演の『予告犯』の連動ドラマがWOWOWで6月7日から放送される。主演は生田の先輩であり、時代劇から現代劇、舞台など俳優として幅広い活躍を見せる東山紀之。ネット上で闇の裁判を行う謎の覆面男・シンブンシの正義と悪、表と裏という2つの人格を演じる。

クライマックスの膨大なセリフ量に、初めて照明さんに愚痴りました(笑)

 頭に新聞紙を被り、この国にはびこる巨大な悪を自らの手で裁くというシンブンシ(東山)が、ネット上に再び現れたところからストーリーは始まる。映画『予告犯』の1年後を描く同作品では、模倣犯と思われたこの人物の正体が、現役の裁判官という意外な展開に。東山は、法律にのっとり正義を貫く裁判官でありながら、法律では裁かれない人を己の正義のために裁く裏の裁判官でもあるという難しい役を熱演。

「シンブンシと呼ばれている佐久間という人間は、裁判官ですから自分自身も正義のはずなのに、司法に巣食う悪をやっつけるために、あえて悪になるという覚悟を持った男です。ネットを使って公開裁判を行うという、決してやってはいけないことをやっているのが、本当の裁判官だったというところが1つのポイントでしょうね。やってはいけないと言いましたが、人として共感できる部分はもちろんあります。しかしそれは間違ったことだと佐久間も知っていますし、自分の中にある正義感との戦いに本人もさいなまれながら、やっと覚悟を決めたんじゃないでしょうか。僕は法律は非常に冷たいものでもあると思う。法にのっとってすべてが進んで行くので、そこには情はない。ただ佐久間は情を持っているんです。その佐久間の根底にある優しさを常に忘れないようにはしていました。また、彼は悪魔のように見えるかも知れないけど、そういう気持ちを持たないと、自分自身を納得させられないだけで、決して悪魔ではない。それを大事に演じていた感じはありますね」

 最後の大どんでん返しもだが、1話ごとのスリリングな展開に、視聴者も驚きの連続だ。

「すべてが最終的にはつながっていきますが、1個1個の裁判は愉快犯のようにやっているので、どうつながるかは予想ができないかも。実際、佐久間は目的があり、最終的に自分の中にある正義感で悪をやっつけていくんですけど、そのつながり方が見事だなと思いましたし、非常に筋が通ったエンターテインメントになっていると思います。またWOWOWのドラマは、そこまでやってもいいんだという表現をさせてもらえるので、思いっきり演じることができました。“必殺仕事人”のネット版じゃないですけど、ほかの俳優さんも言ってましたが、現代に即した話題をいろいろな制約をとっぱらって演じられるのは、非常に有意義なことだと思います。素晴らしいスタッフが質の高いドラマを作ってくれるというのは、WOWOWのチャレンジだし、僕らも一緒にチャレンジをしたいと思わせてくれる作品が多いので今回このドラマに出会えて良かったし、やりがいを感じました」

 見所のひとつは、大先輩村井國夫演じる花山との対決シーン。

「現場は映画のスタッフの人たちが多いし、セットや照明など、連続ドラマの作り方とは全然違うなと感じました。地上波の連ドラはスピードが早いですが、それに比べてじっくり撮っているので、映画をやっているような感覚にさせてもらえた。ひとつひとつのシーンにじっくり取り組めて、とてもいい空間でした。今思うと、狂気の世界だったなと思う時もありました。それは村井さんとの対決シーン。そこだけで3日間かけています。年末の3日間で、すごく寒い日でしたが、スタジオは熱かった。そしてとてもいい時間を過ごせました。とにかく村井さん演じる花山を追い込んで、追い込んで、追い込んで戦っていく。先輩と勝負する時って、向こうも“この野郎!”っていう気迫でくる。お互いに、ああしよう、こうしようと話し合いながらひとつの作品を作っていくのはお芝居の醍醐味ですし、そういうところに喜びを感じます。ただね、セリフの量が尋常じゃないぐらい多くて喋っても、喋っても終わらない(笑)。大分喋って、順調にいっているのに、ずっと村井さんとやり取りをしている。だから初めて照明さんに愚痴りましたよ“いつになったら終わるのかな”って。そしたら照明さんが“頑張りましょう”って(笑)」

 村井以外の共演者について。

「(市川)実日子ちゃんとは以前『喰いタン』というドラマでご一緒したんですけど、真面目な僕を初めて見たって言ってました(笑)。彼女も雰囲気がありますし、とてもいい空気を出してくれるので、助かります。ああ見えてゲラなので、変な事をするとゲラゲラ笑い出す。そういうところもいいムードメーカーになってくれて、現場を和やかにしてくれました。緊張感のある芝居の中でも、そういう空気の変化は必要なので、とてもよかった。何を言っても笑ってくれるから、俺は面白い人間なんじゃないかと勘違いしちゃうぐらい(笑)。とは言っても作品が作品なので、ある程度の距離感は取っていました。桐谷(健太)君に “ラーメンを食べに行きましょう”って言われた時は行きましたけど(笑)。僕がおごりますからっていうから行ったんですけど、市川さんと橋本(さとし)さん、そしてスタッフの人たちもいると桐谷君に奢らせるわけにもいかなくて、あいつのせいで余計な出費をしてしまった(笑)」

 後輩たちからミスターストイックと言われるほど体型や体調の管理が常に万全な東山のリフレッシュ法はなんと仕事。

「いろいろな作品をやるのがリフレッシュですね。作品ごとにテイストが違うので、気分新たにできる。現場もスタッフの人も違うとすべてがリフレッシュされます。真面目? と言うより常に動いていないほうがストレスなんです(笑)」 (本紙・水野陽子)

WOWOW 日曜オリジナルドラマ
『連続ドラマW 予告犯—THE PAIN—』


6月7日(日)スタート(全5話)[第1話無料放送]毎週日曜 夜10時【出演】東山紀之、戸田恵梨香、桐谷健太、市川実日子、橋本さとし/光石研、大西信満、池田成志、三浦誠己、村井國夫 ほか
©WOWOW ©筒井哲也/集英社