巧みな脚本と物語の裏に隠されたテーマが実は結構ヘビー? MONO『ハテノウタ』

2017.03.12 Vol.686
 MONOの作品を一言で言うと、現実にはあり得ない非日常の設定の中で繰り広げられる、軽妙かつ絶妙な会話劇といったところか。  作・演出の土田英生の描く台詞とそのやり取りは、どのような設定においてもニヤリとさせられ、クセになる。そしてその作品を熟知したメンバーたちが具現化した舞台はMONO“ならでは”としか言いようのない、とても中毒性の高いものになっている。  今回はボーカリストの浦嶋りんこをゲストに呼ぶなど、これまでの会話劇に音楽劇の要素をプラスした新境地ともいえる作品。  ある薬の普及で100歳間近になっても若いままの人々がいた。服用の度合いによって老け方が違うため見た目はバラバラなのだが、みな同じ年というなんとも不可思議な風景。みんなは集まって歌い、そして懐かしい思い出話で盛り上がる。しかし未来のことを語る奴はいない。それはみな今年中に死ななければいけない運命にあるからだった…。 「死を前にした元気な人間」「元気なのに未来を考えられない」??この大いなる矛盾が生み出すシチュエーションはおかしいことはおかしいのだが、むしろほろっとさせられる。  作品中にちょっとした社会問題を潜ませるのが土田のやり方だけに、今回もいろいろ考えさせられそうな予感。

随所に勘三郎さんの“におい”を感じさせる作品。NODA・MAP『足跡姫~時代錯誤冬幽霊~』上演開始

2017.01.18 Vol.682
 NODA・MAPの第21回公演『足跡姫~時代錯誤冬幽霊(ときあやまってふゆのゆうれい)~』が1月18日から池袋の東京芸術劇場 プレイハウスで上演される。初日に先立って17日に公開舞台稽古が行われた。  本作は劇作家・演出家でNODA・MAPの主宰を務める野田秀樹氏が、2012年12月に57歳の若さでこの世を去った十八代目中村勘三郎へのオマージュとして作った作品。  時代設定は江戸時代。当時、幕府からご法度とされていた女カブキの一座をめぐるエピソードから物語はスタート。物語が進むにつれ、いつもの野田作品のようにタイトルに秘められた謎や意味が明らかになっていく。  その女カブキの看板踊り子「三、四代目出雲阿国」を演じるのは宮沢りえ。阿国の弟で一座の一員である「サルワカ」を妻夫木聡が演じる。  勘三郎さんへのオマージュというだけあって、随所で勘三郎の“におい”を感じさせる作品となっている。  宮沢は公演にあたって「野田さんが投げかけてくださる無限に上がり続けるハードルを直向きに、飛び越える毎日です。観に来てくださるお客様とキャスト、スタッフ、そして、どこかで観てくれている勘三郎さんと、その瞬間にしか生まれない濃密な何かを全身で感じたいと思います」とコメントした。  共演に最近のNODA・MAPでは主役級の活躍を見せる古田新太、NODA・MAPには初出演になる佐藤隆太、鈴木杏、実力派の池谷のぶえと芸達者な面々が顔をそろえる。そして野田版歌舞伎で、勘三郎、野田との創作を共にしたことのある中村扇雀が変幻自在な役どころを演じている。  池袋の東京芸術劇場 プレイハウスで3月12日まで上演される。当日券は毎回発売される。

野田秀樹が“全部”をぶつけてきたNODA・MAP新作公演『逆鱗』

2016.01.29 Vol.659
 NODA・MAPの新作公演『逆鱗』の公開舞台稽古が28日、池袋の東京芸術劇場プレイハウスで行われた。  本作では松たか子が7年ぶり、阿部サダヲが13年ぶりにNODA・MAP出演を果たし、前作『MIWA』から瑛太と井上真央が連続出演など豪華なキャストが話題となっている。  物語は、かつて沈没船の窓越しに人間と交わした約束を果たすために人間のふりをして地上に現れた人魚と、海中水族館の「人魚ショー」で人魚のふりをする人間が出会い、大きく動き出す。  チラシではタイトルの「逆鱗」の文字の一部が裏返しにされているなど、観劇前から謎が散りばめられていたのだが、舞台は見る者の予想をはるかに超える展開を見せている。  また野田秀樹特有の言葉遊びやアナグラムが、かつての夢の遊眠社時代を思わせるような勢いで飛び出し、最近の作品で多く見られる社会問題との対峙の仕方もより強めのものとなっており、野田秀樹がまさに “全部”をぶつけてきた作品という印象だ。  東京公演は1月29日から3月13日まで池袋の東京芸術劇場プレイハウス。その後、4月3日まで大阪、北九州でも上演される。前売り券は完売しているが、すべての公演で当日券が発売される。

