小関裕太演じる草食顔クズ男子が「普通の女の子」をメンヘラ化させちゃう理由って…? 内田理央主演『来世ではちゃんとします2』第2話〈ドラマでしゃべりたい〉

イラスト・ミクニシオリ

 内田理央主演のドラマ『来世ではちゃんとします2』(テレビ東京、毎週水曜深夜0時40分)。8月18日に公開された第2話では、小関裕太演じるヒモ気質のタラシ男子・松田健にスポットライトが当たった。甘いマスクと柔らかい物腰で、数多の女の子を「ゆる〜く」たらしこんじゃう松田くんが、セフレガールのこじらせに巻き込まれちゃった結果……?

小関裕太がヒモ気質なクズ男子熱演

 小関裕太演じるクズ系ヤリチン・松田君は、内田理央演じる主人公・大森桃江ちゃんが働くデザイン事務所の同僚だ。会社ではスマートに仕事をこなす松田君だが、会社を一歩出れば、LINE履歴にはその日過ごせる女の子を探すための連絡先がズラリ。長身で細身、中性的なミディアムパーマヘアで、見た目はいわゆる「草食系」な松田君だが、今どきは男らしすぎる男性よりも、しつこすぎない塩系イケメンのほうが地雷度が高め……という世の中のクズ男事情が、しっかりドラマにも反映されている。SNSでも「フィット感が半端ない」「ベストキャスト」との声が高い。

 第2話では、そんな松田君の囲っているセフレガールズの筆頭・亜子ちゃん(小島藤子)とのこじらせバトルが勃発。松田君のずさんなLINE管理のせいで、亜子ちゃんに他のセフレたちや元カノとのLINE履歴を見られてしまう。仕事が忙しい松田君の急な誘いに応じちゃうばっかりの「都合いい系女子」の亜子ちゃんだが、松田君にはガチ恋している。

 主人公の桃ちゃんは、経験値の多さゆえか、本命のセフレボーイに対しても本気でわきまえてしまう部分があったが、亜子ちゃんのほうは彼女にはしてもらえないと分かっていても、松田君にメンブレ(メンタルブレイク)をぶつけてしまう。LINE履歴を見てメンタルが崩壊した亜子ちゃんは、翌朝松田君の手足をしばり、軟禁してしまうのだ。

 ドラマ内ではコメディー調で描かれているが、こういう男女関係のこじれはリアル世界でも意外とよくあることだったりする。例えばホストとホスト狂いの女の子の関係だったり、既婚者と独身の不倫関係だったり……愛情のパワーバランスが崩れると、途端に人間関係は簡単に崩壊する。

 

「普通の女の子」と「メンヘラ製造機」の相性の悪さ

 構図としては、亜子ちゃんが松田君を軟禁しているので、セフレでしかないのに立場をわきまえない「メンヘラ女子」に見えるかもしれない。しかし、亜子ちゃんも普段は昼間会社で働く普通のOLで、松田君を軟禁したあとも「とんでもないことをしてしまったのではないか」と後悔するような心情も見える。本気で愛に狂いきっているわけではないし、一般的な倫理観を持つ普通の女の子なのだ。

 しかし、松田君の振る舞いがあまりにも「メンヘラ製造機」すぎることとの相性が悪すぎる。松田君は桃ちゃんのセフレたちのような「ハイスペモテ男」とは異なり、スペックで男らしさを匂わせる男性ではない。しかし、とにかく上っ面が優しい。仕事が忙しい松田君のような男性は「今日が楽しければそれでいい」と思っている。妙齢の女性が男性に求めるような堅実さや誠実さを持つことを面倒に思っているし、顔がいいだけあって、上っ面だけでも優しくしておけば簡単に女性が一本釣りできちゃうので、表面的に女性に優しく振る舞うことが上手なのだ。

 情事後、重たい態度を取る女性に対し心底面倒そうな表情を見せながらも「やることはやっちゃう」のが松田君のような男なのだ。回数を重ねるごとに自分への好意を深めていく女性に対し、松田君は「どうして女はセックスすると、それ以上の関係を求めてしまうんだろう」なんてひとりごちる。面倒なら抱かなければいいのに、性欲には勝てないし、ストレス発散としては必要な部分もあったりするので、あまり深く考えず「まあいいか」とちょっとお高いサプリを飲む時くらいの感覚で、簡単に女性に手を出す。そんな男性に真剣さを求めたって返ってくるわけもないのだが、亜子ちゃんのような「普通の女の子」は、情事の後は愛が返ってくることが当たり前、と思っているので、思うように自分を愛してくれない松田君のような男にどんどん沼っていくのだ。

 飲み会に行くとよく「オレってメンヘラ女子とばかり付き合っちゃうんだよね」と武勇伝のように語る男性がたまにいるが、そういう男性はメンヘラ女性が好きなわけではなく、恋人との関係づくりや女性のメンタルケアが下手で、付き合うと普通の女の子のメンタルすら破壊してしまうのだ。シンプルに地雷すぎる。好きな人がもしそういう発言をしていたら要注意だ。

 

「都合がいい時に優しい人」は、自分を幸せにはしてくれない

 亜子ちゃんとの軟禁生活の中でも、松田君はとにかく亜子ちゃんのテンションを上げたり下げたり、悪気なく人を振り回しまくるのが上手だ。同僚からの電話では「今彼女の家にいるんだよね」と言い放ち、小耳を立てている亜子ちゃんの気持ちを盛り上げたかと思えば、元カノからの電話では「同僚と一緒にいるんだよね」なんて、息を吸うように嘘を付く。そうかと思えば、仕事終わりの亜子ちゃんのためにご飯を作って待っていたりする。これだけ、一貫しない行動で振り回されれば、普通の女性なら「この人、私のことどう思ってるんだろう」「何考えてるんだろう」とこんがらがってしまう。

 だいたいの場合、何を考えているか分からなく見える時の男性は、何も考えていない本能で行動している、と思ったほうが堅実だ。自分にとって損がない時、自分に余裕がある時なら、セフレの女の子にも優しくできるが、自分にとって都合が悪い時は、優先順位を下げてしまう。結局はその程度の関係だし、期待したところでこの先、発展はないのだが、都合のいい時は優しくしてくれるので、普通の人はどうしてもその優しさに期待してしまうのだ。

 そしてこういう男性でも、本気で好きになった女性には心から優しくなったりするのだ。どうでもいい人に対してはそれなりというか、都合のいい時にしか優しくできないし、本当に手に入れたい女性に対しては、もちろん真剣に取り組むのだ。

 メンヘラ化している人は、好きな人のことを説明する時に「優しい時もある」とよく擁護するが、都合のいい時に優しいだけの人は、自分を幸せにしてくれるわけではないと思った方がいい。男女逆でも然り、である。

 結局、身体的に軟禁なんてしてみても、人の心を縛り付けることなど、到底できない優先順位も上がらない。そんなことを学ばさせられる第2話だった。

 

(文・ミクニシオリ)

 

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1992年、茨城県生まれ。フリーライター・恋愛コラムニスト。ファッション誌編集に携わったのち、2017年からライター・編集として独立。エンタメ・恋愛・ライフスタイルを中心に執筆活動を行う。インタビューや匿名取材、街頭取材経験も多いノンフィクション系ライター。若者恋愛トレンド評論家としてネットTV・地上波バラエティなどに複数回出演。