又吉、キンコン西野に続き、新たな才能を開化するか
バーレスク・ボーイレスクショーを主催する平成ノブシコブシ・吉村の野望

平成ノブシコブシ・吉村崇が座長となって、バーレスクの男性版であるボーイレスクショーを定期開催していることを知っているだろうか? 昨年から始まった『Buttefly東京~ボーイレスクショー~』と題された吉村presentsの公演は、よしもとに所属する若手芸人らによって構成され、お酒片手に楽しめるオトナのパフォーマンスとしてじわじわとファンを増やしている。なぜボーイレスクを始めようと思ったのか!? そこには普段あまり知られることのない、芸人・吉村崇の意外な本音が隠れていた――。



バーレスク・ボーイレスクとは、ステージで服を脱いでいく過程の“じらし”や“からかい”をショーとして楽しむパフォーマンスのことだ。日本ではあまりなじみがないパフォーマンスかもしれないが、ラスベガス、ロンドン、ニューヨークなどで世界大会やフェスが開催されるなど、2000年代中盤から勃興した比較的新しいジャンルにもかかわらず、国外では人気を博しているほど。そんな世界的パフォーマンスに、なぜ飛び込もうと思ったのか?


「コンプライアンス含めて、バカができなくなってきているじゃないですか? 上の世代は好き放題やって、僕らは「これはダメだ、あれもダメだ」と言われる。このままだと、ツケを支払わされるだけのおとなしく終わってしまう世代になってしまうんじゃないか!? という焦燥感みたいなものがあったんですよね。ただ、何をやったらいいのかは、分からなかった」(吉村、以下同)

そう笑い飛ばすが、言葉には十分な熱がこもる。「何かしなければいけない」。そこで彼は、今から約2年ほど前に『ルミネtheよしもと』の深夜帯を利用した、“クラブのようなイベント”を定期開催するようになる。

「お客さんと一緒に、爆音で音楽をかけてお酒を飲むだけのイベントだったのですが、すごく楽しかったんですよね。何も考えずにバカになれるというか。僕は芸人を志した理由が、漫才もコントも上手くないですから、賞レースで結果を残すとかではなく“売れたい”という気持ちだけでした。たくさんテレビなどに出させていただく中で充実感を得るとともに、気が付くと、テレビ局と自宅を往復するだけの生活になっていて……楽しむという気持ちが希薄になっていくなかで、イベントをすることが単純に“楽しいこと”に映ったんです」

クラブのようなイベントで終わらせるにはもったいない。よりショーアップしたステージパフォーマンスを目指すべきではないのか。古くから彼を知る吉本興業の社員の協力もあり、世界的なショーパフォーマンスであるボーイレスクにチャレンジする道を選んだ。「もともと僕は破天荒キャラと言いますか、服を脱ぐことも嫌じゃなかったですからね」と微笑むが、異なるジャンルに挑戦する理由として、「同期の存在を意識した部分もあった」と続ける。


「同期であるピースの2人、綾部は渡米するし、又吉は芥川賞作家。キングコングの西野もクリエイターとして活躍している。ウーマンラッシュアワーの村本もやりたいことをやっていて、NON STYLEの井上は事故を起こした(笑)。同期じゃないけど、「ピカルの定理」で一緒だった(渡辺)直美もアメリカで人気を集めている。「頼むから、そんなに頑張らないでくれ!」って言っているんですけど、変な奴らが集まった“期”なんでしょうね。みんな、独自のスタイルを確立していく。自分も何かやらないと取り残されしまいそうで」

コンプライアンスが厳しくなる時代、そして同期の存在。新しい挑戦の背景には、誰しもが何かしらの理由を抱いている。


バーレスク・ボーイレスクは、露出度の高い衣装を身に着けるところまでは同じだが、ストリップとは異なりポルノに比重を置かず、「見せる」のではなく「魅せる」ことをコンセプトとする。ボーイレスクをはじめて1年ほどが経つというが、「ショーをするごとに奥の深さに気が付く」と吉村は語る。

「バーレスク・ボーイレスクのパフォーマーたちは、バレエ、ベリーダンス、ジャズダンスなど、根本として技術力が備わっています。そこに、“じらし”や“からかい”といった表現を入れながら、見ているお客さんを楽しませる。完全に演者と観客の勝負の世界ですよ。釘付けにしたもん勝ちですから、お笑いと通じる部分もありますが、予想していた以上にハードだしテクニカル。その上でどう視線を集めていくか……面白いですよ」

