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まさに総合芸術!噺と話byプリエール『銀色のライセンス』

2022.01.17 Vol.749

 

 プリエールは芝居や朗読、落語などさまざま舞台作品をプロデュースしており、今年で20周年を迎える。

 これまで小劇場で活躍する作・演出家とベテラン俳優、その逆でベテランの作・演出家と新進気鋭の若手俳優、もしくは舞台ではめったにお目にかからないタレントの起用といった、プリエールならではの斬新な組み合わせの作品を多く手掛けてきた。ここでの出会いが別の出会いを呼ぶなど、演劇界に果たす功績は大きい。

 今回は演劇作品のプロローグを落語が担うという構成で、真打の噺家による『死神』を一席楽しんだ後に、高座が装置へ、噺家が俳優へと変化して芝居が広がっていく。2020年に上演され好評を得た作品をブラッシュアップしての再演となる。

 物語は高齢化が進み、誰にでも訪れる「老い」が原因で巻き起こる事件や事故が多発する世の中で、自動車教習所で巻き起こる出来事を通じて、人間の尊厳や周囲の人々の思いを描いていく。

 作・演出は解散まで東京サンシャインボーイズに所属し、三谷幸喜の演出補を務め、解散後は自身の演劇ユニット「泪目銀座」を主宰し、2012年からは劇団「丸福ボンバーズ」を立ち上げ、多くの作品を生み出している福島三郎が手掛ける。

年末年始も演劇三昧 が〜まるちょば LIVE 2022 STORIES 『PLEASE PLEASE MIME』

2022.01.04 Vol.748

 2021年の夏にピクトグラムパフォーマンスで世界を喜ばせたパントマイムアーティスト・が〜まるちょばが、年明けからオーディエンスの心を揺さぶる。

 2021年1月に上演した『PLEASE PLEASE MIME』を、長編ストーリーの名作を含めてブラッシュアップして上演するもの。1年前には緊急事態宣言によって7公演中3公演が中止になったが、そのリベンジともいえる。

 ストーリー仕立てのショート・スケッチと、長編ストーリーで構成。言葉をはじめ、一般的に舞台の上で行われる表現と比べると、いろいろ「ない」にも関わらず、が〜まるちょばの動きで見えなかったものがビビッド見えて、舞台の上や下、劇場の外までも再現なく広がっていく世界が広がっていくように思える不思議なステージだ。

 公演に先立ち行われた取材会では「マイムで感動するって言っても、“一人でやってて喋らないのに?”って。そういうパントマイムの力を信じられない人にこそ舞台を見てほしい」と熱く語った、が〜まるちょば。「これからも〈舞台だから面白い〉ってものを届けていきたい。〈舞台でのパントマイム〉を楽しんでもらえるように頑張りますので、期待していただければ、と」。期待で胸をパンパンにして紀伊國屋ホールに向かおう!

年末年始も演劇三昧 ヨーロッパ企画『九十九龍城』

2022.01.03 Vol.748

 ヨーロッパ企画は同志社大学の演劇サークルに所属していた上田誠、諏訪雅、永野宗典が1998年に旗揚げした劇団。

 当初はSF的なシチュエーションの中で巧妙に伏線を張り巡らせた会話を展開するコメディを得意としていたのだが、映画化された『サマータイムマシン・ブルース』以降は会話よりも「構造」で見せる笑いへシフトチェンジ。現在はテレビゲームを思わせるトリッキーな地形や、SF・ファンタジめいた世界観の中で、登場人物たちがモソモソと日常会話をつむぐ、といったスタイルの群像コメディを得意としている。

 今回は約2年ぶりとなる本公演。「魔窟劇」とのことでアジアの知られざる魔境「九十九龍城」を描いた作品なのだという。

 今回の作品にあたっての作・演出の上田誠の言葉に「九十九龍城のことを描きます。あの体験は強烈でした」とあるのだが九十九龍城? どこの話?と思ったあなたはもう彼らの術中にはまってる?

