【インタビュー】池田テツヒロ「これは自分たちの話」と初めて演出家だけの仕事を受ける


 初演は見た?

「DVDで見ました。すごい面白かった。エンターテインメントでエネルギッシュ。夢破れそうになっている俳優たちを描いていて、さまざまな結末が待ち受けているんだけど、バッドエンドではなくて“大丈夫だよ”という気持ちになる作品だった。初演はテンポが良くアドリブもたくさんあって、それこそ1分に1回は笑わせていたんです。それを見てしまってちょっとプレッシャーは感じてます」

 まさにかつて自分が経験したようなお話。昔を思い出す?

「自分が住んでいた下宿は小劇場の役者が3人いた。思い出すし、正直、昔の仲間でまだこういうところに住んでいる人もいるし、自分だっていつ戻るか分からない。今考えてもやっぱり変な生活だったなって思うから、この登場人物たちには“変な生活だったら負けねえよ!”ってところはある。初演はギャグでガンガン押していたけど、今回は経験者ならではのリアリティーのある見世物小屋みたいな面白さを出せるかなと思う。

 売れない役者がいるところにぼんぼん役の松本君が飛び込んできて、という話なんだけど、お客さんは夢を持っている青年に自己投影するのかな? 演劇の世界に限らず今、自分があがいている人はまだ売れてない俳優側の目線で見るのかな? そこは分からないけど、とにかく自分がついつい感じてしまう悲壮感みたいなものをやめて、やはり希望を持てる形で終わらせたいと思っているのは、もしかしたら自分の願望なのかもしれない。今ちゃんとお仕事をいただいている自分でさえ、現状には全く満足していない。本当は、『表現・さわやか』のメンバーを全員売り出して、みんなが食えるようにしたかったという夢は完璧に敗れてしまっているわけだから」