人流は減っているのに感染拡大? 専門家の意見も聞かずに入院規制

7月30日、会見し緊急事態宣言の拡大と延長を発表した菅首相(写真:代表撮影/AP/アフロ)

 東京五輪開催中の7月30日、菅義偉首相が会見し、東京都と沖縄県に出されていた緊急事態宣言について埼玉、千葉、神奈川、大阪の4府県を追加し、北海道、石川県、京都府、兵庫県、福岡県に蔓延防止等重点措置を実施することを発表した。期間はそれぞれ8月2日から8月31日まで。東京と沖縄の緊急事態宣言も8月31日まで延長した。

 菅首相は東京都に4度目の宣言を発令する際「最後の宣言にしたい」としていたが、常に後手後手に回る緊急事態宣言にもはや効果はなく、人流はさほど減ることはなかった。

 しかし首相は30日の会見で東京都への交通規制、首都高の通行料の値上げ、テレワークにより人流は減少しているという認識を示した。人流が減少しているのに感染が拡大するのであれば人流以外の原因があるはずなのだが、首相は五輪が感染急拡大の「原因にはなっていない」と話した。

 また相変わらず人流を減らすための具体的な方法と目標については語らなかった。

「医療崩壊して救うべき命が救えなくなったときには首相の職を辞する覚悟はあるか?」と質問されると「私がこの感染対策を自分の責任のもとにしっかりと対応することが私の責任で私はできると思っています」と噛み合わない答えを返した。

 そしてその週末も感染拡大の勢いが衰えないと見るや、政府は今度は2日に医療提供体制に関する関係閣僚会議を首相官邸で開き、患者が急増している地域について、入院は重症患者や重症化リスクの高い患者に重点化し、それ以外の軽症患者らは自宅療養を基本とする新たな方針をまとめた。

 感染力の強い変異株(デルタ株)が猛威を振るう中、医療機関の病床が逼迫しつつあることを踏まえた措置。

 しかしこれには医療関係者から疑問の声があがり、立憲民主、共産、国民民主の3党の国対委員長は4日午前、この政府の新たな方針について、撤回を求めることで一致。与党からも撤回要求が出たが、首相は「撤回ではなく、しっかり説明するようにということだ。必要な医療を受けられるようにするための措置だから、丁寧に説明し、理解してもらう」と述べた。また適用先について「東京や首都圏など、爆発的感染拡大が生じている地域であり、全国一律ではない」と強調した。

 なおこの入院制限の方針について政府対策分科会の尾身茂会長は「政府とは毎日のように相談、連絡、協議をしているが、この件については相談や議論をしたことはない」と語っている。