代々木公園スタジアム建設構想のその後【渋谷未来デザイン 金山淳吾理事インタビュー(上)】

 昨年9月、渋谷区の外郭団体である一般社団法人「渋谷未来デザイン」が代々木公園エリアにスポーツとエンターテインメントの聖地として3万人規模のスタジアムパーク「SCRAMBLE STADIUM SHIBUYA」を造ろうという構想を打ち出した。以降、渋谷未来デザインは3回のクロストークを開催し、公園や施設の利用者や完成後に利用者となりうる関係者などを集めさまざまな意見を出し合っている。そこで司会を務めるなどクロストークをリードする同団体の金山淳吾理事にここまでの手応えなどについて話を聞いた。今日から3回にわたってお届けする。
「渋谷未来デザイン」の理事を務める金山淳吾氏(撮影・蔦野裕)

「2020年にしっかりと東京に申し入れできるように材料を揃えていきたい」



 そもそも渋谷未来デザインとは?

「お役所仕事って、だいたい構想に1年、議会を通すのに1年、予算を取るのに1年という感じで3~4年かけてモノを動かしていくことが多いのですが、区長、副区長に民間企業出身者のお二人が登用されてから“もっと速いスピードで動かせるような街づくりのシンクタンクを作れないか”ということになって、2年くらいの構想期間を経て、昨年4月に立ち上がったのが渋谷未来デザインです」

 昨年9月に発表したスタジアム構想では「2027年までにスタジアムがあれば」と言っていた。今現在の感触は?

「まだまだ感触をつかめるところまでもいっていません。渋谷区は今大規模な再開発をやっているんですが、駅周辺が今年から来年にいったんできあがってきて、その後、桜ケ丘が段階的にできてくる。一通りの完成形が2027年にできるので、そのころに最後のピースとして代々木公園も完成してくれればいいなという考えがあって、2027年という目標を掲げているんです。なのでそこに至るまではまだまだ案件開発段階だと思っています。代々木公園は国有地で都立の公園なので、住所は渋谷区でも渋谷区だけで開発できるわけではない。そうすると渋谷区が一体となって、“代々木公園にこういう施設が欲しい。こういう機能が欲しい”ということを一つの意見としてまとめていかなければいけない。それは渋谷区だけではなく、都民がそういうことを求めているんじゃないかということを明らかにして、東京都に都の案件としてプロジェクトを立ててもらうところまでもっていかないといけないと思っています。そこにはまだ全然至れていないんじゃないかと思います」

 いつまでに東京都に上げるといったロードマップは?

「いま東京の関心事は2020年のオリンピック・パラリンピックだと思うんですが、それが終わった後に、“じゃあ次の東京はなにを成し遂げていくんだ”と言うときの一つのイシューにしたいと思っているので、2020年にしっかりと東京に申し入れできるように材料を揃えていきたいと思っています」

 現区長の長谷部氏は改革的でアグレッシブ。こういった動きに前向きな印象があるが、万が一、長谷部氏が落選するとか国政進出といったことがあり、区長が代わった時、次の区長の熱意とか前向きさによってこの構想が左右されてしまうのではという不安などは?

「いろいろなシナリオがあって読めないところはあるんですが、そういう可能性はゼロではないとは思ってます。でも、少なくとも区長とか区議会議員というのは区民の代表。僕らがいまやっているのは、区長や区議会議員による政治家主導の開発ではなくて、区民主導でプロジェクトをリードしていけないかということ。だから渋谷未来デザインでは“産官学民の共同で渋谷の街の未来をデザインしていく”ということを掲げているんですけど、その中でも民の声というものを大きく集めて、“区民が欲しいといっている”ということをちゃんと伝えて、区民の意志に応える区長や区議会議員が次の選挙で生まれてくるような流れにしたいとは思っているんです。区民がいらないといっているのに、作りたいと言って出馬する人もいないだろうし、逆に区民が欲しいといっているのに、いらないという政治家もそう多くはないと思うんです。当然いろいろな角度から検証しなければいけないんですが、そういう流れを作りたいと思っているので、区長が変わろうが変わるまいが、このプロジェクトは区民の総意として進めていくべきものなのか、そうじゃないものなのか、というところをジャッジしながらやっていきたい。そういう意味では渋谷未来デザインも“スタジアムを絶対に作りたい”と思っているというよりは、“あったほうがいいんじゃないか?”という一つの有望なシナリオとして掲げている。どうしても作らないといけないということで動いているプロジェクトではないと、少なくとも僕はとらえています」
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