川村元気、翻訳絵本『きみをわすれない』は「家に置いてあるだけで “ちょっとうれしい気持ち” に」

数々の作品を手がける川村さんは「言葉では説明できないコミュニケーションに興味があります」と語る

 本作以外にも小説『私の馬』など馬をテーマにした作品があります。馬に対する思いは?

「この小説を書く時に乗馬をしていました。乗り手が右に曲がろうと思うよりも、少し先に馬のほうが曲がったりする。とても感動的で不思議な体験です。最近の研究では、人間は頭で考えて行動しているようで、実は体が先に反応して頭が後から認知していることも多いと言われています。人間同士は言葉を使って一生懸命コミュニケーションしているけど、馬が乗り手の体の反応を感じて曲がっていることを体験したら、より深いコミュニケーションを感じてしまったりするのです。

 馬は言葉よりも多くのものを与えてくれる存在というイメージがあって、馬が持っている特別な存在感や、馬に対する人間の憧れはすごく興味深い。チャーリーさんもエリザベス女王が馬に乗っているイラストを描いていて、欧米人にとって馬の存在はさらに特別。猫にもそういうところがあって、人間が落ち込んでいると向こうから寄ってきたりする。そういう時の言葉では説明できないコミュニケーションに興味があります」

 川村さんが初めて手がけた小説『世界から猫が消えたなら』が世界中でヒットしているとか。

「『世界から猫が消えたなら』も猫が人間に真理を教えてくれる小説ですが、昨年その翻訳版が欧米で大ブレークしました。昨年4月にニューヨークタイムズ・ベストセラー4位に入って、ロシアやイタリア、イギリスでも何十万部も売れて、世界累計発行部数が350万部を突破しました。この1年だけで100万部以上売れたことになります。13年前に書いた小説が、なぜ突然ここまでヒットしたのかということは、自分でも不思議で。

 読者が人間同士のコミュニケーションに絶望しているのかな、と。これだけみんながスマホやSNSを使いこなしてコミュニケーションしているのに、最後に行き着くところはネットの誹謗中傷や国同士の戦争なのかという、どうしようもないやるせなさ。人間が人間のことを信じられなくなっているからこそ、動物の存在から教えてもらうことが多いのかもしれません。

 馬は体重が500kgくらいあって、人間の力で無理やり動かそうとしても全然言うことを聞いてくれなくて、強引にやることを諦めた時にやっと動いてくれる。同じ気持ちになるまでじっと待つ、ということの大切さも教えてくれます。『ぼく モグラ キツネ 馬』シリーズや、『世界から猫が消えたなら』が今、世界中で読まれていることと関係しているような気がします。

 人間同士って親から言われた言葉ですら素直に聞けないけど、動物から教わったことや感じたことは素直に響いたりする。『ぼく モグラ キツネ 馬』シリーズの面白さって、動物がお互いにお互いのよいところを教え合うこと。だからこそ読者の心にすっと入ってくると思うんです」

(TOKYO HEADLINE・後藤花絵)