誰がなんと言おうが粗品、霜降り明星はすげぇ。『ツッコミスター』が担う役割には期待と羨望しかないぜ!〈徳井健太の菩薩目線 第280回〉

平成ノブシコブシ 徳井健太

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第280回目は、『ツッコミ芸人No.1決定戦 ツッコミスター』について、独自の梵鐘を鳴らす――。

 ご覧になりましたか、『ツッコミ芸人No.1決定戦 ツッコミスター』。

 霜降り明星の粗品がMC・プロデュースを務め、フジテレビ系列の「土曜プレミアム」枠で放送された新たな大型特番。土プレ枠は、これまで『人志松本のすべらない話』や『IPPONグランプリ』などを放送してきた、フジテレビの新機軸バラエティのエース枠。そこに、粗品がYouTubeなどで行っていた企画「ツッコミマン」をベースに、テレビのゴールデン特番へと昇華させたわけだから兜を脱ぐしかありません。

 先に挙げた番組、特に『人志松本のすべらない話』はこれをきっかけに、世に知られるようになった芸人も少なくないです。例えば宮川大輔さん、小籔千豊さん、兵動大樹(矢野・兵動)さんなどは、『人志松本のすべらない話』によって、その面白さが世に伝わった方々だと思います。

 芸人が売れる、あるいはステップアップしていく道筋って限られていて、昨今だったら賞レース、特に『M-1グランプリ』の決勝に残った芸人たちがテレビで活躍する――そうした路線が一つの王道としてある。もう一つ代表的な路線を挙げるなら、『水曜日のダウンタウン』でハネる(きしたかの高野などが代表例)ことで活躍の場を増やすケースも目立ちます。

 ですが、それら以外で芸人が存在感を示すことができ、認知度を獲得する番組ってあるようでない。一昔前なら、ゴールデン帯で放送されていたときの『ロンドンハーツ』が、(狩野)英孝ちゃんやうちの相方・吉村などにドッキリという形でスポットライトを当ててくれた。加えて、『エンタの神様』や『爆笑レッドカーペット』のようなネタ番組もあった。‟世間的には無名”と言われるような芸人に少なからず光を当ててくれる番組があったことで、賞レースで結果を残していなくても、頭角を現す芸人がいたと思うわけです。

 そういった装置がどんどんなくなっていく中で、粗品が土プレ枠で『ツッコミスター』をやり切った――その意味ってとてつもなく大きい。実際、番組を見ると分かるように、世間一般からすれば「誰?」というような若手も出演していた。『ツッコミスター』を機に、狼煙を上げてやる。そんな青白い炎が見えるくらい選ばれた演者からは野心的な覚悟を感じたし、この舞台をロイター板にして飛び立てという粗品の心意気も感じた。だからこそ、自分で審査するという形式にもこだわったのだと思うんです。

 振り返れば、自分でプロデュースして、自分で審査する番組って、伝説的な番組しかない。『笑点』『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』『内村プロデュース』『人志松本のすべらない話』など数えるほど。『有吉の壁』は、『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』『内村プロデュース』のDNAを継承する番組で、有吉さんによる恩返し的コンテンツなので多少毛色は違うものの、いずれもバラエティファン垂涎のコンテンツとして愛されている番組です。もちろん、まだ一回しか開催されていない『ツッコミスター』が、これらの番組と肩を並べる番組になるかは分からない。だけど、(無名を含む)若手が売れる新しい道筋を開拓した。お笑い好きとしては、感動するしかないじゃないですか。

 本来なら、僕らの世代がこうしたコンテンツを作るべきだったのかもしれない。だけど、無理だった。そんなことができるわけないと思っていたし、そんな大それた役割を担いたくない。「逃げた」と言い換えることもできるかもしれない。今でこそ、千鳥さんが大役を担っているところがあるけれど、粗品はまだ33歳だ。33歳の頃の僕らのお笑い世代は、「ちょっと待ってくださいよ!」とひな壇から勢い良く立ち上がることくらいしかできなかったのに、粗品は次世代の芸人に光を当てるコンテンツを、フジテレビのゴールデンでやっている。敬意しかないんです、純粋に。しかも、SNSでトレンド1位を獲得するなど、大きな話題を生むという結果まで残した。彼の覚悟に世間が振り向かずにはいられなかった。

 放送後、僕は自分のXで率直に番組の感想をつづった。すると、中傷を受けた。それ自体はどうでもいいことで、僕があえてこのことを「菩薩目線」で触れるのは、Xにつづった内容が「粗品をほめる」という‟正”の感想だったということ。にもかかわらず、石つぶてを投げつけられた。良いことをつづっても、石を投げられる。粗品が、本当のカリスマになりつつある証左です。

 凡人は世の中に合わせ、天才は世の中が合わす。僕はそう思っているんです。

【プロフィル】
1980年北海道出身。2000年、東京NSC5期生同期の吉村崇とお笑いコンビ「平成ノブシコブシ」結成。「ピカルの定理」などバラエティ番組を中心に活躍。最近では、バラエティ番組や芸人を愛情たっぷりに「分析」することでも注目を集め、22年2月28日に『敗北からの芸人論』を発売。「もっと世間で評価や称賛を受けるべき人や物」を紹介すべく、YouTubeチャンネル「徳井の考察」も開設している。吉本興業所属。
公式ツイッター:https://twitter.com/nagomigozen 
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UC-9P1uMojDoe1QM49wmSGmw
講演依頼:https://www.speakers.jp/speaker/tokui-kenta/
     https://www.sbrain.co.jp/keyperson/K-19533.htm
     https://youtu.be/VqKYn26Q2-o?si=M7p7KLIyjLBrgIk0