NODA・MAP『エッグ』が再演 どう感じるかはあなた次第

2015.02.04 Vol.635
 NODA・MAPの第19回公演『エッグ』が3日、池袋の東京芸術劇場プレイハウスで公演スタートした。
 同作は2012年に初演されたもの。その時に観劇したフランス国立シャイヨー劇場の芸術監督が即、招聘を決め、今回の再演につながった。東京では22日まで上演され、その後パリへ。帰国後は大阪、北九州でも上演される。
“エッグ”という架空のスポーツに情熱を注ぐ2人のアスリートを演じる妻夫木聡、仲村トオル、2人の間で揺れ動く女性シンガーソングライターの深津絵里ら初演のメンバーが全員揃った。これだけの大きな作品で、これだけの売れっ子たちが全員そろうというのはそうそうあることではない。
 物語は20世紀最大のカルチャーである「スポーツ」と「音楽」をテーマに進行していくのだが、エッグの謎が解き明かされていくなかで、20世紀を象徴するもうひとつのファクターである「戦争」という要素も加わり、ガラリと様相を変えていく。
 3年が経って、日本の国内事情も取り巻く状況も大きく変わったようで、初演時には聞き流していた台詞、素通りしたシーンが今は大きな問い掛けとなって観客に迫ってくる。
 見終わった帰り道、「そうか、今年は終戦70周年だったか…」などと思う人もいるだろう。劇中、「東京オリンピック」という台詞も飛び交うことから、過去、もしくは2020年のオリンピックへ思いを寄せる人もいるだろう。
 見る者によりさまざまなテーマが見つけられる作品で、時には議論の俎上に上がるかもしれない、“意味”を持った作品。
 前売り券は完売だが、毎回、当日券は発売される。

野田秀樹の新作『MIWA』で宮沢りえが美輪明宏を!?

2013.08.22 Vol.598
 NODA・MAPの第18回公演『MIWA』の記者発表会が22日、都内のホテルで開催され、作・演出の野田秀樹、主人公のMIWAを演じる宮沢りえら9人が顔を揃えた。
 この作品はその名のとおり「美輪明宏」をモチーフに描かれる作品。
 美輪はシャンソン歌手、俳優として活躍。昨年の紅白歌合戦に出演し『ヨイトマケの唄』を歌った姿は記憶に新しい。その美貌と同性愛者ということもあり、今ではジェンダーすら超越した存在。
 野田は今作について、前作の『エッグ』を書いている時に聞いた満州に住んでいる方々の生き様からヒントを得たようで「僕は1955年生まれで戦争は全く想像がつかない世界。頭の中では分かっていたつもりが、実際に聞くと本当にすごいことなんだと思いました。そこで、一人の戦前に生まれて生きてきた人の一生を書いてみたいと思い、そのときに真っ先に誰が舞台でビジュアル的に面白いか考えたときに美輪さんが浮かびました」とその経緯を語った。
 また美輪については「化物と言われる人はいっぱいいると思うんですが、美輪さんは絶対にバレない。ずっと化物でいられる人。今77歳なんですが、この年までずっと化物のままというその凄みを今、作りながら感じています」と話した。
 美輪は会見には姿は見せなかったが映像で「今回一番かわいそうなのは宮沢りえちゃん。(出演者には)ご愁傷様」とコメントを寄せた。
 また野田はMIWA役に宮沢を起用したことについて「男性が演じるのは無理だと思った。女性が演じれば、違うものとして見てもらえるだろうと思った。逃げですね」と、その意図を語った。
 前日に放送されたNHKの特番で美輪と対談した宮沢は「無限に思いとか言葉が広がっていらっしゃっている方。ずっとお話していたいと思った。今は美輪さんという怪物を演じるにあたってプランはゼロ。野田さんを信じて稽古の中で見つけていきたい」と語った。
 共演はNODA・MAP常連の古田新太、池田成志に、初出演の瑛太、井上真央、小出恵介ら豪華な顔ぶれ。
 10月4日から11月24日まで池袋の東京芸術劇場 プレイハウスで上演。その後、大阪、北九州で12月8日まで上演される。

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