下北沢にミニシアター「K2」が誕生した理由「好きだった名画座がなくなって…」

 今年1月、都内で一番新しい映画館として「下北沢駅」南西口に直結するミニシアター「シモキタ-エキマエ-シネマ K2(ケーツー)」が誕生した。新型コロナウイルスの影響で観客が減少し、映画館の経営環境が厳しくなっている今、下北沢に新たなミニシアターをオープンした思いとは。同館を運営するLLP(有限責任事業組合)IncLine(以下、インクライン)のひとつ、株式会社Motion Galleryの大高健志さんに聞いた。

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ミニシアター「シモキタ−エキマエ−シネマ K2」を運営する株式会社Motion Galleryの大高健志さん(撮影:蔦野裕)

街にひらかれた共有地としてのミニシアター求められる

 まず、株式会社Motion Galleryとインクラインはどのような活動を行っているのでしょうか。

「株式会社Motion Galleryは、2011年からクラウドファンディングプラットフォーム『MOTION GALLERY(以下、モーションギャラリー)』を運営しています。映画、音楽、出版などの表現活動や文化活動、街づくりなどの初期に“どうしても必要になるお金をみんなから集めましょう”というサービスです。ビジネスのために行う事業は、投資や融資などビジネスマネーが集められますが、文化的な活動や地域貢献などは、必ずしも利益の最大化が目的ではないじゃないですか。そうすると投融資で資金が投入されづらく、日本では新しいチャレンジや文化的なチャレンジがすごく難しいんです。

 それでも、実際に何かが生まれたら喜ぶ人は多い。たとえば映画『カメラを止めるな!』など、ヒットの法則には乗らなくて資金が集まらなかったけど、クラウドファンディングなら映画ファンが“面白そうだ”と言って出資してくれます。それによって、今までのお金の流れだと誕生しなかったものが、実際に立ち上がってその価値を認められ、価値観ややり方がアップデートされていく。そういったことをずっとやってきたのがモーションギャラリーです。

 インクラインは、もともと濱口竜介監督の映画『ハッピーアワー』の制作にかかわっていた5社のLLPです。5社とも本業は IT 企業 なのですが、 LLP を作ってみんなで映画製作などを行えば、面白い取り組みができるんじゃないかということで立ち上げました。映画『スパイの妻』の制作や『偶然と想像』の配給など、クリエイティブにフォーカスした活動を行っています」

 今回の「シモキタ-エキマエ-シネマ K2」のオープンに至る経緯は?

「下北線路街は、下北沢の『開かずの踏切』だった線路(小田急線「東北沢駅」~「世田谷代田駅」間)を地下化し、より暮らしやすい街づくりをするための再開発です。下北沢といえば、過去に幹線道路を作り高層ビルを建てて商業施設を入れてといった再開発構想もあり、下北沢の文化の破壊につながるということで反対運動も起こったと聞きます。しかし、この下北線路街は、街の人の要望に合わせ、文化が継承されて発展していくような開発になっています。

 モーションギャラリーが映画制作や街づくりにかかわっていたこともあって、小田急電鉄さんから“下北線路街にミニシアターを作りたい”という相談を受けるようになりました。下北線路街の南西口エリアに珈琲や映画、働く場所などが集まったビルを作りたい。その中でミニシアターをやりたいというお話で、“街の人が喜ぶ映画館がビジネスとして成り立つのか”“上映会のデザインはどうしたらいいのか”といった相談にアドバイスしてきたのですが、紆余曲折あって“映画館の運営をやらないか”という話をいただき、“モーションギャラリーも参加するインクラインという枠組みでやるのはどうでしょうか”と提案して現在に至りました。

 街にひらかれた共有地としての映画館が求められ、僕がモーションギャラリーとしてやっていたことと共通する部分もあったので、それが体現できる映画館にしていきたいという思いがありました」

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