車椅子バスケ天皇杯 日本一の集合写真【アフロスポーツ プロの瞬撮】

 スポーツ専門フォトグラファーチーム『アフロスポーツ』のプロカメラマンが撮影した一瞬の世界を、本人が解説、紹介するコラム「アフロスポーツの『フォトインパクト』」。他では見られないスポーツの一面をお届けします。

撮影/文章:長田洋平(2023年1月21日 天皇杯 第48回日本車いすバスケットボール選手権決勝)
「おう、また俺たちを踏み台にしに来たのか?」
 
 僕が車椅子バスケのチーム「パラ神奈川SC」の練習に行くと、チームのベテランは茶目っ気たっぷりに、こう言ってくる。一種の挨拶みたいなものだ。ヤンチャでフリーダムでちょっと口が悪い、そんなチームカラーに僕は惹かれた。
 
 パラ神奈川にお世話になって12年が経つ。最初の3年はほとんどコミュニケーションも取らずに、ただただ練習を撮っていた。当時はカメラマンになるために、とにかく撮影経験と作品が必要だった。「踏み台」にしていた意識はなかったが、当時の活動がある程度評価されてカメラマンに昇格できたことは間違いなかった。しかしあろうことか、僕はその後、何も言わずにチームからフェードアウトしてしまった。そのことは今でも本当に後悔している。ただ今思うとあの頃の自分は何もできなかったし、チームに何ももたらせなかった。せめて何か言って離れるべきだった。
 
 転機になったのは2017年の車椅子バスケ日本選手権。会社の仕事として撮影に行った際に、思い切って「また撮影しに行ってもいいですか」とチームに声をかけてみた。そうすると、「なんだお前、生きてたのか。いいよ、来いよ」と言ってくれた。ろくでもないコミュニケーションしか取っていなかった自分にはありがた過ぎる言葉だった。
 
 それからは1つ目標が出来た。それは「パラ神奈川の日本一とそれまでの道のりを撮る事」。今回掲載した写真はそれが結実したものだ。先日行われた天皇杯でパラ神奈川SCは悲願の優勝を果たした。日本一のフォトセッションは今までずっと撮りたかった夢にまで見た瞬間。普段はぶっきらぼうな顔ばかりしているベテランも見た事のないくらいの笑顔だった。こんなにも嬉しい集合写真は初めてだ。
 
 ただ今大会を通して、僕の写真自体は満足のいくものにはならなかった。時間が経つほどに撮れなかった瞬間への後悔の念が湧いてくる。そして撮れなかったからこそ、新たな目標が出来た。今度は前とは違う。パラ神奈川の皆さんにはまだまだ僕の踏み台になってもらいます。
 
 
■カメラマンプロフィル
撮影:長田洋平
1986年、東京出身。かに座。
早稲田大学教育学部卒業後、アフロ入社。
2012年ロンドンパラリンピック以降、国内外のスポーツ報道の現場を駆け回っている。
最近では平昌オリンピック、ロシアW杯を取材。
今年の目標は英語習得とボルダリング5級。
 
★インスタグラム★
アフロスポーツ

1997年、現代表フォトグラファーである青木紘二のもと「クリエイティブなフォトグラファーチーム」をコンセプトに結成。1998年長野オリンピックでは大会組織委員会のオフィシャルフォトチーム、以降もJOC公式記録の撮影を担当。
各ジャンルに特化した個性的なスポーツフォトグラファーが在籍し、国内外、数々の競技を撮影。放送局や出版社・WEBなど多くの報道媒体にクオリティの高い写真を提供し、スポーツ報道、写真文化の発展に貢献している。

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