酷評の嵐!? 映画『大怪獣のあとしまつ』は、こうやって観ろ!!【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】

 こんにちは、黒田勇樹です。
 先週末から北京オリンピックが始まっているようですね。夏のオリンピックがこの前、終わったばっかりなのにもう冬のオリンピックって、なんともいえないせわしなさを感じています。
 スポーツはスポーツとして楽しもうと思うんですが、それ以外にもいろいろと話題が尽きないのがオリンピックというものなのでしょうか…。
 まあ、ものを作るものとして、いろいろと眺めておこうと思います。
 では今週も始めましょう。

黒田勇樹

 キビヤックという料理をご存じですか?
 アザラシの死体のお腹を搔っ捌いて、腸の中に海鳥を詰め込み3か月間、土中に埋めておいてドロドロになった鳥を、アザラシの肛門から啜るという狂気の発酵食品。
 この映画は、まさに“それ”です。

「大怪獣」という単語の響きが、そもそも「ハンバーグ」ぐらい“ファミリー層”を、引き付ける上に、山田涼介くん、土屋太鳳ちゃんという“ナポリタン”と“オムライス”。
 もはや、お子様ランチの様なラインナップに見せておいて、出てきた料理は「キビヤック」!
「お子様ランチ期待して食べに来たら、肛門からドロドロの鳥。吸わされたらそりゃ酷評もしたくなるよね」と、いうのが正直な感想。

 三木監督の映画をきちんと追っていると「そうくるよね」って所だらけで、「シネフィル」には、たまらない作品なんですが、北極までアザラシ啜りに行く覚悟のあるヤツにしか楽しめない、ちょっとチープで表現として使うのははばかられるけど“マニアック”な仕上がりでした。
 ベースは『シン・ゴジラ』と『アルマゲドン』、あと“ラストのアレ”を始めとする様々な映画へのパロディや皮肉、そこに「誰がわかるんだよ!」という社会風刺とオリジナルギャグを織り交ぜている。

 例えば「やめて~!」って連呼するシーンがあるんですが、ここの台詞は「やめろ」でも「やめてくれ」でも、いいのに、頑なに「やめて~」。

 これ、横山弁護士ですよね…1990年代の“面白おじさん”ですよ!?
 30年前のネタをぶっこんで劇場にいる何人が拾えたでしょうか?

 ニヒルというかシニカルというか、そういう「この監督独特の目線」で観るとたまらない作品なんですが、三木監督自身が結構なペースで大作を撮られているのに、あまり露出をされていない印象で「あの監督か」と、なりづらく“その辺の映画”と比べる人が多かったんじゃないかな?
「河崎実」とか「ヒッチコック」とか、「キューブリック」みたいに「監督名=ジャンル」みたいなアプローチさえあれば、絶対に楽しめる作品だし、今からでも“この目線”で是非皆様に観て頂きたい。

 ラストの「ああ、だからこの役は山田くんなんだ」という説得力と尊さは必見。
 酷評に心折れて、ネガティブな発言をSNSでされている関係者の方を見かけましたが、スタッフ・キャストも胸を張って「傑作です」と宣伝して欲しいところです。

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