外交・安全保障通の長島昭久氏がウクライナ問題が東アジアにもたらす影響を解説〈インタビュー〉

3月10日、ポーランド。ロシアのウクライナ侵攻で一般市民が国外に退避(写真:ロイター/アフロ)

日本はウクライナのために何ができるのか?

 日本の国会議員としては見守るしかない状況になるんでしょうか?
「基本的にはそうなってしまうんです。NATOですら直接介入できない。我々はその外にいますから。その中でもできることの一つは仲裁です。国連は機能不全に陥っていますが、トルコやイスラエルといった仲裁に名乗りを挙げている国々を後押しする。それからウクライナの方々に直接、民生面で支援することはできることなので、例えば今、民生面に加えて防弾チョッキとかヘルメットを送ることになりました。またポーランドには100万人単位で避難民が押し寄せているんですが、ポーランドやルーマニアといった非難民の受け入れをしている近隣の国へのサポートといったことも重要です」

 我々一般人ができることってなんでしょう? ウクライナの大使館に寄付に行くという人もいるようです。あとは微力ながらも声を上げていくことになりますか?
「昨年、香港で民主化運動の弾圧があった時、僕らも議連を作って声を上げたんですけど、独裁者や侵略者はそういう声には耳を傾けずにどんどん突き進んでしまいますから、確かに無力感はあります。しかし“国際社会は絶対に許さない。あなた方がやっていることは未来永劫、負の歴史として記憶に刻んでいく”というようなことを発信していくことで、今回ならロシアを孤立させるしかない。中国の場合は大きすぎて孤立させることはできなかったんですが、今回のロシアの場合はさすがの中国も距離を置かざるを得ないくらい酷いことをやっている。完全に侵略ですから。ヨーロッパがここまで本格的な戦争を経験するのはヒトラーのポーランド侵攻以来、まさに第二次世界大戦以来ですよ。だから今回はロシアを完全に孤立させることはできると思います」

 ロシアのウクライナ侵攻の状況次第では中国が台湾への武力行使に踏み切るのではないか、という見方もあります。
「今回の件は東アジアにとっても他人事ではありません。ロシアの状況を見て、中国が考え方を改めてくれれば一番いい。国際ルールを破り、一方的な現状変更をするということは、国際社会からこれだけの反発を招くんだということを中国の指導者がよき教訓としてくれることを僕らは願います」

 今のお話を聞くと中国が台湾への武力行使を踏みとどまる可能性もゼロではない?
「ゼロではないと思います。少なくとも延びると思います。明日やろうと思っていたけど、明後日にしようかといったように。でも、決して油断はできません」