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小池百合子のMOTTAINAI 第14回「場当たり的ではないリアルな政治を!!」

2012.05.14 Vol.551

「脱」「卒」「反」だと、原発を巡る言葉遊びを続けているうちに、日本にあるすべての原子力発電が停止しました。42年ぶりの脱原発です。

 こどもの出産や入学、卒業など、将来の日程が明確であるように、13か月ごとの定期検査を考慮すれば、原発の全停止は十分予測されていたはずです。この1年間、いったい何をしていたのか。

 消費税増税に「政治生命」と全エネルギーを傾ける単線志向の野田総理ですが、「日本のエネルギー問題」こそ喫近の国家的課題。おまけに電力不足は国民の生命にも関わる問題です。複線志向で、目指す方向を決めながら、次に何をするかを考え、一つひとつ実行する…。政府の役割はこれに尽きるのではないですか。

 3・11以後、多くの国民、そしてほとんどの日本の政治家は、濃淡はあれど、原発に依存しない社会を望むようになりました。世界のすう勢が原発推進の流れだとしても、地震や津波の危険性の高い日本では慎重にならざるをえないことは当然というものでしょう。

 ただ、電力を所管する大臣が「5月6日から一瞬ゼロになる」と言い放ち、「集団自殺するようなことになる」と与党幹部が脅したりと、事態は複雑、かつ情緒的になるばかりです。場当たり的な政策や判断の繰り返しが、ますます国民を不安と混乱に陥れているわけです。

 技術的、科学的、客観的な判断を下す組織が必要であり、原子力規制庁の設立が急がれます。環境省の外局方式を主張する政府・与党案、いわゆる三条委員会方式で独立性の確保を重視する自民党案などの折り合いがつかず、いまだ宙ぶらりん状態です。早急に結論を出しましょう。そのためにもさっさと問責を受けた2大臣の入れ替えが必要です。

 また、地球温暖化対策として二酸化炭素の25%削減や、原子力発電計画の倍増を謳ってきた民主党です。改めるべきは、改め、早急に今後のエネルギー政策を明らかにする責任があります。

 その上で、どの原発は安全性が高く、どの原発に不安があるか、より明確に、率直に国民に説明をすべきです。この1年間に生じた「すべての原発が危険」との印象を抱かせている現状では、かつての「原発の安全神話」の裏返しになりかねません。オール・オア・ナッシングではリアルな政治とはいえないのです。

 原発問題だけでなく、あらゆる分野での日本政府のモタモタぶりを世界が見ています。現政権には、そのことを心していただきたいものです。

(自民党衆議院議員)

小池百合子のMOTTAINAI 第12回「被災地のがれきの処理は「おたがいさま」の意識で」

2012.03.12 Vol.544

 遅い。遅いです。

 何がというと、被災地のがれきの処理です。岩手、宮城、福島の被災3県から排出されたがれきの量は2300万トン。平時の廃棄物処理量の10〜20年分にあたります。

 阪神大震災のど真ん中にいた私は、兵庫県の近隣自治体ががれき処理に協力してくれたことに今も感謝しています。

 思い出が詰まった家々が破壊され、災害廃棄物という無機質な固まりとして積み上げられたさまを見るだけで、精神的にも重苦しいものです。新しい出発をするにしても、がれきが片付かないうちは復興段階に入れません。

 東日本の復興促進のためには広域処理は不可欠です。

 問題は福島第一原発事故の影響を受けたがれきを全国にバラ撒くのではないかという不安です。京都の大文字焼の際に起こった騒動が不安の拡散に輪をかけました。

 先日、政府は食品の安全基準を一般食品で100ベクレルとしました。廃棄物に含まれる放射性セシウムについて再利用の基準も100ベクレルとなっています。そもそも人体にはカリウムなどの放射性物質が含まれており、体重60�sの人なら7000ベクレルは保有しているとされています。

 だから、被災地からのがれきをなんでも受け入れていい、というわけではありません。放射性の高いがれきはそもそも「受けない」ことを明確にしなければなりません。

 大都市で起こった阪神大震災と、津波に洗われた東日本大震災ではがれきの種類も異なります。阪神ではコンクリート系が莫大な量を占め、一方、東日本では住宅の木材が多いといいます。おのずと処理方法も異なります。木材系はバイオマスとして火力発電の材料としても活用できますが、仕分けの手間などを考えると、コスト面での問題も生じます。

