コロナ禍でイエナカ需要拡大 「母の日」ギフトにも影響

 新型コロナウイルス感染拡大の影響によって外出を控える動きが広がるなか、自宅での過ごし方を楽しむためのいわゆる「イエナカ需要」が活発になっている。興味深いことに、来たる5月10日「母の日」のギフト市場にも差し響きがあるという。

「楽天市場でも、その傾向は顕著になっている」と教えるのは、ECサイト「楽天市場」を運営する楽天株式会社マーケティング部・角奈紡さん。母の日は、バレンタインやクリスマス、お歳暮など年間のイベントの中でも非常に大きなイベントになっていると続ける。

「母の日関連商品の売り上げは、この2年でプラス27.9%に伸びています」(角さん、以下同)

 2020年3月時点で、楽天市場では母の日関連商品を約300万点揃えている。バラエティ豊かな商品が集うが、人気が高いのは生花や造花、あるいはスイーツと組み合わせたフラワーセット。王道強し、そんなイメージが漂うが、どうやらそうとも言い切れない。

 というのも、この数年で母親と子どもの関係性に変化が訪れているという。下の表は、今年2月に楽天市場が行った、母の日ギフトを贈る20代~40代の男女300名と、60代~70代の母親200名を対象とした「母の日に関する意識調査」だ。

(出典:「楽天市場 母の日に関する意識調査」)


 母子間の会話において「いくらでも続く」が最多で、なんと約4割近く(38.0%)を占めていることが分かる。また、共通の話題を持つことで、約8割の子どもが、「母親との関係は良好になる」と考えている結果も明らかに。

(出典:「楽天市場 母の日に関する意識調査」)


 さらに、「母と会話をする時の話題は何ですか」との問いに対して、「母親と会話がいくらでも続く」と回答した贈り手(=子ども)と、「母親との会話が続く時間は30分以下」と回答した贈り手(=子ども)を比較すると、両群ともに、母と会話する内容の1位こそ「子どもなど家族の話」に。対して、2つの群の優位差が見られた話題として、「悩み事や困りごとの話(37.7pt差)」、「買い物や炊事など家事の話(33.8pt差)」、「健康に関する話(33.1pt差)」などが浮き彫りになった。ここ数年で定着化したイエナカ消費に加え、このような母と子の意識の変化もギフト動向に影響を及ぼしていると話す。

「家の中にいながらにして、母親の趣味の手助けとなるものや、母親の健康を考えた商品が人気になっています。例えば、フィットネス系やキッチン用品などの料理系などは好調な推移を示しています」

 同サイトの3月の売上を前年同期と比べると、「フィットネス・トレーニング+ 46.8%」、「ワッフルメーカー +224.7%」、「縄跳び +138.8%」、「ダンベル +100.8%」という具合に、家の中でも楽しめる商品群は上昇。

 興味深いところでは、自炊が増加しスーパーへ行く機会が増えたことで、「レジカゴバッグ+163.6%」、一人でも興じることができる「カラオケ機器 +3414.8%」など、明らかにコロナ禍の近時、外出自粛に伴う心理が働いていることがうかがえる。これらはあくまでイエナカ消費の前年同期比となるが、今年の母の日は緊急自体宣言の最中に迎えるだけに、その傾向はギフトにも反映されそうだ。

 また、同アンケートでは「嫁が姑に贈るもの」と、「姑が貰いたいもの」についても調査。“実は”姑が貰いたい母の日ギフトのランキングの1位が「一緒に過ごす時間」、2位が「一緒に体験できるギフト」、次いで「スイーツ」という点も見逃せない。嫁の立場の女性が、姑に贈る予定のギフトとして多く挙げたものが、「生花」「スイーツ」といった定番ギフトだった結果を考えるに、母と子に加え、嫁と姑にも変化の兆しが表れていると言えそうだ。

「楽天市場は、出品されている各店舗ご自身が独自の判断でラインナップを決めていきます」とは、角さんの説明。各店舗が先述したような消費傾向に鑑みて母の日関連商品を選ぶという。

「我々の方からは店舗様に、今年の母の日はこういうようなテーマを掲げますということや、今年のトレンド等を伝えさせていただきます。その中で各店舗様の戦略があり、それをもとに楽天市場を活用して母の日商品を販売いただく形になります」

 先述した「母の日に関する意識調査」を踏まえ、今年の楽天市場の母の日の方向性は、

「これまでは“母の日=母に感謝する日”といったイメージが強かったと思うのですが、今年はもう一歩進んで、「これからの母の人生をより豊かにする」というテーマがあります」

と語る。母の日と言えば、フラワージャンル、食品ジャンルが両横綱だったが、自粛を要請されている現在の状況が、さらにフィットネス・健康ジャンル、趣味ジャンルといったイエナカ商品を後押しすることは間違いないだろう。コロナは、母の日のギフト戦線にも影響をもたらしている。


(取材と文・我妻弘崇)