50代で博士課程へ…いとうまい子が「学び」を求めた理由【対談】いとうまい子/早稲田大学理工学術院長・菅野重樹教授

 

ーいとうさんが、大学から、さらに博士課程に進んだ理由とは?

いとう「ゼミはロボット工学を選択し、国際ロボット展に出展して企業の方に興味を持っていただいたりもして、もっと研究したいという思いが強くなり、早稲田大学大学院の人間科学研究科に進みました。博士課程の面接では、ロボット工学をやっていた人がいきなりバイオメカニズムを学ぶのは難しいよと教授に言われたのですが、もともとアンチエイジングやロコモ対策に関心があり、その授業も受講していたので、面接の設問にも全部答えることが出来たんです。大学院で学びながら、いろいろな方の研究に触れさせていただき、AIを活用した高齢化社会の課題解決というテーマでの研究に至りました」

菅野「私は、いずれロボットはスマホのように、1台であらゆる局面で人間をサポートする形になると考えていて、現在、ムーンショット型研究開発として〈一人に一台一生寄り添うスマートロボット〉というプロジェクトのリーダーを務めています。そういった人間との共存を目指すロボットには、いとうさんの研究のように医療の分野の視点が必須になってくると思いますし、人とのコミュニケーションの必要性を考えると、今後は社会受容性、ソーシャルな視点なども必要になってくるでしょう」

ーこれからのロボット研究にはさまざまな分野の視点が必要ということですね。しかし日本では“理系文系”で分けられてしまいがちです。

いとう「小学校で“算数が嫌いになった”という人ってけっこう多いですよね。でもそこで“嫌い”にならなければ、その後の可能性ももっと広がるんじゃないかなと思うんです」

菅野「よく分かります。中高の授業でも同様ですよね。それこそ理工学はいろいろな分野が関係する学問ですが、中高のカリキュラムにはほとんど入ってこない。だから、こんな建物が作りたいとか、こんな自動車が作りたいといったイメージと、数学や物理の授業とが結びつきにくいんじゃないかと思うんです」

いとう「せめて大学では、文系理系はもちろん、いろいろな分野に触れられることが大切ですね。実際に私は早稲田では、自由に学ばせてくれる先生が多いと感じました。他大学や企業など外部の人とつながったり、産学連携をしたり」

菅野「そうですね。文理融合や、異なる分野の学部による連携などがもっと進めば、早稲田はさらに面白い大学になると思います」

ー最後に「学び」を志す人へのメッセージをお願いします。

菅野「私は前進という言葉が好きなんです。何かを学ぶ人は必ず悩んで立ち止まることがあると思いますが、そんなとき、とにかくやってみることが大事だと思います」

いとう「私も、とりあえず前へ進もうと、やってきたことの連続で今があるので、とてもよく分かります。あと大事なのは、楽しむこと。学業や研究と芸能の仕事の両立は大変ではとよく聞かれるのですが、私にとってはすべて楽しみでやっているので、大変だと感じたことがないんです。若い学生の方も、リカレントで学ぶ方も、その“学び”を楽しんでほしいです」