 それでも、電力不足という現実を考えると廃材を資源として活用する意味は大きいでしょう。

 また、被災地の自治体ごとに廃棄物の収集を優先したところと、最初から分別という段階を経たうえで、素材別に収集したところがあります。耳にする範囲では、遠回りでも分別から始めた自治体のほうが、結局は全体の処理が進んでいるようです。

 また、津波被害が大きかった地域は必然的に海に面していることから、広域処理では船を輸送に活用しやすくなります。地震で破壊した内陸部は鉄道による輸送となります。

 量、質の両面を考慮し、迅速に決断を下す。

 平時の知恵の蓄積がものをいいます。マイナスからの作業ですが、日本が「おたがいさま」の意識で協力し合いたいものです。

(自民党衆議院議員)

小池百合子のMOTTAINAI 第11回「 一刻も早く新たなるエネルギー戦略を考えるべき」

2012.02.13 Vol.541

一刻も早く新たなるエネルギー戦略を考えるべき

 いよいよ来年度の予算審議が佳境に入ってきました。人口構成が大きく変わるなか、年金や医療、介護などの社会保障の設計を変えることはまったなしの状況であると、多くの国民も理解しているところでしょう。

 来年度予算の中身は消費税増税を先取りし、年金基金という別財布から流用しての交付国債発行など、問題点も数多く、審議を深める必要があります。

 本来なら、国民生活に直結する「社会保障」問題について大切な議論を重ねるべきところですが、田中直樹防衛大臣のあやふやな答弁に多くの時間とエネルギーを「安全保障」に費やす流れとなっています。

 そもそも、防衛政策にまともに答えられない防衛大臣を任命するほうが問題です。任命権者である野田総理の責任こそが問われます。もう少し「お勉強」する時間を与えても、といった心優しい感想こそ、わが国の平和ボケの最たる結果ではないでしょうか。

 現在の日本を取り巻く状況は、そうそう心優しいものではないのです。社会保障の充実も、国家の安全が守られてこその話です。

 国民生活に直結するもうひとつの問題は電力料金値上げの流れです。企業向け電気料金を4月から平均17%値上げとされますが、例えばNTTの場合、グループ全体で年間50億〜60億円のコスト増となると発表しています。消費者への負担増につながる恐れは大です。

 家庭用電力料金の値上げを含むと、消費税とのダブルパンチとなります。国際競争力の観点からも、由々しき状態と言わざるをえません。

 原発を取り巻く環境は依然厳しく、このままでは4月にはすべての原発が停止します。その分、世界から火力発電所用の石油やガスを仕入れなければならず、おまけにイラン情勢の不透明感からエネルギー価格は右上がりときました。

 どうやって自己防衛するか。

 以前、日本中の照明をLED化すれば13基の原発は不要となる試算を紹介しました。節電、省エネを徹底することが最短の道です。企業なら、リース方式を活用して、徹底して照明のLED化を進めるのはどうでしょう。

 そのための積極的な助成策こそ予算に盛り込むべきですが、そうはなっていない。どうも何を優先するべきか、感度が鈍いように思います。

 エネルギー安全保障という日本にとって最も脆弱な部分を直撃した東日本大震災と福島第一原発事故。ならば、一刻も早く出すべきは、新たなエネルギー戦略でしょう。総力戦で臨みましょう。

(自民党衆議院議員)

 

小池百合子のMOTTAINAI 第10回「台湾の人々にとり、財布は「北」京、思いは「東」京」

2012.01.23 Vol.538

 辰年の2012年。まずは、昨年のような災いを「断つ」年としたいものです。

 今年はアメリカ、フランス、ロシアなどの主要各国で選挙が目白押し。その皮切りとして1月14日、台湾の総統選挙が行われ、親中国で現職の馬英九氏(国民党)が再選を果たしました。

 1996年の台湾総統選挙では、台湾独自の存在を謳う李登輝氏の優勢に焦った中国軍は基隆沖にミサイルを発射する威嚇行為に出ました。結果は逆効果。李登輝氏の勝利に終わりました。

