東京都医師会、6期目の尾﨑会長「いきなりOTC類似薬、ヘルスリテラシーがない方は無理」
東京都医師会は7月8日、都内で定例記者会見を行い、今後推進していく7つの重点医療政策を発表した。尾崎治夫会長は、冒頭で執行部の改選に触れ「私自身は6期目、10年が終わり11~12年目を任命された。選挙で対立候補はいなかったものの、選挙期間中に考えた7つの重点医療政策を実行していきたい」と挨拶し、それぞれの政策について説明した。

①地域包括ケアネットワークのさらなる推進
「これからますます増えると考えられる高齢者が、地域で安心して暮らせるように24時間見守る体制を作っていく在宅医療推進強化事業を東京都と進めてきた。高齢者が一人で暮らしているといろいろなことが起こるが、今、高齢者の救急車の要請が非常に増えていて、内容は軽症が多いことが分かってきている。そういう方を見守る体制を医師会が作っていくことによって、高齢者の救急医療がひっ迫することを防げる」。そのほか孤独死対策としてスマートウォッチやスマートリングの活用、二次救急病院の経営支援、病床機能としてこれまでの回復期機能を包括期機能に位置付けることを挙げた。
②災害パンデミックへの備え
「以前から災害時に臨時医療施設が必要だと訴えてきたが、東京都にその重要性を認めていただいた。普段は使用していない施設で研修を行い、いざという時にすぐ医療を提供できる体制を確立したい。また、避難所に体育館などが利用される環境を見直し、災害から助かった方が整った環境で避難生活できるような体制を作らなければいけない」。獣医師会と連携したワンヘルス(人獣共通感染症などの分野横断的な課題に対し、関係者が連携して取り組む概念)や、ペットの避難についても言及した。
③セルフケア・セルフメディケーションの推進
「まず健康リテラシー、検査、口腔ケア・衛生管理、禁煙、運動・睡眠、食事に取り組むことが大きな流れ。そのうえで軽度の不調があった場合、自分で手当てするというのがセルフメディケーション。いきなりOTC類似薬の保険適用を外し、十分なヘルスリテラシーがない方が薬局で治療薬を購入して治癒しようとするのは無理。現状では薬局や薬剤師の方も対応できないと思うので、それらを整備して初めてOTC類似薬を使ったらどうかという話になる」。OTC類似薬の利用が将来的な社会補償費の圧縮につながる場合、高額医療費制度の限度額や初診料・再診料・入院基本料引き上げの財源に回す案も示した。
④民間病院支援の継続、東京総合医療ネットワーク、病院・診療所の電子カルテ化の推進
「要望してきた民間病院支援として、入院患者1人当たり1日580円などの費用補助が決定したが、引き続き物価高騰などで病院経営は厳しい状況。今年は実態調査も行うということで、調査の結果やはり相当厳しいことがはっきりしたら、さらなる支援をお願いしたい。また、病院・診療所の電子カルテ化を進めるために各種補助金が用意されているので、次代を担う病院・診療所はぜひ電子カルテ導入を進めていただきたい」。
そのほか⑤しっかりと女性と子どもの安心・安全を守る、⑥ウェルビーイングを重視した高齢者医療のあり方の検討、⑦広報活動のさらなる活性化について理解を求めた。