「選ばれる性から選ぶ性へ」【36歳のLOVE&SEX】#3

 この数年女性向けの性産業に携わってきて最も感じるのは、女性が「選ばれる」性から「選ぶ」性へ変わってきたということだ。
 なにより、その方向へ変わりたいという意識の広がりを強く感じる。

 あえてここで書くまでもなく、これまで日本社会では、女性は結婚して家庭に入るのが幸せという価値観が強く根付いていた。

 そのために、おしとやかにしろとか、でしゃばるなとか、上品な立ち居振る舞いを求められることも多々あった。

 家庭にとって都合のいい嫁・母・娘であることを求められてきたのだ。

 だが近年、女性が社会で活躍できる場も増え、社会的にも経済的にも自立した生き方ができるようになりつつある。

 女性の自立については、アダルト業界も大きな影響を受けているように思う。

 女性向けAVが受け入れられ始め、女性向けのアダルトグッズも様々なデザインや用途、コンセプトのものが生まれている。

 女性向けの風俗もこの数年盛り上がりを見せ始めている。

 これらはいずれも、女性が自ら選択し、お金を払って価値を享受するサービスであり、社会的、経済的な自立はもちろん精神的にも自立しつつあることの証だと言えると思う。

 では、実際にはどのような女性がそういったサービスを利用しているのだろうか。

 女性向け風俗の現場で働くキャストに、お客様と触れ合う中で感じた女性の性に対する向き合い方について探るべく、話を聞いてみた。

 話を聞いたのは、SODグループで運営する女性向け風俗店「studioCH」でキャストとして働く横山ダイキさん。

 店舗オープン時から在籍し、ランキング制度が導入された8月からは6ヶ月連続してNo.1を獲得している。
今回インタビューした、studioCHキャストの横山ダイキさん。昨年の店舗オープン当初から女性向け風俗の仕事を始めた人気キャスト
―――まず女性向け風俗のキャストを始めたきっかけは?

 所属していたAVプロダクションの方から「女性向けの風俗っていうのがあるんだけど、どう?」ってお声がかかって。僕はその時に、女性向け風俗っていう存在をそもそも知らなくて、「そんなものがあるんだ」とそこで初めて知ったんですね。もともと大勢の人としゃべるよりは、一対一でしゃべるほうが得意だったので、もしかしたら向いてるかもしれないなと思って始めました。

―――どんなお客様が多いですか?

 年齢層でいうと、20代後半から、30代40代の方が多いですかね。僕からは聞かないので印象ですけど。

―――お客様はどんなことを求めて利用されるのでしょうか?

仕事を始めた時点では、性的な快感を求めてる方が多いのかなって思ってたんですけども、実はあんまりそうじゃなくて。些細な行動だったり仕草だったり、内面的な満足感とか、心の安定や癒しとかを求めてくる方が多いんだなって最近感じます。なのでテクニック的なことはもちろんですが、気付きみたいなところも意識してますね。

―――気付き、というと具体的にどんなことでしょうか?

 たとえば、仕事のお悩みを聞いたりしたら、次会ったときに、「こないだのはどうだった?」っていうふうに、一緒に悩みを共有できるようにしたりしますね。見た目だと、ピアスを変えたとか、メイクが変わったとかも、よく見るようにはしてます。本当に些細なことですけど。
でも全部が自分で気づけるわけじゃないと思ってるので、なるべく言ってほしいっていうように伝えてますね。要望だとかを伝えやすい状況を作るようにしてます。仕事を始めた当初から言ってたんですけど、言い続けてたら改めて、いつもと違う要望があったりとか、実はこんなことが好きだったんだってわかるということが、経験していくうちに結構あって。なので、聞き出すことが大事かなっていうふうに思ってます。

―――お客様が抱えている悩みは、性的なことが多いんでしょうか?それとも一般的な内容なのでしょうか?

 半々くらいな気がします。仕事だとか私生活の悩みがあって利用する方と、性的に欲求不満で利用するという方が、半々という印象的です。1~2割ですが、単純に風俗遊びが好きという方もいらっしゃいますね。

 男性の場合、身体的な快感が得られれば、ほぼほぼ満足されると思うんですけど、女性はたぶんそうじゃなくて、内面的な部分の満足を求めていくと、風俗にもどうしても私生活の悩みの解消というのが絡んでくるのかなっていう気がします。

―――それを踏まえると、お客様はどちらかというと、性に対して積極的っていうよりは、割と勇気を出して利用しているという感じなのでしょうか。

 そうですね。もう本当に、予約するだけでてんやわんやになる方もいらっしゃいますので。でも、たぶん逆の立場だったら同じように緊張すると思うので。より積極的になれるように、僕がサポートできる部分はしてる、っていう感じです。

―――回を重ねてお客様は勇気だせるようになってきてますか?

 そうですね。リピーターの方でも、利用し始めた最初と今とでは全然言ってくれることが違ったりして。

―――この女性向け風俗というサービスを利用して、お客様も変化していくっていう、むしろスタート地点なのかもしれないですよね。

 そうですね。

―――この仕事をして、女性に対しての考え方に変化はありましたか?

 ありました。自分の恋愛対象というか、女性として見られる範囲がすごく広くなったような気がします。以前はプラスマイナス3歳くらいが恋愛対象になるかなっていうイメージだったんですけど、10歳上でも20歳上でも気になりません。年齢関係なく、魅力的な人は魅力的だなっていう考えをするようになりましたね。

 あとはどういう形であれ、お客様が幸せになれるんであったら使っていただきたいですし、使わないほうが幸せになれるんだったら、使わなくてもいいと思います。お客様の幸せは一番に考えてますね。



 女性が自立するというと、男性を負かしたいとか、男性を支配したいということを連想する人もいるかもしれないが、そうではないと私は思う。

 特に性に関して、「自立した女性」という言葉からは、積極的で、男性経験が豊富といったイメージがあるかもしれないが、それは間違いで、自分なりのやり方で性と向き合うことができているという状態を指すのではないだろうか。

 横山さんの話を聞いてなおさら、以前よりも女性たちの中で、自立する勇気を持とうとする人が増えていることを感じた。

 今という時代は、それがグラデーションのように広がっていっているという段階なのではないかと思う。
2007年、新卒でソフト・オン・デマンド(株)に入社。
営業、マーケティング等の部署を経て、2013年に女性向けアダルトサイト「GIRL’S CH」を立ち上げ。以来、GIRL’S CHの現場リーダーとして、サイト運営・企画・広報に携わる。
現在は新規事業の立ち上げを担当。
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