 今回も民進党の女性代表・蔡英文氏の猛追を受けましたが、学習を積んだ中国はミサイルによる恫喝ではなく、確実な弾を撃ち込みました。100万人にものぼる中国本土で生活する台湾人のうち、40万人近くを台湾に戻し、一票を投じさせたのです。これほど確実な「弾」はありません。

 民進党が牙城とする南部でも、農民票が国民党へと流れました。中台間のECFA(両岸経済協力枠組協議)は温家宝首相が「台湾に利益を譲る」と強調したように、「こっちの水は甘いゾ」とばかりに台湾側にメリットを多く与えたものとされています。台湾の農産品を中国本土の巨大マーケットへ導くなど、中国との交流を実感させる効果がありました。

 もちろん中国は台湾との経済交流促進を最終目標とはしていません。中国にとって、台湾統一こそ最大の目標であり、今回の馬英九勝利はその一歩ととらえていることでしょう。

 だからといって、台湾の国民がそうそう簡単に中国本土への併呑を許すわけではありません。民主主義の享受を幾度も体感し、自由すぎるといっても過言ではない報道合戦など、現在の中国では考えられない社会へと成熟しています。

 むしろ、台湾の自由な選挙に対して、中国本土の人々が羨む効果が今後も広がる可能性があります。その台湾人が最も好きな国は日本。それは、東日本大震災に際して、200億円にも上る義捐金が台湾から寄せられたことでも証明されています。台湾の人々にとって、とりあえず財布は「北」京、思いは「東」京、といったところでしょうか。

 さて、台湾初の女性総統を目指した民進党の蔡英文氏は敗北を受け、党代表を辞任。他方、12月にも予定されている韓国の大統領選は暗殺された朴正熙大統領の長女である朴槿氏と韓国初の女性首相を務めた韓明淑氏(元環境大臣)との女の闘いになりそうです。

 アジアでもなでしこたちが元気です。

(自民党衆議院議員)

小池百合子のMOTTAINAI 第9回「女性力の活用で日本社会に変革を」

2011.12.12 Vol.534

 今年はさまざまな国難が「これでもか」とばかりにわが国を襲いました。

 92年、英国のエリザベス女王はウィンザー城の火災、相次いだ王室スキャンダルを「アナス・ホリビリス(ひどい年)」とラテン語で嘆きましたが、今年の日本はまさに「ひどい年」でした。

 そんななかで、希望をもたらしてくれたのは、今年の流行語大賞ともなった「なでしこJAPAN」の活躍ではなかったでしょうか。私も女性として、彼女らの活躍には心からの賛辞を贈ります。

 世の中に変革をもたらすのは「若者、バカ者、ヨソ者」だと言います。

 アップルの創業者で、IT産業の旗手スティーヴ・ジョブスの言葉に「Stay foolish. Stay hungry」(バカでいろ、ハングリーを続けろ)という名文句がありますが、彼はそのままの人生を歩みました。バカと思われることにも、彼は挑戦を続けました。意思を持ってバカ者を貫いたのです。

 素晴らしい技術を有するオリンパスの不正経理を暴いたのは英国人社長、ヨソ者でした。結果的に、国際社会で日本企業全体が胡散臭い存在だとの印象を強めてしまい、日本が世界のヨソ者となる恐れもあります。

 そろそろ、日本もギアを切り替えたほうがよいでしょう。

 そのための即戦力が「なでしこ」たちです。女性力の活用です。

 ダボス会議で有名な世界経済フォーラムがまとめた世界の女性力活用ランキングで日本は年々地位を下げ、今年は135カ国で98位となりました。

 理由はただ一つ。他国が女性力活用を意識して高める努力をしているのに、日本はなすがままだからです。

 ノルウェーでは、取締役の女性比率が4割に満たない場合、上場廃止となる過激な法を施行しました。そのため、自ら上場を取りやめた企業もあります。欧州諸国でも同様の制度を導入する動きがあります。日本で実施するなら、上場企業はゼロになることでしょう。

