倖田來未、小児がん支援ライブへの思い「音楽の力で少しでも子どもたちの力になれれば」

 2月15日の「国際小児がんデー」に、14組のアーティストが出演する小児がん支援チャリティーライブ「LIVE EMPOWER CHILDREN 2024 supported by 第一生命保険」が東京・国際フォーラムで行われた。同ライブのアーカイブ配信を前に、出演アーティストの倖田來未と国立成育医療研究センターの松本公一小児がんセンター長に話を聞いた。

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小児がん支援への思いを語る倖田來未(右)と国立成育医療研究センターの松本公一小児がんセンター長(撮影:仲西マティアス)

 公演の利益を全国の小児がん拠点病院や小児がんサポート団体へ寄付し、小児がんで苦しむ子どもたちやその家族に還元する「LIVE EMPOWER CHILDREN」。2020年のスタート時から定期的に出演する倖田來未は、支援に携わったきっかけをこう語る。

倖田來未(以下、倖田)「もともとすごく仲良くしていたスタッフの一人、保屋松靖人さん(現エイベックス・ヘルスケアエンパワー合同会社社長)のお子さんが小児がんにかかってしまったことです。私自身も子どもがいるので、当初は “小さい子でもがんにかかるの?” という驚きがありました。彼がお子さんの病気を治そうと一生懸命活動している中で、小児がんの子どもたちの実態が知られていないことや、医療費などの面ですごく苦労しているという話を聞いていたんです。

 妹(歌手のmisono)の旦那のNosukeもがんにかかっていて、大人でもつらい治療をしているので、子どもたちにはもっとつらいだろうなと思います。ライブ音楽を聞くことで寿命が延びるという研究結果(※)を聞いたことがあって、私たちはそういうお仕事をさせていただいているので、音楽の力で少しでも未来を作っていく子どもたちの力になれれば、生きる勇気を与えてあげられたらという思いで出演しています」

※英企業「O2」とゴールドスミス大学のパトリック・フェイガン氏による2018年発表の共同研究。

 小児がんの治療に携わる松本公一医師は、小児がんの現状について次のように語った。

松本公一(以下、松本)「小児がんとは15歳未満に発症するがんの総称です。大人のがんとの違いは、患者数が圧倒的に少ないことが挙げられます。大人は年間100万人程度が新たにがんと診断されますが、小児がんと診断される子どもの数は年間2000~2500人程度。数は少ないけれど種類が非常に多くて、例えば白血病が約30%、脳腫瘍が約25%といわれますが、白血病にもいろんな種類があり、脳腫瘍も治る腫瘍から治らない腫瘍まで幅が広いのが特徴です。

 今、小児がんの治療はものすごく良くなっていて、おしなべて8割くらいの方が治るようになってきました。しかし、例えば脳腫瘍の中でも、脳幹グリオーマという呼吸や心臓の働きに関わる脳幹にできる腫瘍など、今も治療法が確立されず診断されると半年から1年で命を落とすことが多い病気もあります」

倖田「大人に比べて子どもの発症数が少ないということは “まさか自分の子どもが” と考えるところもあって、検査が高額だと “うちの子は大丈夫だろう” と発見が遅れることもありますよね」

松本「難しいのは、小児がんは発見が早いからといって治りやすいわけではないことです。小児がんは進行のスピードが早く、早期発見してもすでに転移している場合が多い。大人のがんはある程度病状の進行が決まっていて、最初に発生した場所を取り除けば治るので早期発見が大事なのですが、小児がんの場合は見つかった時には全身に転移している人が多いのです。

 日本では基本的に健康保険が適用され、小児がんに関しては小児慢性特定疾病医療費助成制度も利用できます。ただし、付き添いや交通費など目に見えないお金がすごくかかります。例えば家族が付き添いする場合に仕事を辞めなければいけなかったり、きょうだいを預けないといけなかったりといったところにも費用がかかります」

倖田「本当は小児がんの予防ができれば一番いいのですが、小児がんにかかる原因というのはあるんでしょうか」

松本「原因が分かるがんもありますが、9割以上は原因が分かりません。大人のがんの場合は生活習慣病などが関与しますが、小児がんの場合はそうした原因がないのです。治りやすいか治りにくいかは発生したがんの性質によるもので、がんのもともと持っている性質がいいものだと治りやすいし、悪いものだと治りにくいのでそれを正しく診断することが大事です。

 小児がんは大人のがんに比べて治療薬がよく効くので、外科手術と化学療法や放射線治療を組み合わせて治療します。医療の進歩で、例えばある種の白血病は9割以上が治るようになりました。だからこそこれから問題になるのは晩期合併症です。治療薬の影響で臓器や内分泌に障害が出てきて、身長が伸びないとか永久歯が小さくなってしまうなど、目に見えない部分も含めた合併症が出てくることがあります。日本にはおそらく10万人以上の小児がんサバイバーがいて、普通に生活しているけれど目に見えないところで問題を抱えている方が多くいらっしゃいます」

倖田「先生の話を聞いていて、大人のがんと小児がんはこんなにも違いがあるんだということがすごく勉強になりました」

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