石井杏奈“学校一の嫌われ者”から最高の笑顔を持つ少女へ…変化するヒロインを見事に表現! 映画『砕け散るところを見せてあげる』

 女優・石井杏奈の新たなスタートを飾る注目作がついに公開! 昨年末に解散をしたE-girlsのパフォーマーとして人気を博すと同時に、映画『ソロモンの偽証』『ガールズ・ステップ』でブルーリボン賞新人賞を受賞するなど着実に女優として力をつけ、2021年から女優業に集中し活動することを発表。そんな彼女が、人生において特別な作品とする本作への思いを明かす。



石井杏奈

「大変と思う余裕もありませんでした(笑)」難役に寄り添い熱演


 当初は昨年5月に公開される予定だったが、新型コロナウイルスの影響によりやむなく延期となっていた本作。改めて4月9日に公開が決定し、キャストスタッフも大きな喜びを感じているのでは。


「このような状況のなか、無事に公開できたことを本当にうれしく思っています。きっと本作に関わった全員が同じ気持ちだと思います。こうしてみると、今この作品を公開する意味をそれぞれが感じているのではないかと思います」


 アニメ『とらドラ!』『ゴールデンタイム』の原作で知られる竹宮ゆゆこの同名小説を『うさぎドロップ』『jam』の鬼才SABU監督が映画化した注目作。どこにでもいる男子高校生が、いじめられていた女子生徒を助けたことをきっかけに、想像だにしない危険に巻き込まれていく物語。本作で石井が演じるのが、“学年一の嫌われ者”と呼ばれるヒロイン蔵本玻璃(くらもと はり)。ボサボサの髪で顔を隠す“挙動不審な人物”として衝撃的な登場をはたすが、主人公・濱田清澄(はまだ きよすみ)との出会いを経て、内に秘めていた輝きを取り戻していく姿を鮮やかに体現した。


「私も原作を読みながらどんどん玻璃への共感が増していき、気づいたら応援したい気持ちでいっぱいになっていました。玻璃のことが好きになるにつれて、この役を演じたいという気持ちも強くなっていました」


 物語が進み、玻璃が抱える大きな秘密が明かされていくにしたがい、見る者が予想だにしない表情を見せていく玻璃。1人の人物のあらゆる感情を表現しなくてはならないという、非常に難しい役どころだったはず。


「難しい役だということは分かっていたのですが、玻璃に寄り添いたいという気持ちが先に立っていました。何より、実際に役に入ってからは大変、難しいと感じる余裕すらなくて(笑)。振り返ると、あのシーンは難しかったなと思えるところがいくつもあるのですが、当時は本当に無我夢中で。毎日、達成感がものすごかったです。撮影を終え帰宅し、ものすごい疲れと幸福感で眠りにつく日々でした(笑)」


 そんな難役にも、役作りを考えるというより思うままに演じた、と振り返る。


「このシーンをどう演じようかと考えるというより、しっかり玻璃として生きようという思いのほうが強かった気がします。現場でも、原作や脚本を読んで自分の中で浮かび上がってきた玻璃を感じるままに演じたところ、SABU監督からも“それでお願いします”とOKを頂きました。清澄を演じた中川大志くんも同様で、2人とも監督から指示を頂くことはほとんど無かったように思います。思うままに演じた2人の織りなすものがぴったり合い、あの瞬間に生まれた感情を表現することができました。共演の役者さんのお芝居も、自分自身の中に湧き上がるものも、すべてが想像を超えてくる現場でした」


“ヒーロー”のように玻璃の前に現れた主人公・清澄を演じる中川大志、玻璃の父を演じた堤真一ら共演者にも大きな刺激を受けた。


「実は、大志くんとしっかりお話をしたのは撮影が終わって打ち上げのときでした。撮影中は敢えて、玻璃と清澄としての微妙な距離感を保ち、芝居について打ち合わせも一切しませんでした。大志くんとは共演が3度目になるのですが、今回は絶妙な距離を保って演じることができたことに、彼の人柄の素晴らしさを感じました。清澄役は大志くん以外に考えられないですし、大志くんだったからこそ私も玻璃になれたと思います。それは他の役者さんたちも同様です。とくにお父さん役の堤さん。本当にすごかったです。堤さんが撮影に参加したのは比較的短期間だったのですが、存在に圧倒されました。普段は優しくて明るい堤さんが、スタートがかかったとたん豹変します。そばにいるだけで怖くて涙が出そうになるという初めての経験をしました。同時に、一緒に演じていてこんな気持ちにさせてくれる俳優さんがいるのだと、尊敬の気持ちしかなかったです。堤さんがすごいのはご自分だけではなくて、相手にも本番のそのときしか出せない気持ちを引き出させてくれることです。私もマネできるか分かりませんが、そんな相乗効果を生む俳優になりたいと思いました」


 そんな登場人物が巻き起こす感情の嵐に観客を巻き込むのは海外でも高く評価され続けるSABU監督。


「SABU監督はギャップをとても素敵に描く監督という印象がありました。以前に『jam』を拝見したときも、1つの物語に怖い要素やコミカルな要素が混在しており、そのギャップがとても面白く描かれていて、どこか心が休まる部分があるという、不思議な感覚を覚えました。今回もとても楽しみだったのですが、実際にご一緒させていただいて改めて感銘を受けました。撮影中、SABU監督から、あるシーンを追加で撮影したいというお話を頂きました。SABU監督は“2人が生きた証をラストに加えたい。だからこのシーンを追加で撮影しようと思うんだ”と。その言葉を聞いたときは本当にうれしかったです。もしかしたら、私が一番好きなシーンになったかもしれません(笑)。ぜひ最後まで席を立たずに見届けていただけるとうれしいです」



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