 女性管理職の国際比較では、アメリカで47%、ドイツ30%に比べ、日本は10%に満たないのが実情。アジアでもフィリピンでは57%、シンガポールで25%です。

 医師不足といいますが、近年、3割を占める女子の医学生が、結婚、出産で離職後の職場復帰が不十分であることも原因とされています。国公立の医学部は税金で賄われているわけで、女医さんが専業主婦のままでいるなら「もったいない」。

 育児や介護など、女性の社会的環境整備を進めることで800万人もの雇用を生み、GDPを15%押し上げるという試算があります。

 日本社会で、女性はそもそもヨソ者。万年野党でした。真の政権交代は「なでしこ」を主力選手とすることではないでしょうか。

 ちなみに世界をリードする大学、ハーバード大、ペンシルバニア大、ケンブリッジ大などの学長は女性。東大や京大で女性学長が誕生するのはいつのことでしょうか。

(自民党衆議院議員)

 

小池百合子のMOTTAINAI 第8回「 夏と同じようにさまざまな工夫が必要な冬場の節電」

2011.11.14 Vol.531

 立冬を迎え、確実に冬の足音が聞こえるようになりました。

 3月の福島第一原発事故による計画停電や電力不足は日々の生活や経済に大きな影響を与えながらも、みんなの努力により何とか夏場を乗り越えることができました。

 東日本大震災が発生したその日、帰宅難民となった人々の整然とした姿は世界から絶賛されました。暴動や略奪が生じなかったことは、多くの国では考えられないことだからです。一人ひとりの節電努力で国家的危機を乗り越えたことも、絶賛されるべきことです。

 ただし、暑さを凌ぐための冷房で電力需要が午後2時ごろの数時間にピークを迎える夏場と違い、これからの冬場対策はさらにやっかいです。

 冬の電力需要のピークは1日2回。気温の低い朝夕に迎えます。特に、夕方午後5〜6時には夕食の支度に照明、暖房とトリプル要素が需要を伸ばします。さらに、冷房と比べ、暖房はエネルギー消費が約3倍増えます。CO2も3倍です。

 昨年は2月14日のバレンタインデーに5150万kwの最大電力需要を記録。今年は、東電管内で福島原発はもちろんのこと、柏崎原発などの原発が次々に13カ月ごとの定期検査に入ります。ストレス・テストを含め、安全確認をし、再稼働させない限り、来年春には日本中の原発が停止することになります。原発依存の高い関西電力や九州電力では5〜10%の節電が必要とされますが、東電管内は数値目標を伴う節電は求められずに済みそうです。

 とはいえ、夏と同じようにさまざまな工夫が必要です。まず、暖房の設定温度は2度抑えて、摂氏20度にすれば7%の節電が可能です。夏場に活躍した扇風機を天井に向けて回せば、上部の温かい空気を部屋に循環させることができます。

 夏とは逆に、外の寒い空気の断熱のためにペアガラスにする、厚めのカーテンにする、なども効果が高くなります。

 それでも寒い分は1枚多く着こみます。要はウォームビズです。昔から「頭寒足熱」と言うように、靴下の2枚ばきや湯たんぽの活用で足元を温かくする工夫をします。

 家の中での事故は各部屋の温度差に起因するものが多く、なかでも風呂場での事故が8割を占めるといいます。いわゆるヒートショックを防止するため、風呂の熱気を前もって脱衣スペースにまで広げる工夫もよいでしょう。鏡が曇ることは少々ガマンするとしましょう。

 一番の幸せは熱燗に鍋料理で体を内から温めること…。さっそく今晩にも、いかがですか?

(自民党衆議院議員)

 

小池百合子のMOTTAINAI 第7回「MOTTAINAI」の伝道師マータイさんの功績

2011.10.10 Vol.527

 2004年にノーベル平和賞を受賞したケニアの元環境副大臣ワンガリ・マータイさんが9月26日、がんのため亡くなりました。71歳でした。

 本コラムの標題「MOTTAINAI」もマータイさんと無関係ではありません。05年に初来日したマータイさんは古くからの日本の美徳である「もったいない」という言葉に接し、その意味に感動。そのままの足で環境大臣室を訪問されたマータイさんが新発見に興奮しておられたのを覚えています。