 8・10・15・22日の18時の回には出演者によるおまけトークショーもあり。

年末年始も演劇三昧 B機関『レミングー 世界の涯まで連れてってー』

2021.12.16 Vol.748

 B機関は2016年に舞踏家・点滅により結成された演劇身体表現ユニット。舞踏を含む身体表現的技法を用いた演出で、新たな演劇の在り方を目指している。

 点滅は1993年に土方巽記念アスベスト館にて舞踏を始め、翌94年にパルコ劇場で上演された寺山作品「毛皮のマリー」で舞台デビューを果たしている。その後も寺山作品との縁は深く、活動名の「点滅」というのも寺山の言葉である「点滅して明なり」から取っているという。

 このB機関が旗揚げ公演以来、寺山修司作品を連続して上演しているというのも、なるほど納得である。

 これまで年1回、本公演を行ってきたのだが昨年は4月に予定していた『毛皮のマリー』がコロナの影響で今年4月に延期。その今年4月の公演も延期されてしまい、今回の『レミングー 世界の涯まで連れてってー』は約2年ぶりの本公演となる。

 寺山の死後もその作品は多くの演劇人によって作品化されてきた。それぞれの時代背景や感性のもとさまざまな解釈がなされてきた。今回点滅は物語の主題となる「壁」とは国境であり 自己と他者とを区別する境界線の比喩と解釈したという。その解釈のもと、舞踏を用いた演出でB機関ならではの「レミング」が表現される。

年末年始も演劇三昧 千葉雅子×土田英生 舞台製作事業VOL.2『徒花に水やり』

2021.12.14 Vol.748

 2013年に猫のホテルの千葉雅子とMONOの土田英生が「千葉雅子×土田英生 舞台製作事業」という座組で二人芝居『姐さん女房の裏切り』を上演した。

 同作は暴力団組織の組長の妻だった女と鉄砲玉だった男の愛の逃避行の末の物語。2人は抗争が起こった時にホテルにいたためその関係が組関係者にバレることを恐れ逃亡。その抗争で多くの死者が出たのだが、男の犯行とされてしまい、組どころか警察からも追われることに。それから20年が経ち、姉さん女房の女は50歳を過ぎてもスナックで働き、少し年下の男はヒモのようになっていた。そんな2人に再び暴力団と警察による追跡が忍び寄り…といったお話。

 物語の面白さ、千葉の姉さん女房と土田のヒモ同然の男というキャラの絶妙さ、2人のかみ合わせの良さなどさまざまな要因が重なったこともあり好評を得たのだが、あれから約7年、ついにこの2人が帰ってきた。それも強力な3人のメンバーを引き連れて。

 今回は好評だった前回の世界観を踏襲したお話。地方を拠点とした暴力団「日和組」は組長の死をきっかけに廃業。組長には4人の子供がいたのだが、三女がある男を連れて実家にやってきたことからさまざまなドラマが展開されていく。社会からはみ出した徒花たちの悲哀を滑稽なやり取りで描いていく。三姉妹に千葉、桑原裕子、田中美里、三女が連れてきた男を岩松了。土田は今回、千葉とは弟役で絡んでいる。

一言で言うと「大人の会話劇」城山羊の会『ワクチンの夜』

2021.11.29 Vol.747

 城山羊の会はCMディレクターの山内ケンジの脚本・演出による演劇プロデュース・ユニット。山内は2004年に「CMディレクター山内健司の演劇」として演劇活動を始め、2006年に「城山羊の会」を発足。以降、コンスタントに作品を発表し続け、2015年には『トロワグロ』で第59回岸田國士戯曲賞を受賞している。

 その作品は一言で言うと「大人の会話劇」。このジャンルには多くの作家がいるが“ここでしか味わえない”感の強さは群を抜いている。設定自体は特に奇抜なわけではなく、登場人物も特に変な人ではないのだが、登場人物たちの人間関係を深くえぐることによって、なんとなくおかしなところが浮かび上がってくる。劇場ではユーモアにあふれた会話でクスリとさせられ、帰り道ではこの人間関係の描き方を思い出してじわじわとさせられる。

