【インタビュー】森山未來、スパーリングでコーチをダウン!?「役作りで現役ボクサーと同じトレーニングをした理由」

11月27日公開の映画『アンダードッグ』主演


 第88回アカデミー賞外国語映画賞の日本代表に選出されるなど、多数の映画賞を席巻した『百円の恋』から6年。監督・武正晴、脚本・足立紳の黄金タッグが、再びボクシングを題材に描く大作! 過去のささやかな栄光が忘れられず“かませ犬(=アンダードッグ)”になり果てながらもボクシングにしがみつくしか生きる術を知らない主人公・晃を演じるのは、役者としてのみならず身体表現の世界でも活躍する森山未來。渾身の役作りに込めた思いを語る!
撮影・堀田真央人 ヘアメイク・須賀元子 スタイリスト・杉山まゆみ ニット 3万4000円、パンツ 2万4000円、ベルト 1万円 すべてLAD MUSICIAN(LAD MUSICIAN HARAJUKU 03-3470-6760)

本気モードのスパーリングも経験「かつてない感覚」



「短い期間ながらもボクサーとしてのトレーニングを行いました。スパーリングもさせて いただいたんですが、ちゃんとパンチをもらいましたよ(笑)」と振り返る森山未來。劇中では、無駄なものをそぎ落とした肉体に加え、日本ランキング1位まで上り詰めた現役 ボクサーたる迫真の戦いっぷりを見せ、寡黙な主人公の内にくすぶる思いを全身で雄弁に語る。

本作で森山が演じた主人公・末永晃は、一度はチャンピオンの座に手をかけながらも、 今では“かませ犬”としてリングに上がり、ボクシングにしがみつく日々をおくる崖っぷち ボクサー。“負け犬”とはいえ、プロボクサー、しかも元日本ランカーである晃を演じるにあたり森山は『百円の恋』にも参加したボクシング指導・松浦慎一郎(俳優としても活躍。本作では北村匠海のセコンドとして出演する)のもと、現役ボクサーが行うようなトレーニングや食事制限、さらには本気モードのスパーリングも重ねた。

「最初は、パンチってどう打つの、というところからのスタートでした。基本の打ち方か らジャブ、ワンツーと動きを覚えていき、ボクサーとして行うルーティーンを撮影の約1年前から始めました。形だけなら、わりとすぐできたんです。縄跳びなどのトレーニングも続けるうちに慣れていきましたし、このパンチを打つときに腰がどう入るかといった動きも、やっていくうちに理解できるようになりました。ただ、対戦相手とどう対峙するべきかという感覚がよく分からなかったんです。形を作る、体を動かすというのは、これまで自分がやってきたことの延長線上にあると言えるものですが、殴り合う相手と向かい合うという感覚は自分にとってまったく新しいものでした。トレーニングでは実際にスパーリングもして、その感覚を多少なりとも実感できたのは本当に良かったと思っています。撮影では実際にパンチを当てることはないのでパンチそのものはフィクションですが、肩先から腕が伸びてくる瞬間に対するリアクションは本物になる。本当に殴られるわけじゃないという前提でも、本当に殴られたことがある人とそうでない人のリアクションでは、まったく違ってくると思います。それを知ることができたのは大きかった」

スパーリングで経験した最も強い“衝撃”はどのくらい?

「失神まではいかなかったですけど、自分が今どういう状況なのか一瞬、分からなくなり ました(笑)。ずっと松浦さんにスパーリングの相手をしてもらっていたのですが、しだいに松浦さんを攻略でき始めてきて。彼の優しさにどうつけ込むか、自分なりに分かるようになってきたんです(笑)。それで他の方々にも相手をお願いしたのですが、皆さんスタイルもさまざまだし、慣れない相手の動きなんてもちろん見抜けない。そういうときは、けっこうガツンともらいましたね。前編の最初のほう、晃がかませ犬の役割で出た試合の相手役の方とも何度もスパーリングをさせていただいたのですが、彼はサウスポーで、しかもフリッカージャブというクセのある打ち方をする人だったこともあり、最初のうちは僕なんてまったく相手にならず、けっこうバンバン、パンチをもらいましたよ」

 もはや役作りの域を超えた実戦的トレーニングで何かが目覚めたのか、こんなことも…。

「実は一度、松浦さんからダウンをとったこともあるんです(笑)。ちょっと本気でやってみようということになって、打たせてもらったんですけど。松浦さん、少し悔しそうでした(笑)」
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