 2人で適当な英語訳があるかと議論しましたが、みつかりません。強いていえば、It is too precious to wasteでしょうか。結局、日本語のままがいいと、そのまま世界中に広める役をかって出られました。ニューヨークの国連本部での講演の際には、聴衆に「MOTTAINAI」の大合唱を促すなど、まさに伝道師でした。

 マータイさんは日本のリサイクルシステム「3R」についても興味津津でした。3RはREDUCE、REUSE、RECYCLE(削減、再使用、リサイクル)と循環型社会を構築するためのコンセプトをまとめたものですが、マータイさんはRESPECT(尊ぶ)を加えて4Rにすべきと主張しました。モノを大切にする心が必要だと言うのです。

 当時、日本の伝統的な風呂敷を活用して「レジ袋削減キャンペーン」に取り組んでいたこともマータイさんを刺激しました。江戸時代の画家、伊藤若冲の絵をモチーフに私がデザインしたペットボトルのリサイクル風呂敷を大いに気に入り、時折、ナイロビから追加注文が届いたものです。

 マータイさんが環境分野で初のノーベル平和賞を受賞したのは、アフリカの地で3000万本もの植林活動「グリーンベルト」を続けてきた功績によるものです。人口増と貧困で農地は荒れ、燃料代わりに木々が伐採される悪循環に陥るアフリカに希望をもたらすために、アメリカで生物学博士号も取得したマータイさんが考えた対策は女性と環境の組み合わせでした。

 アフリカの女性たちを植林に従事させることで、地域の環境を守り、雇用を生み出したのです。

 いつも笑顔を忘れず、いったん話し出すと周囲を魅了したマータイさんですが、政権批判のかどで幾度か投獄された経験もあります。大統領選出馬に妨害を受け、断念させられるなど闘いの連続でした。

 日本人が何気なく使ってきた「もったいない」の言葉にあらためて魂を吹き込んでくれたマータイさんに心から感謝し、ご冥福をお祈りします。

(自民党衆議院議員)

小池百合子のMOTTAINAI 第6回「電力不足がもたらした真の少子化対策」

2011.09.12 Vol.524

「故意に違反すると1時間あたり100万円の罰金なり」という極めつきの統制経済政策、電気事業法による電力使用制限令もひとまず解除されました。大口需要家を対象に前年比15%の節電を強いるものでした。

 電力多消費産業の工場では、土日操業に振り替えたり、電力需要期にはエイヤと操業休止に踏み切るなどの思い切った方策がとられました。いわゆるサマータイムを導入する企業も続出しました。

 さて、結果はどうだったのでしょうか。

 少なくとも罰金の支払いを求められた企業や団体が続出したとは聞いていません。これも日本の団結力、絆の賜物なのでしょう。しかし、企業ごとのばらばらなサマータイム導入はかえってエネルギー消費が増えるとの説もあります。だからこそ、その成果の中身を知りたいところです。

 私が興味を抱くのは、始業時間を早めるサマータイムを導入した企業で働く人たちのライフスタイルの変化です。

 早起きは辛いが、満員電車を避けられた。帰宅時間が早まり、家族と過ごす時間がたっぷりできた。趣味の時間が確保できたなど、新たな生活を見出すプラス効果。逆に、子どもの保育園や学校通いに支障が生じた。4時起きでのお弁当作りはきついなど、マイナス効果。さまざまな新現象が生まれたことでしょう。

 そもそも日本のホワイトカラーの労働生産性は先進7カ国中最下位、OECD33カ国中でも22位だとする日本生産性本部による調査(2010年版)があります。ブルーカラーの生産性は世界トップレベルなのに、オフィスワークとなると、長時間労働の割に成果は上がらずという状況が続いているのです。

 ワーク・ライフ・バランスなる舌を噛みそうな用語があります。仕事と生活を両立、調和させるため、働き方や社会環境を整えることを意味します。国の祝日を増やしたり、育児休業制度を改正しても、日本人は有給休暇さえ消化しない働き蜂ばかりです。

 その結果、少子化に歯止めがかからず、過労死は減らず、退職後に自分の居場所が見つけられない人が続出するなど、豊かなはずの日本で一人ひとりの幸福が実現しているとは思いがたい。

 環境大臣時代に導入したクールビズが、当初は賛否両論が渦巻きましたが、今はすっかり定着しています。同様に、電力不足対策として始まった新たな就業システムを一時的ではなく、恒久的なものとすればよいでしょう。