 今回はワクチンを接種したある年配の夫婦のその夜のお話。正直、日本全国で多くの人が経験したシチュエーションで、奇抜な登場人物も出てこない。先に説明した城山羊の会の定番スタイル。そう考えると「日常って、よ〜く見てみると思っているより面白いんじゃないの?」と思わされる。「つまらない日常」みたいなフレーズに踊らされてる人にはぜひ見てもらいたい作品。

福岡で実際に起きた事故をモチーフとした最新作 劇団桟敷童子『飛ぶ太陽』

2021.11.23 Vol.747

 昨年からの新型コロナウイルスの影響で世の中には「リモート」という便利なシステムが出来上がってしまった。実際に会わなくても仕事ができてしまうことに最初のうちは便利さを感じていた人も多かったのだが、今もそうなのだろうか。

 演劇界でも苦肉の策として「配信」が取り入れられた。それはそれで地方在住のファンやさまざまな事情で劇場に来られない人たちに向けて今後も残っていくかもしれない。しかし演劇の醍醐味はやはり生身の人間が目の前で演じるものを見ることに他ならない。

 そんな演劇体験を嫌というほど感じさせてくれるのが桟敷童子の舞台。作・演出の東憲司が作り出す物語は自身が幼少期に過ごした福岡の炭鉱の町・筑豊や霊場巡りで知られる篠栗での原風景をもとに、困難に立ち向かう人々の壮絶な生きざまを描いたもの。そして劇団員全員で作り出す大掛かりなセットは劇場でありながら野外公演かと思わせるほどのリアリティーと迫力のあるもので、劇場に入った瞬間から観客を強引に物語に引きずり込んでいく。

 今回は「二又トンネル爆発事故」という1945年に福岡で実際に起きた事故をモチーフとした最新作。こんな時代だからこそ、究極の演劇体験を!

森鷗外の内面の謎に迫った作品 二兎社公演45『鷗外の怪談』

2021.11.08 Vol.747

 この『鷗外の怪談』は高名な作家として尊敬を集める一方で、政権中枢に近い陸軍軍医総監でもあった森鷗外を家庭生活の場から描き、その内面の謎に迫った作品。2014年に初演され、ハヤカワ「悲劇喜劇」賞および芸術選奨文部科学大臣賞(永井愛)を受賞するなど、高い評価を受けた。

 この永井愛近年の代表作の一つが出演者を一新し、7年ぶりに再演される。

 言論・表現の自由を求める文学者でありながら、国家に忠誠を誓う軍人でもあるという、相反する立場を生きた鷗外役に松尾貴史。松尾は二兎社が2018年に上演した『ザ・空気 ver.2』では“総理のメシ友ジャーナリスト”を演じ好評を博した。

 松尾自身、かつては多面性の極みのような芸を披露し、今もテレビ・ラジオはもちろん、映画・舞台、イベントなど幅広い分野で活躍する。そんな松尾が鷗外の二面性にどうアプローチするかはとても興味深いところだ。

才能あふれる女性パフォーマーたちが創り上げる舞台は必見 Juliet aria『DustBunnySHOW』

2021.11.01 Vol.746

 ダンスアーティストで女優の仲万美が手掛けるプロジェクト「Juliet aria」の第1弾。沖を筆頭に、ダンサーやポールダンサー、 アイドル、アクロバットダンスパフォーマー、バイオリニストなど世界的な女性パフォーマーが集結したダークファンタジーショーを展開する。

 本当か嘘か分からない情報が飛び交う中に存在した都市伝説のようなショー「DustBunnySHOW」を軸に展開。 感情を失ったダンサーは、Mr.Blackが支配する豪華客船「DustBunny」に連れてこられる。バニーと名付けられた彼女は、そこで7人の女性パフォーマーと出会う。 自分と似ている彼女たちに失った感情を抉られたバニーが「DustBunny」の中で選ぶ道とは…。

