音楽家の梶浦由記が活動30周年!アニソンで「自分の居場所が見つかった」

『鬼滅の刃』『魔法少女まどか☆マギカ』『ソードアート・オンライン』などといった大ヒットアニメや、NHKの連続テレビ小説『花子とアン』などで知られる音楽家の梶浦由記。劇伴だけでなく、女性ボーカルユニット「Kalafina」や個人プロジェクト「FictionJunction YUUKA」など、多くのアーティストのプロデュースや作詞・作曲を行い、2020年には作詞を梶浦とLiSAが共作、梶浦が作曲を手がけた映画『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』主題歌のLiSA「炎」が第62回日本レコード大賞を受賞した。

 その梶浦が1993年に音楽ユニット「See-Saw」でメジャーデビューしてから活動30周年を迎えた今年7月、初の歌詞集『空色の椅子』(飛鳥新社)を発売した。一体なぜ、このタイミングで本を出そうとしたのか。これまでの音楽活動や、今のアニソン業界についてどう見ているのか、本人に聞いた。

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活動30周年で初の歌詞集『空色の椅子』(飛鳥新社)を発売した音楽家の梶浦由記(撮影:上岸卓史)

『空色の椅子』はこれまで発表した230曲の歌詞が掲載され、「全曲詞集」として位置付けられ、3万字に及ぶ語り下ろしエッセイも収録されています。なぜ今回、こういった形で歌詞集を書籍として出版したのでしょうか。

「以前から、本を出さないかというお話は何度もいただいてきましたが、私は音楽家ですから100時間かけて本を作るのだったら、100時間かけて音楽を作ったほうがいいものを世の中に出せるし、残せるだろうと考えてお断りしていたんです。もともと本が大好きというのもあって、“私ごときの文章を本という神聖なものに載せたくない”みたいな思いもありました(笑)。

 今回は30周年という節目でもあり、歌詞集という形だったので“これだったら”と思ったんですね。歌詞は私が責任を持って世の中に送り出してきた言葉ですから。私がもし一生に一度本を出すとしたら、歌詞集が一番自分にふさわしい形ではないかと思いまして、このようなありがたい本を出させていただくことになりました。

 後半は、私の音楽家人生を中心に普段どのような思いで作詞・作曲しているのか、これまでの仕事に対してどう考えているのかについてまとめた語り下ろしエッセイとなっています。あまりこういうお話をする機会はなかったのですが、30年やってきたからこそ“私の活動はこういうものです”みたいなことを少しは言ってもいいのかなと思いました」

 10年前の20周年と比べると30周年は何が変わったのでしょうか。

「20周年の時に、“一生が100だとしたら今は達成度何%ですか”という質問を受けて“15”と答えたんですよ。今はどのくらいだろうって考えたら、50くらいかなと思っているんです。10年前は自分の人生の残り時間なんて一切数えてなかったんですけど、この年になるとどこかで無意識に“あと何年できるかな”って考えているんですよ。“あと何年音楽活動できるんだったら、何年までにこれをやらないとな”という考え方になってきて。そうすると“もう50は塗りつぶされてるな”ということをすごく感じているんです」

 残りの50はどんなことをしていきたいと考えているのでしょうか。

「“もっといい曲を書きたい”ということだけですね。“今までの音楽活動はまだイントロ”だという感覚は、きっと何歳になってもどのアーティストも持っているものだと思うんです。私もそう思っていますし、これから先の年数やゴールがある程度見えてきた時期になっても、では“結局何を、どこを目指すのか”と問われればシンプルにそれだけなんです」

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