物凄く優しい視線で見つめた、物凄く残酷な世界 紀里谷和明監督最新作『世界の終わりから』【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】

こんにちは、黒田勇樹です。

 この1週間も5月からTOKYO MX2で始まる新番組『J-BOT ケロ太』が絶賛撮影中でした。

 なんて言ってるうちに舞台のほうもあと2カ月後には初日なんだと思うと、時間が経つのは早いな〜と思う今日この頃です。

 この6月の三栄町LIVE×黒田勇樹プロデュースvol.14『この暗闇を超えて温泉に行こう!GOLD』では出演者オーディションを行うんですが、応募は4月16日までですので、お悩みの方、これを見たのも何かの縁ですのでご興味があればぜひ。

 では今週も始めましょう。

黒田勇樹

「平凡より少し下にいる普通の女の子が、世界を救おうとする」ループものでありパラレルワールド的な要素もある、実に不思議な映画でした。

 が、しかし!

 紀里谷監督作品では、圧倒的に一番好き!紀里谷和明監督といえば『CASSHERN』『GOEMON』などの“大作”を撮る監督という印象ですが、ミュージックビデオマニアの筆者からするとMVを撮っている頃の方が好きで、映画を撮られる様になってから、なんというか「4分だから良かったものを、2時間に引き伸ばされちゃった」みたいな感じでいつも見ていました。

『CASSHERN』とか、最後の主題歌で映画の言いたいメッセージを全て伝えていて、「ここまでの2時間はなんだったんだ!」と、すら思いました。

 で、今作。

 今までの作品よりもはるかに低予算で撮られていたようなのですが、まぁ、面白い。
 MVの頃のテクニックを駆使していて「物語を映像で語る」という部分が、「予算があるから何でも出来ちゃう大作」で大味になっていた部分を“ギュッ”としていて、そこそこ複雑な構成なのに、とても分かりやすい。

 夏木マリ、北村一輝、冨永愛(敬称略)という「出てくるだけでファンタジーに説得力を持たせる」名優陣の中に、演技力抜群なのに「どこにでもいそうな女の子」に見える伊東蒼さんをキャスティングする辺り、「伝えたいメッセージを可視化するのに最適な画を作った」という印象。

 日常と非日常の行き来が、言葉じゃなく画で伝わるって凄いことなんですよ。ポワンポワンポワ~ンとか、やらなくても、今いつのどの世界か「見ればわかる」

 思えば、紀里谷監督作品はずっと、その「優しく世界を観ようとする視線」が貫かれていて、今作はそれが一番ピュアに、クッキリと表現されたのかもしれません。

「次のステージに行く」ということで“最後の監督映画”と、宣言されているようですが“次”にも期待しつつ、またMVや映画も撮ってほしいなと思える傑作でした。

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黒田勇樹(くろだ・ゆうき)
1982年、東京都生まれ。幼少時より俳優として舞台やドラマ、映画、CMなどで活躍。
主な出演ドラマ作品に『人間・失格 たとえば僕が死んだら』『セカンド・チャンス』(ともにTBS)、『ひとつ屋根の下2』(フジテレビ)など。山田洋次監督映画『学校III』にて日本アカデミー賞新人男優賞やキネマ旬報新人男優賞などを受賞。2010年5月をもって俳優業を引退し、「ハイパーメディアフリーター」と名乗り、ネットを中心に活動を始めるが2014年に「俳優復帰」を宣言し、小劇場を中心に精力的に活動を再開。
2016年に監督映画「恐怖!セミ男」がゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて上映。
現在は、映画やドラマ監督、舞台の脚本演出など幅広く活動中。

公式サイト:黒田運送(株)
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