特撮怪獣映画『大怪獣モノ』主演 飯伏幸太 SPECIAL INTERVIEW

『いかレスラー』『日本以外全部沈没』の河崎実監督の新作!
 その破天荒な試合っぷりと甘いマスク。そしてそこはかとなく漂う“ほうっておけない感”も相まって、現在、日本で最も人気のあるプロレスラーといっても過言ではない飯伏幸太が初主演を務めた映画『大怪獣モノ』が7月16日より公開される。
撮影・神谷渚
やっぱり気になる選手がいる
日本でプロレスをやりたい


 インタビューが行われたのは完成披露舞台挨拶が行われた6月27日。飯伏は世界最大級のアメリカのプロレス団体WWEで23日(日本時間24日)に「クルーザー級クラシック・トーナメント」に出場し、25日に帰国したばかり。結果については放送の都合もあるようで公式には発表されていないのだが、SNSではその活躍っぷりが広く知れ渡っているので、そちらを参照していただくとして…。

 まずはプロレスの話から。WWEのマットに上がった感想は?

「やっぱりちょっと、難しい感じはしましたね。スタイル的にというか…、何て言えばいいんだろう…。普通の会場だとお客さんがたくさんいる方向が正面のことが多いんですけど、今回は“収録”という側面もあったので、カメラがあってお客さんがいない方向が正面になっていたんです。残る3方向にはお客さんが入っているんですが、基本的にはこのカメラのある方向を意識して試合をしなければいけない。でもどうしてもお客さんがいる方向に向かって試合をしてしまうので、うまくいかないというか…難しかったですね。その辺で困った選手は自分以外にもいっぱいいたと思います」

 WWEだと観客からの声援とかヤジは英語。やりにくさなんかは?

「英語は全然分かりませんが、表現とニュアンスで、全然問題なく分かりますし、会話もできますね。はい(笑)」

 観客の反応は日本語のほうが伝わりやすい?

「逆かもしれないです。僕は全部を感覚でやっているんで、感覚的には向こうのほうが反応はしてくれやすい。だから、やりやすさで言えば、向こうのほうがやりやすいです」

 飯伏が参加した「クルーザー級クラシック・トーナメント」は1回戦で勝っていたら7月にまた渡米し試合をすることとなる。それも合わせて現在のプロレス活動は?

「日本では8月11日にWRESTLE-1の横浜文化体育館大会に出場します。8月28日にかつて所属していたDDTが恒例の両国国技館大会を開催するんですが、WWEで勝ち進んでしまうと日程が重なる可能性があるので今の段階ではなんともいえないんです。WWEは最後まで勝ち進んだら9月まで、ということになりますね」

 日本のプロレスファンは「飯伏はトーナメントに優勝して、そのままWWEに行ってしまうんじゃないか」という不安と期待を持って見ている人が多い。飯伏本人としてはWWEについてはどう思っているのか…。

「全く行きたいとは思わないですね。(WWEで)やってみて、響くものはあるけど、想定内でした。やっぱり日本でやりたい」

 あるインタビューでは「日本でやり残したことがある」とも言っていた。それは?

「今は団体が違うので名前を出すのは控えますが、気になるレスラーがいるんです。かつて対戦もしたし、タッグを組んだこともある選手です」

 飯伏は今年4月にWWEデビューを果たした元新日本プロレスの中邑真輔と2度にわたり名勝負を繰り広げ、ともに“特別の存在”と認め合った。そんな中邑がいなくなったことで、日本では刺激のある相手がいなくなってしまっているのでは、とも思われていた。

「いえ、まだいますね。その選手とは対戦というより、タッグを組んでいろいろな選手と試合がしたいと思っているんです。でも、それをやってしまうのも“どうなんだろう?”という気持ちもあるんです。彼と一緒にやりたいことをやってしまうと、それがゴールになってしまうかもしれないという怖さもある。それでも続けられないこともないんですが、そういう意味では、やるのが怖いというところもあります」

 本作は異常気象と地殻変動などにより突如現れた大怪獣モノに、万能細胞を注入され怪獣並みに巨大化した人間が戦いを挑むという特撮怪獣映画。監督は『いかレスラー』『日本以外全部沈没』『ヅラ刑事』など異色の作品を発表し続ける河崎実。飯伏はその巨大化した主人公(新田陽出人:強化後1)を演じ、モノといつもリングで見せるようなド突き合いを展開。格闘シーンはどのように組み立てた?

「動きに関しては演出の方と自分で考えました」

 パンチ、キックといった打撃はともかくパワーボムまで繰り出す過激ファイト。

「打撃のときはスーツアクターの方は入っていました。パワーボムは入っているものと、入っていないものを撮っているんですよ。人が入っていないと体が半分に折れ曲がった形になってしまうんです。どうやら監督はその形が嫌だったようで、中に入ったままのバージョンも撮ろうということになりました。“そんなことやっていいんだ?”ってびっくりしましたね。その瞬間“この監督、狂ってるな”って思いました。監督が一番狂ってます、間違いなく。おかしいですよ。すごいです」

 では出来上がりをみてヒヤっとしたり?

「自分で言うのもなんですが。映画はおもしろかったですね(笑)。ハイキックなんかが一番危なかったですね。足が人に当たった感触がありましたから。相当激しくヒットしていたので、そういうのは怖いと思いましたけど、見ている分にはおもしろかった。でもスーツアクターの方がプロレスをすごく知っていたのでやりやすかったですね」
撮影・神谷渚
“女”として意識していなかった赤井沙希とのラブシーンに苦労

 戦闘シーン以外にもさまざまなシチュエーションがあった。演技全般で一番苦労したところは?

