中国伝統演劇の演出手法を取り入れたシェイクスピア作品が上演

中国国家話劇院 『リチャード三世』の1シーン

中国国家話劇院 『リチャード三世』
 現在、池袋では東アジア文化都市関連事業として多くのイベントが開催されている。「東アジア文化都市」というのは、日本・中国・韓国の3か国において、文化芸術による発展を目指す都市を選定し,その都市において、現代の芸術文化や伝統文化、また多彩な生活文化に関連するさまざまな文化芸術イベント等を実施するというもの。2019年は日本は豊島区、中国は西安市、韓国は仁川広域市が東アジア文化都市に選定されている。

 数あるイベントの中でも「スペシャル事業」と位置付けられるものがいくつかあり、4月から池袋の東京芸術劇場で上演される「中国国家話劇院 『リチャード三世』」もそのひとつ。ちなみに日本初演でもある。

 同作は2012年に開催されたロンドンオリンピックの関連事業として行われた「ワールド・シェイクスピア・フェスティバル」の中でロンドン・グローブ座が企画した 37 の言語で 37 のシェイクスピア作品を上演する演劇祭「Globe to Globe」で上演された作品だ。

「中国国家話劇院」というのは2001年12月、中国青年芸術劇院と中央実験話劇院が合併して発足した国立の劇団。中国青年芸術劇院の前身の延安青年芸術劇院は1941年に創設されており、欧陽予倩(よせん)、廖承志、呉雪、舒強、金山、孫維世らの先達の指導、中央戯劇学院との密接な連携の下で中国話劇の伝統を現代に引き継いできた。そういう意味においては中国国家話劇院というのは中国で最も歴史があるカンパニーといえる。また2011年に880席の大劇場と300席の小劇場が落成。500人を越える俳優陣を擁して年間公演数は約1000回を数えるなど、規模的にも中国を代表する劇団として活動を続けている。

演出の王暁鷹

演出は中国現代劇の最前線を走り続けている王暁鷹が担当
 今回上演される『リチャード三世』の演出を務める王暁鷹は中国現代話劇の演出はもちろん、京劇、越劇など伝統劇とのコラボレーションにもトライするなど人気・実力とも中国現代劇の最前線を走り続けている演出家。

 イギリスでの上演時も中国の伝統的な演劇の技巧や文化的要素を盛り込んだ演出が「魅惑的だ」と絶賛され、高い評価を獲得。現在まで世界各地で上演や再演を続けている。

 シェイクスピアの作品は時代を超え、国境を越え、さまざまな場所で上演されているのだが、その時々で、そして演出家の自由な解釈でさまざまな顔を見せる。

 王暁鷹も今回の上演にあたり「シェイクスピア400年の演劇世界は、イギリスや西洋だけのものではなく、中国のものであり、日本のものであり、韓国のものであり、そして世界のものなのです。東方世界の表現様式によってシェイクスピアを上演することは、世界と共にシェイクスピアの楽しみを分かち合うことなのです」とのコメントを寄せた。

 果たして「中国」というフィルターを通ったシェイクスピアはどのような作品となっているのか…。同作は4月5~7日に東京・池袋の東京芸術劇場プレイハウスで上演される。