【インタビュー】千代田区長選に出馬表明の樋口高顕都議が語るコロナ禍での千代田区の問題

 東京都千代田区の石川雅己区長(79)の任期満了に伴う区長選が1月31日に投開票される。5期20年に渡り区政を担った石川氏は1月8日に不出馬を表明。それまでに元千代田区議の早尾恭一氏(59)、新人で会社役員の五十嵐朝青氏(45)が立候補を表明していたのだが、13日には東京都議会で最大会派となる「都民ファーストの会」の樋口高顕都議(38=千代田区選出)が出馬を表明した。その樋口氏に現在の千代田区について、そして出馬について話を聞いた。
千代田区長選への立候補を表明した樋口高顕都議(撮影・蔦野裕)

区政の混乱を憂う声に押され、立候補を決意


 まず今回、出馬を決意した理由をお聞かせください。都議会議員として、今、1期目。なかなか大きな決断ですが。いつ頃、何をきっかけに決断を?

「新型コロナウイルス感染拡大で、この1年、大勢の区民の皆さんが大変厳しい状況に直面しておられます。それは命の危険であり、事業や営業の危機です。そんな折も折、百条委員会に端を発する千代田区政の混乱と停滞が長期化しておりました。社会が未曽有の困難にある時に、政治に一番しっかり仕事してもらいたい時に区政が混乱していたわけですから、多くの皆さんが憂慮され、私のところにも“区政はこのままで本当に大丈夫なのか?”といった声が多く寄せられました。“樋口、立つべし!”との叱咤激励をいただくに至り、立候補を決意した次第です」

 現在、千代田区選出の都議会議員として活動していますが、そもそも千代田区との縁は?

「父が公務員の転勤族でしたので、生まれは長野ですが東京や千葉、1年余り徳島でも暮らしました。千代田区に住んでいたこともあります。私が5歳のとき、七五三は靖国神社でお祝いし、すぐそばの写真館で家族写真を撮りました。一昨年は娘の七五三があり、同じく靖国神社でお祝いしたのですが、当時と同じカメラマンさんが今も写真館を営んでいると知り、親子3代で家族写真を撮っていただきました」

 喫緊の課題としてはどういうことを考えていますか?

「まずは区政の刷新です。区民の皆さんが心の底から信頼できる区政でなければなりません。そのための大前提は、徹底した説明責任と透明性だと考えています。その上で、今、多くの方々が大変厳しい状況に置かれているわけですから、そのご苦労に寄り添ったさまざまな支援をタイムリーに実施できる体制を早急に構築しなければなりません。街の現場を歩けば歩くほど売り上げが激減した店舗や事業者の皆さんのご苦労を目の当たりにします。家計が苦しいという声も少なくありません。私は、区長報酬を2割カットし、不退転の覚悟で区政を刷新し、大変なこの時期の区政運営に取り組みたいと思います」

 そのコロナ対策については?

「小池知事と緊密に連携し、命を守り地域経済を守り抜く覚悟です。まず、シニアの方々と基礎疾患を持っている方の命を守らなければなりません。今年、インフルエンザワクチンは60歳以上無料にしていますが、接種率が8~9割と聞いています。これは例年にない高い数字で、シニアの方々の危機意識の表れだと思います。私はPCRの無料検査を定期的に受けられるようにすべきと考えています。シニアの方々だけでなく、同居のご家族や定期的に訪問する方も含めてです。また、都政と区政が緊密につながることで、例えば、発熱の相談から入院に至るまでの時間が短縮できるなど、もし感染してしまった場合にも、危険や不安を小さくすることが可能になると考えています」

 今回掲げた政策を見ると、子育てとか次世代を担う人材にも目を向けておられます。

「子育ては、これまでの区政でも取り組まれていて、千代田区は、比較的住みやすい、暮らしやすい、育てやすい街だと思いますが、その一方で、たとえば保育園には4月でないと入園できない、といった現実があります。しかし、出産時期は選べないですから。それから各種申請書の提出にもハードルがあって、働きながら子育てをしている人は、日中、区役所や出張所に行く時間がありません。これも一例ですが、まだまだ改善すべき事項が少なくありません。」

 コロナ禍での小中学校へのオンライン授業などの対応についてはどう考えていますか?

「国や都から財政支援があって、今は、ベースができた段階だと思います。端末を一人に1台、家庭でもWi-Fi等の環境整備が進んでいますが、それはツールの話であって、問題はここから先何をやるのかということだと考えています。学校に行かなくてもタブレットやパソコンで授業ができるということだけでは意味がない。そこから先、例えばAIを使ってノウハウを溜めたり、個々人に合わせた授業といったことを進めていくのが本来の方向性だと思いますので、千代田区版の新たな教育システムを今後検討していくべきと思っています」
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