トンネルを抜けた先に生まれた、新たな“俳優・岩田剛典”!

撮影・仲西マティアス

振り返るのは好きじゃない



 セリフも多く背負うものも大きい難役に挑みたいと思った理由とは。

「シンプルにチャンスだと思ったからです。確かに難しい作品だし難しい役どころ。ものすごいチャレンジだけど、ものすごいチャンスでもあると思いました。こういうチャンスをつかむかどうか以前に、巡ってくるかどうかという運もあります。本作のプロットを読ませていただいた時に、自分の直感で、これは今やるべきタイミングで素晴らしい話を頂いた、と感じました。この作品は、自分のキャリアにとって大きな分岐点になるという予感があったんです」

岩田の直感に響いた要素とは?

「もともと好きなんです、こういう邦画ならではの重厚感があるミステリーやサスペンスが。ハリウッドのようなお金をかけた作品も見ごたえがあって好きですけど、こういう邦画だからこそ日本人の心に響くような深みがあるというか。見終わった後に席から立てなくなるような映画が好きなんですよね。本作は、まさにそんな作品だと思うんです。かつ1回見ただけじゃなく、見終わった後に食事にでも行って作品のことを語り合いたくなる。さらに答え合わせのように2回、3回見たくなる。でも最初にお話を頂いたときは、まさかこれだけの映像に仕上がることまで予想できないので、常に作品選びはイチかバチかなんですけどね。本当にいい作品に巡り合えたと胸を張って言える作品になりました」

そんな作品に巡り合いチャンスだと気づくことができたのも岩田自身が常に高みを目指していたからこそ。

「確かにチャレンジしたい気持ちは常に持っていました。もちろん『HiGH&LOW』や『植物図鑑』でも、その気持ちは同様に持っていましたけど、あくまでそれまでの僕のイメージだったり、EXILE TRIBEの一員としての僕を生かしてくれた作品だったということを、自分でも分かっていて。だから、これまで挑んだことの無い部分で自分を評価していただける可能性のある作品という意味でも、僕にはありがたい作品だったんです。これまでのイメージや土台に頼ることができず、武器は僕自身の芝居しかなかった。だからこそプレッシャーも大きかったのかもしれません」
 俳優としての情熱と姿勢は、早くから岩田の中に根付いていた。

「ブログなどにも自分なりに考えたことを常々つづっているんです。書籍化できるくらい(笑)。でも、すべてのファンに僕の考えていることが伝わるかというと、なかなか難しい。そういう意味でも本作で、新しい自分を見てほしいという気持ちがあります。僕の性格として、過去の自分にとらわれていたくないというか。2〜3年前の作品なんて自分では恥ずかしくて見られないですね(笑)。だからファンにもあまり振り返らずに、常に今の自分を見てほしいと思っています。また、僕に関係なく、この作品だから見に行こうという方も多いと思うので、初めて僕という役者を知ってもらえる機会にもなるんじゃないかとワクワクしています」

本作の前と後で大きな変化

 今回共演した、天才カメラマン・木原坂雄大役の斎藤工と敏腕編集者・小林役の北村一輝という2人の俳優の存在も大きな刺激となった様子。

「現場に入ってからずっと皆で食事に行きたいねという話をしていたんですが、なかなか全員が揃う機会がなくて。たまたまクライマックスシーンの前に予備日が空いて、北村さんがお店をとってくださって食事に行き、4軒くらいはしごして、最後はダーツバーに行って(笑)。皆でずっと映画トークをしていました。北村さんは映画に対して熱い思いを持っている方ですし、斎藤さんも映画が本当に好きな方で、もともと以前からのお知り合いでずっとサシ飲みしたかったんだそうで、盛り上がっていました。それを僕がニコニコしながら聞いている、という図でした(笑)。素敵な関係だなあ、と思いながら。こういうつながりも大切にしていきたいし、何よりお2人がかっこいいんですよね。人気も実力も運も持ち合わせているというか。すべてひっくるめてリスペクトしています」

 クライマックスには“予測不可能”といわれる衝撃の展開が待ち受ける本作。普段は あまり騙されないほう、という岩田だがさすがに本作の“罠”には騙されたのでは。

「騙されましたね(笑)。僕も脚本を読んですべてがクリアになったとき、なるほど、これは面白い!と思いました。これを予測できる人はいるんだろうかと思うような見事な脚本になっていて。ただ、これ映像化できるのかなとも思いましたね。作品に入る前、滝本監督とお会いしたときに監督が手掛けた新作ドラマの『北斗 ある殺人者の回心』を教えていただいたんです。それを拝見して、この作品は滝本監督しかない、と僕も思いました。本当に全幅の信頼を置いて撮影に臨ませてもらいました。監督には芝居のテクニック的な部分でもたくさん教えていただきました。かつてないハードな現場でしたけど、この作品に出会う前と後では、役者として大きな変化があったと自分では思っています」

 本作で岩田が見せる、これまで見たことの無いような表情の数々に驚くファンや、新たにファンになる人も多いはず。
「先入観を持たずに、まっさらな気持ちで見てもらえれば、見終わった後、座席から立てなくなっていると思います(笑)」

(本紙・秋吉布由子)
©2018映画「去年の冬、きみと別れ」製作委員会
『去年の冬、きみと別れ』
監督:瀧本智行 出演:岩田剛典、山本美月、斎藤工、浅見れいな、北村一輝他/1時間59分/ワーナー・ブラザース映画配給/3月10日(土)より全国公開 
公式サイト
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