異端の名将、落合博満はなぜ嫌われるのか?『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』

 仕事納め、年賀状書き、大掃除を終えてホッとひと息。まとまった時間の取れる今こそ、普段は読めないような本を手にゆっくり読書したいもの。「TOKYO HEADLINE」読書部が年末年始に読みたい本をピックアップ。

鈴木忠平著『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』(文藝春秋)

〈二〇〇三年十月三日の朝、東京の空は晴れていた。白い雲間からのぞいた青の下で、私は見知らぬ町の、見知らぬ家の前に立っていた。〉

 スポーツ新聞の駆け出し記者だった著者は、ある日、編集局のデスクから司令を受けた。中日ドラゴンズの新監督候補の一人、落合博満に『落合さんが中日の監督になるという話を聞きました。それを書かせていただきます。今日はその仁義を切りにきました』と伝言しろというのだ。中日の番記者の会合で末席に座っていた著者は、その日から8年にわたり記者として落合とかかわりを持つことになる。

〈なぜ語らないのか。なぜ俯いて歩くのか。なぜいつも独りなのか。そして、なぜ嫌われるのか。〉

「週刊文春」連載時から話題のノンフィクションを書籍化。発売直後より絶賛の声が相次いで480ページ、税込2000円を超える書籍があっという間に11刷12万部を超えた。川崎憲次郎、森野将彦、福留孝介、宇野勝、岡本真也、中田宗男、吉見一起、和田一浩、小林正人、井手峻、トニ・ブランコ、荒木雅博の12人の証言から構成。落合に影響を受けた男の成長物語としても秀逸だ。

『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』
【著者】鈴木忠平
【発行】文藝春秋
【定価】2090円(税込)