滝藤賢一、服を語る「ファッションは“悪友”。 自分の人生を楽しくしてくれるもの」

この日のファッションはペイズリーのシャツ、ネクタイ、カーディガン、ピンストライプのパンツはNEEDLES、シューズはBrooks Brothersのオペラパンプス(すべて滝藤さん私物)

情熱がない人から服は買わない

〈『LINDBERG Ⅳ』のジャケみたいな〉〈仲里依紗ちゃん風〉など、服を表現する言葉もユニークですね。

「僕らが中学の頃といえば、やっぱりLINDBERGっす(笑)。SEVEN BY SEVENのデザイナーの川上淳也さんとは、2人とも仕事がない時に宅配便でアルバイトをしていて、十数年ぶりに再会して展示会に行ったんです。あのブルゾンは“なんか懐かしい感じがするなぁ”と思いながら妙に引かれて、あとで“……LINDBERG?”と思って調べたら本当にあんな感じのデザインのアルバムがあったんですよ。

 僕は雑誌『GOETHE』さんで、6年くらい映画のコラムを連載させてもらってます。僕らは言葉を使う職業でもあるわけですから、読んでくださる方々に興味を持っていただきたいし、面白く伝えたい。ドラマや映画の出演コメントも同じですが、そういうことって楽しみたいじゃないですか? そのほうが自分の心が豊かになるし、“滝藤って何でもかんでも楽しんでるよね”と思われたいんですよ(笑)。そして、何より自分自身が楽しんで生きていきたいです」

 滝藤さんがこの秋冬に着たい服は?

「今押さえているものは、割と色にこだわっています。NEEDLESのパープルのモコモコしたダウンと、パープルのネックウォーマーと、パープルのミュール……全身パープルですね(笑)。それとENGINEERED GARMENTS(エンジニアド ガーメンツ)の緑のバスローブみたいなコートと、フェルトの緑のバケットハット。NEEDLESのペイズリー柄のコーデュロイのセットアップも着まくるでしょうね。

 あと、HERMESの古着のブルゾンを買いました。最近、高円寺の『TRUNK』という古着屋のオーナーである村田君と知り合い、ここ10年不動だったNEPENTHES(ネペンテス)愛に割って入ってきました。今はヴィンテージとNEPENTHESの服を融合させて遊ぶのにハマってます」

 出会った人にも影響を受けている?

「僕は情熱がない人から服は買わないです。服が大好きで、僕の職業のこともちゃんと分かってくれて、服や服を売ることに対しての向き合い方が真摯な人から買いたい。だって、ショッピングは忙しい合間を縫っての貴重な時間ですから、楽しいほうがいいじゃないですか?」

〈紫は紺〉〈レオパードはベージュ〉といった名言も飛び出します。

「これはNEPENTHESやENGINEERED GARMENTSのショップスタッフとの会話の中から生まれた名言ですね(笑)。彼らの発想は本当に面白いですよ。ネイビーばかり着ていたらさすがに飽きてくるじゃないですか? でも、NEEDLESといえばパープルですから、パープルのアイテムがたくさんあるんです。最初は僕も抵抗がありましたけど、スタッフさんと話している中で“ネイビーもパープルも一緒ですよ”みたいな会話をしたんです。皆さんご存知の通り、ネイビーはスーパー万能な色ですよね? ネイビーもパープルも一緒ってことは、パープルもスーパー万能ってことなんですよ。レオパードも一緒で、びっくりするくらい何にでも合います。ということで、レオパードもベージュなんですよ(笑)」

 滝藤さんにとってのファッションとは?

「ファッションには正解がないから、好き勝手に選びます。たとえ正解があったとしても、それをあえて崩していくことを楽しめばいい。誰に何を言われる筋合いもないですし、何か言われても気にしません。自分が好きな格好してたって誰にも迷惑かけませんから。こんな自由なことないじゃないですか? 小さい頃からずっとファッションが好きで、好きなスタイルもコロコロ変わってます。永遠に飽きずに遊べるおもちゃ。

 僕にとっては“悪友”みたいなものでしょうか。自分の人生を楽しくしてくれるもののひとつ。ファッションに限らないですけど、本気で遊べて夢中になれるものがあるって素敵じゃないですか。もちろん今はこういうご時世なので、ファッションを楽しむ必要がないと思っている方もいるでしょうけど、何かしら楽しみを見つけて夢中にならないと、心も身体も病んでしまいますよね。そういう意味で、この本はファッションとか植物とか家でできることが多いですし、一歩踏み出すきっかけになったらうれしいです。

 同じ人生なら楽しんだほうがいいですよね。真剣に遊んだほうがいいし、夢中になれるものを見つけたほうがいい。仕事ばかりしているとどうしても煮詰まってしまうし、仕事した分いっぱい遊ばないと」

 ファッション、人、植物など好きなものが多い滝藤さん。好きなことを続けるための秘訣は?

「思い立ったらすぐやることです。そして嫌になったらすぐやめる(笑)。始めたら続けないと、とは思わず、合わなかったら一瞬でやめたほうがいいです。自分が本当に夢中になれることをやったほうがいいと思いますから。

 服は幼い頃から好きですし、植物ももう7〜8年続いていますね。やってみたいこともいろいろありますよ。楽器、陶芸、ずっとママがやりたいって言っていたサーフィンも、落ち着いたらぜひ挑戦したいです」

 最後に、「TOKYO HEADLINE」読者にメッセージをお願いします。

「この本を見て“こいつ、アホみたいに楽しんでるな”というのが伝わったらうれしいです。楽しいことは誰も見つけてくれないですよ。自分で見つけないと。こんな時代だからこそ、無理してでも楽しいことを見つけてほしいです。この本が少しでも皆さんの人生を楽しくする原動力になったらうれしいです」

(TOKYO HEADLINE・後藤花絵)