「基本的には赤井沙希さんがらみですね。リサ(役名)がらみは全部です。以前同じ団体にいて、同じように一緒にプロレスをやっていた人とラブシーンとか、そんな、なんか…“女”として意識したことがなかったので。なんかちょっと、変な感じ…。変な感じでした。まあ、でもちゃんとできましたね」

 中には「これはひょっとして素の飯伏幸太なのでは?」と思わるようなシーンもあった。

「お酒を飲むシーンがあるんですが、酔っぱらったらあんな感じになるときもありますね。でもふだんはお酒は飲まないんです。プロレスラーなので、やっぱり飲む機会はたくさんあるのですが、どちらかというと飲めないんです。少し飲んだだけですぐ赤くなる」

 DDTでは無理に飲まされるようなこともなさそう。

「そうですね、無理にはないですね。逆に新日ではよく飲まされました(笑)。完全に体育会系ですから。ただ棚橋さんから下くらいは身体に気をつかってというのもあると思いますが、飲まなくなってますね、世代的に」

 一度はモノを破るのだが、パワーアップして戻ってきたモノに返り討ちに遭い、雪辱を期して特訓に入る。その場所はなんと滝。監督の昭和プロレス好きがよく分かるシチュエーション。

「あれは覚醒しましたね~。その後のプロレスにも生きました。撮影は3月の上旬でまだ寒い時期。滝に入っていたのは5分くらいらしいんですが、山奥に行って寒い中で待機していたこともあって、僕には相当長く感じられましたね。寒いのは嫌いなんです」

 撮影のすぐ後にDDTの両国大会に出場。対戦相手にとっては全く災難な話だ。ちなみにプロレスを好きになったきっかけは?

「一番最初は『WAR vs 新日本プロレス』をビデオで見たのがきっかけ。多分1992年くらいですね。新日といっても越中詩郎さんが作った平成維震軍。最初に衝撃を受けたのは折原昌夫さん。“動くプロレス”をやっていたので。僕は『ドラゴンボール』の悟空になりたかったんですよ。それで、映像を見て“リアルなドラゴンボールだ!”と思って、そこからプロレスにのめり込んでいきました。実際に見るようになったのは小学校5年生くらい。その時も折原さんと誠心会館の青柳館長の試合を見た時に“ドラゴンボールだ”と思いました。折原さんのムーンサルトプレスなんかを見て“本当に人間が飛んでいる”という感覚に陥りました」

 しかし今の飯伏はそれをはるかに超える動きを見せる。得意技のフェニックス・スプラッシュはムーンサルトプレスの難度を高めたもの。

「僕のやっている動きに関しては、動きだけだったらフェニックス・スプラッシュは体操をやっている子どもだったら5歳児でもできます。この体の大きさでそれができるかは別の問題ですが」

 DDTでデビュー後すぐに頭角を現した飯伏にはかつてK-1MAX全盛時にオファーがかかったことがある。

「K-1のオファーがあったときは68kgで、最近は94kgだったんですがWWEに出るために3kg落としていますから、今は89kgくらいですね」

 デビューからこれだけ体重を増やしているのに動きが変わらないレスラーというのはそうそういない。
「動きを変えずに体重を30kgぐらい増やしたので、やっぱりキツイといえばキツイです。ひとつひとつの技はあのころと同じことができるのですが、連続でやるのがしんどい。ミサイルキックから、ムーンサルトをやって、フェニックス・スプラッシュをやるとなると、身体的には昔のほうが全然、楽でした」

 最近はプロレスという枠を飛び出し、さまざまな場面で活躍中の飯伏だが、この映画のオファーが来た時はどう思った。そして決断の決め手は?

「最初にお話をいただいたときは一番忙しい時期だったんですよね。いろいろなお仕事のお話が来ていて、全部“やります”と答えていた中のひとつみたいな、そんな感じで“はい、やります”ってお返事したんです。以前に別の映画に出ていたんですが、その時の感覚で1~2分出るだけというつもりで。それに主演といっても何人かいる中の一人で、自分の出番はあまり“ない”って言われていたんですよ。台詞もあまりなくて、体を動かすだけだと思ってOKしたのですが、どうやら違うらしいということが途中で発覚して、一度お断りさせていただいたんです。その後、もう一度監督と直接会って話をする機会がありまして、改めて内容を聞いてみると“面白そうだな”って思いまして、“もう一回お願いします”ということになりました」

 今後は俳優活動も?

「やれるのであればやりたい。というのも、ちょっと…」

 目覚めた?

「目覚めてまではいませんが、やってみて面白かったです。出来上がったものを見て、そう思いました」

 河崎監督と飯伏という2人の異才が奇跡的な出会いを果たしてできた『大怪獣モノ』は映画的な興味として必見の作品。また飯伏vs大怪獣モノは飯伏にとって“ヨシヒコ”戦に並ぶ名勝負になる可能性もあり? そういう意味でも飯伏ファンにとっては必見の作品なのだ。
(THL・本吉英人)
©2016『大怪獣モノ』製作委員会
『大怪獣モノ』7月16日公開

『大怪獣モノ』監督:河崎実  出演:飯伏幸太、斉藤秀翼、河西美希、赤井沙希、鈴木みのる他/1時間33分/アーク・フィルムズ配給/7月16日ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国順次ロードショー
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