 プロジェクトを手がけ出演もする沖は、20年以上のキャリアのなかで、加藤ミリヤ、BoA、椎名林檎らのバックダンサーも務めた経験があり、マドンナにはバックダンサーとして約1年半同行している。また、映画『チワワちゃん』、舞台RockOpera『R&J』ではヒロインを務めるなど精力的に活動している。そんな彼女と才能あふれる女性パフォーマーたちが創り上げる舞台は必見。演出・脚本は三浦香が担当。

 本公演は今年4月に開催予定も全公演中止となっていた。

「ぽに」って?といったことも含め、諸々気になる作品 劇団た組『ぽに』

2021.10.21 Vol.746

 劇団た組は2013年に結成された、加藤拓也が脚本・演出を務める劇団。丁寧な言葉とドラマ運びで、底抜けた暴力性と虚無感がねっとりと複雑に立ち上がる物語を上演している。

 加藤は演劇ばかりではなく映像でも演出を担い、2018年にはフジテレビ『平成物語』でドラマ初脚本で市川森一脚本賞にノミネート。同年、日本映画専門チャンネル25周年記念の映像作家に選ばれ、2019年にはフジテレビ『不甲斐ないこの感性を愛してる』で再び市川森一脚本賞にノミネートされるなど幅広いフィールドで活躍している。

 2018年には演劇に不確定要素として実際のスポーツを持ち込んだ『貴方なら生き残れるわ』が大きな反響を呼び、映像が公開された時には1週間で1万回以上再生された。

 今回の作品は子供の預かりバイト中に大災害に巻き込まれた女性が「仕事とお金の責任の範囲」について思いを巡らす物語。置き去りにされた5歳の男児が一夜にして43歳の姿になってしまうというファンタジーというか、ちょっとした恐怖というか不思議な要素を含みながらも、その一方で生々しい物語が展開される。そもそも「ぽに」って?といったことも含め、諸々気になる作品だ。

清水宏が実行委員長を務める「ひとり舞台フェスティバル」が11月に開催

2021.10.19 Vol.746

「日本スタンダップコメディ協会」の会長を務め、スタンダップコメディアンはもとより、俳優としても活躍する清水宏が実行委員長を務める「ひとり舞台フェスティバル」が11月に下北沢の小劇場 楽園で開催される。

 文字通り「一人で舞台に立てば何をしても自由」というこの企画。出演者はゾンビをテーマにしたパフォーマンスイベント「ゾンビフェス」、グレート一人芝居「パンクスタイル」を主催するなど一人芝居の第一人者・入江雅人、ファンタジー漫談を専門とする街裏ぴんく、「マイムスニット水中三姉妹」でパントマイムの舞台公演や大道芸での活躍も知られる加納真実、気軽に見ることができて、楽しい舞台を作り続けている演劇ユニット*pnish*のメンバーである俳優・土屋佑壱、小劇場界でコアな人気を誇る劇団「動物電気」の看板俳優・小林けんいち、日本スタンダップコメディ協会にも所属し、新作落語・応用落語などさまざまな噺の可能性を広げる落語家・林家彦いち、劇団宝船に所属し一人芝居「高木珠里の演劇百人組手」など劇団外の活動も盛んな女優・高木珠里、コロブチカを立ち上げ47都道府県を一人芝居で回る野望を抱えたコロ。、毛皮族やパショナリーアパショナーリアで活躍する女優・町田マリー、元が〜まるちょばのメンバーで世界を渡り歩いたパフォーマー・ケッチなど、ジャンルにとらわれないメンバーが集結。このほかにも今回は出演者オーディションを行い、新たな才能を発掘した。それぞれが20〜30分間、舞台を独り占めし自由に演じていく。

 コロナ禍で集団で創作することが難しくなったこのご時世で、密にならずに舞台に立てる、この“ひとり舞台”は今後のショービジネス界の新たな可能性を模索するものにもなりそう——なんて小難しいことは抜きにして、間違いなくただただ楽しく、ただただ「ほほー」と感心させられ、ひょっとしたらただただ“うるっ”とさせられることもあるかも? とにかくこれだけのメンバーが集まることはそうそうない。そういう意味でも必見のイベントとなる。

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