鮮やかに描かれる“正義のグラデーション”傑作リーガルエンターテイメント!映画『イチケイのカラス』【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】

 こんにちは、黒田勇樹です。

 現在、絶賛脚本執筆中です。2月21日から上演する三栄町LIVE×黒田勇樹プロデュースvol.13『シン・デレラ』の脚本です。

 たまたま通りかかってこのコラムを読んでいる関係者の皆様、大丈夫です。信じる者は救われます。

 では今週も始めましょう。

黒田勇樹

 竹野内豊さんと黒木華さん主演の映画『イチケイのカラス』。
 漫画からドラマ化した作品で、筆者は原作読者だったので、主要な登場人物の大胆なキャラ設定のコンバートに「ついていけるのか?」と、不安があり手を付けられずにいたのですが、今回映画化されたということで、重い腰を上げて観てきました。

 面白かった!ボロボロ泣いた!

 竹野内さん演じる裁判官、入間みちおは原作では、見た目も全然冴えない変わり者のクセ者なんですが、これをイケメンにしながらしっかり原作のDNAを受け継いだ人物に描かれていたことにまず感動。前半、コミカルすぎる声色にちょっと違和感を覚えるんですが、ここの使い分けが、こういう変わり者系のキャラ作りでよくある「シリアスなシーンになると突然イケボになる」んじゃなくて、事件が真実に近づいていくのにつれ、いつのまにかスッと入ってくる声色に変わっていたり、ここぞという感情表現では、しゃべらずに「ドン」と壁に手をつく音と画で魅せたり“クセ”を見事に使いこなされていました。

 性別すら変わっていた黒木華さんも、女性にしたことで生まれるドラマや、単純に堅物だった原作のキャラのままだけど黒木さんが演じるお陰で「表情」から受け取れる“内面”がとても豊かになっていて“映像作品にするためのキャラ変”は、大成功していました。

 法廷ものというと、ドラマなら『HERO』や『リーガルハイ』の様な“ド”がつくエンターテイメント作品から、映画であれば「それでもボクはやってない」「三度目の殺人」などのゴリゴリの社会派まで傑作ぞろいですが、それだけに作る側からすると、凄く難しい。

「イチケイ~」は、「世の中では“小さな事件”と呼ばれてしまう様な事件」に「大も小もない」と立ち向かうテイストがメインだったと思いますが、今回は対防衛大臣や大企業相手の訴訟など“大きな事件”を扱っていて「まぁ、映画にするならその位のスケール必要よねぇ」

 冒頭もイージス艦と漁船の海難事故から始まって「実に画になる」。

 全体的にケレン味たっぷりの演出で話が進むんですが、ここから街単位、個人単位と“小さな事件”そしてまた大きな事件へと「ただ真実を追い求める中で見えてくる、様々な立場の人間が抱えた“正義のグラデーション”」の描き方が、ストーリーに無理やり感が一切なく最高。

 ラスト付近で、ある人物の遺言のような言葉が明かされるのですが、それがもう「正義のあり方」をクリティカルに表わしていて、胸が熱くなりすぎて涙が止まらないという体験を引き起こされました。

 ファーストカットから、ただただこの感覚に向かうために作られたのではないかという傑作。

 漫画ファンもドラマファンも映画からの人でも必ず楽しめると思うので、皆様是非劇場へ!

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黒田勇樹(くろだ・ゆうき)
1982年、東京都生まれ。幼少時より俳優として舞台やドラマ、映画、CMなどで活躍。
主な出演ドラマ作品に『人間・失格 たとえば僕が死んだら』『セカンド・チャンス』(ともにTBS)、『ひとつ屋根の下2』(フジテレビ)など。山田洋次監督映画『学校III』にて日本アカデミー賞新人男優賞やキネマ旬報新人男優賞などを受賞。2010年5月をもって俳優業を引退し、「ハイパーメディアフリーター」と名乗り、ネットを中心に活動を始めるが2014年に「俳優復帰」を宣言し、小劇場を中心に精力的に活動を再開。
2016年に監督映画「恐怖!セミ男」がゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて上映。
現在は、映画やドラマ監督、舞台の脚本演出など幅広く活動中。

公式サイト:黒田運送(株)
Twitterアカウント:@yuukikuroda23
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