高橋久美子、初の小説集『ぐるり』で描く「地球がぐるりとつながっていく世界」

高橋さんの希望で撮影は近くの公園へ。快晴の下「外で撮っていただけて良かった」とポーズを取る

人間って深掘りしていけば全員面白い


「新型コロナウイルスに影響を受けていない人はいないでしょうし、私もそのひとりなので、書くことも変わったと思います。世界が砂漠化してしまった『星の歌』なんかはまさにそうで、リモートでイベントをした時に、ひとりの女の子が“1カ月ぶりくらいにしゃべりました”と言ったことにものすごく衝撃を受けて、そこからできた物語です。ライブハウスが休業してしまって、歌ったり表現したりする場所はいらないのか、画面の中だけで本当にいいのかということを考えながら書きました。『DJ久保田 #1』になかったアクリル板が、書き下ろしの『#2』では登場して、休憩時間に“換気しまーす”と言っていたり」

 コロナ禍ではどう過ごしましたか?

「外の友達に会いに行けなくなったので、近所に“こんなオモロい人がいっぱい住んでたんやな”と発見しました。ずっと部屋にこもって原稿を書いていたので、隣の人が心配してご飯を持ってきてくれたり、うちの庭は植栽が多く近所の名物スポットになっているのですが、急に知らないおばちゃんが“誰が育ててるのか見てみたかったのよ”とやってきたり。そんなことがよくありましたね。

 人間って深掘りしていけば全員面白いんだなと思っていて。『ぐるり』の登場人物は本当に身近な感じの人を書いていて、大きな話はひとつもないんですけど、近所の人でも掘っていける関係になると面白いところがいっぱいある。“普通の人はおらんな、人間って魅力的やな”と近所の人に気づかされました」