滝藤賢一、服を語る「ファッションは“悪友”。 自分の人生を楽しくしてくれるもの」

 映画、ドラマ、CMで実にさまざまなキャラクターを演じ分ける俳優・滝藤賢一。最近では芸能界一のファッションフリーク、植物蒐集家としても知られている。そんな滝藤の初の著書となる『服と賢一 滝藤賢一の「私服」着こなし218』(主婦と生活社)は、昨年7月から今年6月までトータル173日間にわたり、218ポーズもの私服を披露した究極のファッションブックだ。服をこよなく愛する滝藤にとってのファッションとは?(撮影:蔦野裕)

『服と賢一 滝藤賢一の「私服」着こなし218』(主婦と生活社)を出版した滝藤賢一さん

僕の生きた証としてこういう本が残したかった

 出版のオファーが届いた時、率直な感想としてどう思われましたか?

「まず、思ったのは“売れないぞ”ということですね(笑)。誰がこんなオッサンのファッションブックを買うんだと思いましたよ。正気なのか、と。

 とはいえ俳優の仕事に支障を来すわけではなかったですし、SNSもやっていませんので、僕の生きた証としてこういう本が残したかった。この本と一緒にお墓に入りますよ(笑)。

 僕の私服を撮りたいということでしたので、仕事に行く前の時間を使って撮影しました。いつもより30分くらい早めに仕事に行って、そこに写真を撮りに来てもらって、それから現場に入っていました。

 ミュージシャンの方は自分のCDを、グラビアアイドルの方は写真集を周りの人に配れるじゃないですか。お世話になった方に“これを作ったので読んでください”とプレゼントできるのもいいなと思ったんですよね。毎年やりたいくらいですよ」

 本の制作のために意識されたことは?

「特にないですね。ただ、もちろん仕事で疲れている日もあるので、そういう時に“何着て行こっかなー”ということはありました。朝が早すぎて寝巻きみたいな格好で行ったこともありますよ。でも、私生活の延長を撮ってくれていたので、とても楽な気持ちで撮影できました」

 撮影中に印象に残ったエピソードは?

「週刊誌に3回撮られたことですね(笑)。どこから撮ったのか、3回ともまったく気がつかなかったです。

 撮影中、何年かぶりに俳優の芹澤興人君と会ったことも印象に残っています。その時も週刊誌に撮られて、“ファンに神対応”と書かれたんですけど、彼は俳優ですからね(笑)。割と撮影初期の頃だったので、もっと知り合いに会うかなと思いましたが、意外とこの1回だけでした」

 ファッションもそうですが、さまざまなシチュエーションで撮影されていますね。

「僕は背景を含めてひとつの作品だと思っていたので、面白くて雰囲気がある場所で撮影することにもこだわりました。そのへんはカメラマンもすごかったです。“これが狙いだったんだ”という奇跡のような背景とのコラボレーションもあって”すげえな”と唸りましたよ」

 撮影した写真は全部で6万枚以上に及んだとか。

「一回の撮影で多い時は1000枚以上も撮っていたので、写真を選ぶのも大変でしたよ。月に一回20ポーズ分の編集作業があって、1ポーズに対し50〜60枚の中から選んでいきました。ある程度構成ができていたのに直してもらったところもありますし、最後の最後まで粘って選びました。まだ直したいくらいですよ(笑)」

 俳優として、こういった素顔を見せる仕事への向き合い方は?

「素顔のほうが楽じゃないですか? 特に子どもといる時は子どものほうが気になるので、カメラはあってないようなもの。子どもは自由ですから、明らかに僕よりいい感じで映っているところはすごいなと思いました。嫉妬しますよ(笑)。さすがに顔は見せられないですけど、本の中で子どもと奥さんと一緒にいられて、とてもいいものができたなと思っています。子どもだけの写真とか、家族のカットをもっと増やしたかったです。編集者には、長女の写真を減らしてくれと言われましたけど」

 とても楽しそうに服を着こなしているのが印象的です。

「それが伝わってくれるといいですよね」

 オペラパンプスやスカーフなど、男性には難易度の高いアイテムも。

「そうですか? 僕はまったく気にしないですね。むしろこういう綺麗なものは、男性だからこそ身に着けたくならないですか? もはや男性も女性もないような気がしますし、そこは同じ人間ですから。(指輪を見せて)僕もこんな感じですよ。このバタフライのリング、美しくて超お気に入りなんです。蝶だけにね……。

 この本は、男性ファッションのスタイルブックみたいなイメージがあるかもしれませんが、“一人のオッサンが我を忘れて、アホみたいに遊んでいるだけ“という本なので、老若男女、多くの方に楽しんでいただけたらうれしいです」

 存在を忘れていたシャツ(P.109)も登場しますが、ワンシーズンの買い物量は?

「私服だけじゃなく、衣装もありますからね。何ならほとんど衣装ですが、ハイブランドのものも古着が多いので、枚数は多いほうかもしれないです。でも、こうして仕事になりましたから(笑)。

 うちは男の子が3人いますし、下の女の子も背が高くなりそうだし。そうすれば、いずれは僕の服を着られるようになりますからね。たくさんあっても一向に困りません。逆にピカピカの服をバンバン着てもらってガシガシ洗って、クシャクシャのいい感じになった頃に返してもらって僕が着たいです。早く大きくならないかなー」

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