【インタビュー】尾上右近が現代劇に初挑戦!「新しい経験にワクワクしています」

 歌舞伎の舞台から、さまざまなフィールドに活躍の場を広げている右近が次に挑戦するのが現代劇。7月6日から新宿・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAで公演される『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』に出演する。

「現代劇の舞台に初めて挑戦させていただくのですが、すごく楽しみです。まだまだやりたい事、経験したい事がいっぱいある中で、新しい事ができることにワクワクしています。歌舞伎の場合は稽古が4日とか5日間だけなんですね。それは古典でやったことのある演目や、みんなが知っている演目をやることがほとんどなので、全体稽古はちょっとした調整や確認ぐらいの意味なんです。それぞれに土台があるという前提でやるので、そんなに時間は要さない。しかし、現代劇は一から創り上げていくので、1カ月ぐらい稽古時間があります。それだけでも新鮮ですし、まったく想像がつきませんが、その想像がつかない状態も含め、すごく楽しみですね」

 右近が演じるのは幼い頃のトラウマと戦争による負傷が原因で、薬物依存症になった過去を持つ青年・エリオット。

「現代社会におけるネット社会と、コカイン中毒や戦争といった問題を扱った作品です。ネット社会は僕らにとっても身近であり、逆にコカイン中毒や戦争はすごく実生活からは離れているものですが、そこに付随する人間の心というのは不変だと思うんですね。人の心、悩み、思い、そういう部分は誰もが持っているし、共感できる。想像ができないことと共感できることが融合している作品だと思います」

 ピューリッツァー賞戯曲部門賞受賞作である同作の翻訳・演出を手掛けるのは劇作家、演出家として数々の受賞歴を持つG2(ジーツー)。

「G2さんが演出した『東雲烏恋真似琴(あけがらすこいのまねごと)』という新作歌舞伎を以前拝見したことがあって、その印象が強く残っています。人間が作った人形に魂が入り、人間を翻弄していくというストーリーで、ゾッとしたのを覚えています。自分たちが作ったものに、自分たち自身が振り回されるというのは、科学の発達とともに人の心や思いと離れていくということを意味するのですが、やはりそこには常に人の心が普遍的につきまとう。そこが今回の作品と共通するのではないかと感じています。またその作品は、今までにない新しい歌舞伎という印象がとても強かったです。実際にお会いしたG2さんは、すごくとらわれない方だなと思いました。あれもありだし、これもありだし、ドンと来いと。しっかりした軸がある方なので、こちらがぶつかっていくことで、いろいろなものが膨らむんじゃないかと思います。“どうしたらいいですか?”ではなく、“こうしてもいいですか?”と、どんどん聞いていきたい。お芝居に対する思いなどもうかがって、人間としてぶつかっていける方だと感じました」

 歌舞伎のスケジュールも多忙な中、新たな挑戦となる舞台が楽しみだと語る右近に意気込みを聞いた。

「5月は27日まで『スーパー歌舞伎II ワンピース』の公演があったので、6月から稽古に入ります。現代劇も初めてなら、長丁場の稽古も初めて。また女性キャストがいるという状況もなかなかないので、自分自身どんなものができるかとても楽しみです。歌舞伎をご覧いただき、僕を知って下さっている方は、見守るような不安な気持ちもあると思います(笑)。しかし、その声援は僕の支えになっているので、それにちゃんと応えられるように新鮮で真っ直ぐな気持ちで、新たな挑戦として、一生懸命務めたいと思っています。また、G2さんやほかのキャストの方のファンで、僕の事を知らない方もたくさんいらっしゃると思います。その方たちに受け入れてもらえるかどうかは、僕の努力と気持ち次第だと思います。ですからそこにぶつかっていく気持ちで、恐れずに踏み込んでいきたいと思ってます」

(TOKYO HEADLINE・水野陽子)