 こども手当てのようなバラマキで次世代につけ回しをするのではなく、時間という別の単位を提供する。真の少子化対策になるのではないでしょうか。

(自民党総務会長)

小池百合子のMOTTAINAI 第5回「日本のエネルギー戦略はいかに」

2011.08.22 Vol.521

 電力不足という新たな闘いを強いられた今年の夏もいよいよ後半戦。3・11以降、「脱原発依存」「縮減」などの言葉が飛び交いましたが、創意工夫も含めた皆さんの「節電」努力で、この夏は何とか乗り切れそうです。

 MOTTAINAIの心が日本の底力です。

 それでも電力不足の不安は変わりません。原子力発電に代わり、再び猛烈な働きぶりを見せているのが昔ながらの火力発電です。輸出済みのタイの火力発電所をそっくり奪い返したり、古い発電所に再度火を灯すなど、なりふり構わぬ対応ぶりです。それに企業の自家発電分が加わります。

 肝心の燃料ですが、産油国であるクウェートが東日本大震災・津波のお見舞いとして500万バレルの原油を贈ってくれました。日本円で約450億円相当です。在京クウェート大使が、震災のお見舞いに党本部に来られた際、「わが国にお手伝いできることはないか」と尋ねられたので、「石油の一滴でも」と答えたこともきっかけとなったようです。

 おりしも日本クウェート交流50周年の記念の年でもあります。せっかくの好意を風化させないため、8月初旬に国会の合間を縫って、サバーハ首長らに私なりの感謝の意を伝えてきました。

 ちなみにこのアラブ出張の際、現在内戦状態にあるリビアにも足を延ばしました。反体制派の拠点となっているリビア第二の都市、ベンガジで暫定政府の幹部らにも会ってきました。

 アフリカ最大の産油国であるリビアの反体制派には支援するNATO諸国やインド、中国などが各国の思惑とともに、次々に訪れています。日本は国内問題でもたつく民主党政権が外交にまで気がまわらないのか、3周遅れ状態。ここは与野党を越えて、日本の存在を確保しなければなりません。

 石炭は二酸化炭素排出量が多く、その割合は石炭、石油、ガスの順に10:8:6となります。地球温暖化対策を考慮すれば、当然LNG(液化天然ガス)に注目が集まります。浜岡原発の停止要請(命令)を受けて、中部電力が最初に走ったのも、産ガス国であるカタールでした。豪州からのガス供給も安定的です。

 一方、シェールガスという新たなガスの出現で、激変する世界のガス市場で窮地に立つロシアが日本をターゲットに売り込み攻勢をかけています。

 エネルギーの世界は生き馬の目を抜く激烈な舞台です。さて、この国の活力を確実にするために、民主党代表候補者たちは、どんな戦略をお持ちなのか、ぜひとも聞いてみたいものです。

(自民党総務会長)

 

小池百合子のMOTTAINAI 第4回「LDP(自民党)をLED党に替えます」

2011.07.11 Vol.517

 いよいよ夏本番。うだるような暑さにうんざりしているところに、電力不足によるブラックアウトの恐怖が加わり、不快指数120%…ではありませんか?

「辞める」と言って、「辞めない」のは民主党のお家芸ですが、菅直人首相の居座りでさらに体感温度が上がります。かと思うと、就任わずか9日後に復興担当大臣は辞任。被災地の方々は政治の空洞化が追い打ちをかけています。

 脱原発を唱えるか、どうかは別にしても、この夏の電力不足を乗り越えるには「心技体」が必要です。節電の「心」、省エネの「技」、それを支える制度「体」です。

 そこで伺います。あなたの家にはいくつの照明器具がありますか?

 玄関、廊下、各部屋にトイレ…。それらは昔ながらの白熱球ですか、蛍光灯ですか、それともすでにLEDに取り換えましたか?

 日本全国には19億個の電球、蛍光灯があると言われます。これらをすべてLED照明に取り換えるとすると、推定年間電力消費量は全体の約9%分が節電できるとの試算があります。

 財団法人・日本エネルギー経済研究所による試算では、LED化による節電分は原子力発電所13基分の発電量に相当するといいます。

 LED照明の消費電力は白熱灯の約8分の1、蛍光灯の3分の2で済むだけでなく、寿命は白熱灯の数十倍、蛍光灯の数倍以上と寿命の長さが特長です。

 問題は価格です。安くなったとはいえ、電球型で白熱灯の約20倍、蛍光灯の2倍はかかります。日本中の照明のLED化にはざっと15兆円の初期投資となります。白熱灯のみの総LED化で費用は8500億円かかりますが、原発4基分の節電効果が見込まれるとのこと。

 とりつかれたように太陽光発電等の再生可能エネルギーの全量固定買取制度の成立に躍起になった菅総理ですが、設置には相当の年月がかかるでしょう。目前の課題は、まずこの夏の猛暑をどう乗り切るかです。

 そもそも再生可能エネルギー買い取り法案を閣議決定したのは3月11日の午前中のこと。その後、あの大震災・津波が発生し、福島第一原発が発災するのです。事前の役人による法案説明の際にはほとんど興味も示さなかったとか。

 にわかに脱原発を唱えても、すでに全廃を決めたドイツも2022年の話です。

 わが国の場合、まず54基ある原発の真の安全基準を見直しつつ、目前の対策としてできるところから始める。

 それが照明のLED化です。

 自民党(LDP)でも党本部の照明の見直し中です。党名をLED党に替えるくらいの勢いで取り組みます。

 ランニングコストを考え、あなたもこの夏、LEDに替えてみませんか?

小池百合子のMOTTAINAI 第3回「太陽光と地中熱を活用した「マイ発電所」完成」

2011.06.13 Vol.513

太陽光と地中熱を活用した「マイ発電所」完成

 念願の「マイ発電所」が実現しました。

「マイ発電所」とは、その名のとおり、発電する家のことです。

 昨年10月に完成した初めてのマイホームは、練馬の江古田駅にも近いことから「エコだハウス」と命名しました。

 発電の源は太陽光と地中熱活用の合わせ技です。4月、5月の日照のよい季節には発電量が電力消費量を大きく上回りました。売買電のバランスシートは両月で約8000円、1万4000円と黒字続き。現在の料金制度が続くならば、初期投資の約200万円はおよそ10年で元が取れる計算です。

 地中熱は井戸水が年間を通じて一定であるように、冬暖かく、夏冷たい地中の熱を活用すること。「エコだハウス」は地面よりも少々高い位置に床を設けて、地中熱を利用しています。地下にパイプを通し、ヒートポンプを設置すればより効果的ですが、現時点では導入コストがかさむため断念しました。

 さらに電気自動車を昼間のピーク時を避け、料金の安い夜間電力で充電しています。電気自動車は蓄電池代わりに活用できますので、停電時には太陽光発電の自立運転とともに、電源としての活用が可能です。

 つまり「エコだハウス」では、すべての光熱費とガソリン代はゼロどころか黒字。だからこそ「マイ発電所」というわけです。

 照明は節電効率の高いLEDランプ、最大の開口部である窓には断熱効果に優れたペアガラスを駆使しました。最もエネルギーを使用する給湯も夜間電力を活用したシステムで、経済的。

 これらの優れた技術(技)と、料金設定の制度(体)をフル活用することを基本に、「もったいない」の意識(心)を加えると「エコだハウス」の心技体が完成します。

 特に、電力使用状況をリアルタイムで把握できる「可視化」の威力は圧倒的です。太陽光発電の操作モニターに発電と売電が表示されますが、おのずと節電努力を重ねるようになるものです。

 検診員のために戸外に設置されたこれまでの電力計を、生活者が室内で消費電力を把握できる「スマート・メーター」に変えるべきです。スマートメーターの導入によって、送・変電所単位で停電させる暴力的なやり方ではなく、病院やデータセンターなどの重要施設への電力供給は継続をさせるなど、キメの細かな対応が可能となります。

 発電量や電圧が不安定な自然エネルギーは電力会社からすれば手間のかかる存在でしょうが、「エネルギーの多様化」は今も昔も国家的課題です。消費者が発電者となる。「エコだハウス」が日本中に出現する。そのための「心技体」を本気で整えたいと思います。

(自民党総務会長)

 

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