『Buttefly東京~ボーイレスクショー~』では、海外などでも活躍する日本を代表するバーレスクパフォーマンス集団「紫ベビードール」のViolet EVA(ヴァイオレット エヴァ)を監修に迎え、振り付けやダンスのレッスンに励んでいる。実際のステージを見ると、とても芸人とは思えないほど、真剣にダンスやパフォーマンスを行っている姿が印象的だ。もちろん、コミカルな演出や顔芸なども忘れてはいない。言葉を一切用いずに、文字通り、裸一貫で観客を笑わせ、興奮させる姿は、アキラ100%にはないケレン味や怪しさが漂う。

「僕が一番練習していないと怒られるくらいで、後輩たちはものすごく頑張っています。半裸で踊ることを目指してNSC(吉本総合芸能学院)に入学したわけじゃないだろうから、後輩たちを誘ったところで不安はありました。でも、舞台上で何かを表現するという共通項に面白味を覚えてくれて、今

では各々がコンセプトを考えてくるほど。バーレスク・ボーイレスク業界の方々も、僕たちを色物扱いせず、とても好意的に受け止めてくれることもうれしかったです。その中で、芸人発のボーイレスクだからこそできるものを見つけていきたい。単に僕らが真面目にボーイレスクを学んでも、その分野の方々には勝てませんから」
パフォーマンス終了後は、会場を練り歩く。観客は疑似チップをパフォーマーに渡すことができる
吉村には、秘めたる野望がある、という。

「今はものすごく芸人の数が多い時代です。僕が1999年にNSCに入学したときの比ではない。当然、食えない奴も多いし、僕のように漫才もコントも上手くない奴も少なくない。その中で、盛り上げる力……分かりやすい例で言えばコンパや飲み会で力を発揮するタイプもいる。ところが、そういうタイプの行き場が、数が増えたことに加え、テレビのニーズの変化などの影響で、相対的に少なくなっている。若いのに漫才やコントが上手い子も増えている。「こいつらまだキャリアも浅いのにすごいな」と思う一方で、どこかレシピ通りのような寂しさも感じるんですよ。レシピ通りに作ることができない、僕のような勘と勢いだけの人材を活かしたいという気持ちがあるんですよね。 ボーイレスクショーが、そういう受け皿にもなったらいいなって」

今年6月にラスベガスで開かれた世界大会を体感してきたという吉村は、「いずれは、我々のボーイレスクユニットから優勝者を輩出したい。ダイノジの大地さんがエアギター世界選手権で優勝したように、スターを誕生させれば、僕らもおこぼれがもらえるはず」と鼻息荒く笑う。

インタビュー中、この話に耳を傾けていた相方・徳井健太に、吉村のボーイレスク活動をどう思うか聞いてみた。

「珍しいですよね。彼は今まで大きな魚を釣ることだけに注力して生きてきたタイプ。美味しいところだけを持っていって、育てるなんて発想はないのに。「後輩たちを育てたい」なんて言葉を発するとは驚きです。でも、これからの時代、そういう発想も必要でしょうから、嘘かホントか分かりませんが、彼がそう言うならそうなんでしょう」

と、これまでの話を全否定するかのように冷や水をぶっかけるが、「ガハハハハ。俺だって真面目なときもあるよ!」と吉村は笑い飛ばす。


バーレスク・ボーイレスクの世界は、極めてきらびやかで個性的だ。レディーガガもブレイク前は、ニューヨークでバーレスクダンサーをしており、今にいたる特徴的なファッションはバーレスクのDNAによるものと言われている。

「世界大会へは、僕も派手な格好で行きましたけど、まるで目立てなかった。ハロウィンのときにマリオの格好をしているような寒々しさを、己に感じたほどです。人種も性差も年齢も関係なく、いろんな人が無茶苦茶な格好をしている。僕はバカになりたくてこのイベントを始めたけど、バカを超越したボーダレスな世界があるんですね。この世界観って本当に魅力的で、いずれは自分たちのイベントにも取り入れたい」

そう言えば、平成ノブシコブシが注目を集めるきっかけとなったバラエティ番組「(株)世界衝撃映像社」では、世界各地の民族などを訪問しては、なんでもありの世界にその身を投じていた。

「僕らの原点はそこにあるのかもしれない(笑)。あのとき体験したことが、どこかで忘れられない。自由で不規則で寛容なミクスチャーな世界。ボーイレスクにも似たような空気感を感じるんですよね。「吉村さんは練習しない」と怒られますけど、そんなアバウトな部分も含めて、舞台上で発揮できれば。僕のダンスが下手くそでも、うちのユニットは僕以外にスター候補がたくさんいますから。近い将来、世界大会を制覇する――その姿を楽しみに待っていてください」

(取材・文 我妻弘崇)



◆INFO◆
Butterfly東京 presents The Show《 8月公演開催 》
【日時】8月26日(日)開場18:15 開演18:30【会場】ヨシモト∞ホール
【料金】整理番号付き自由2000円、アリーナ席3000円(限定数)※別途1ドリンク代(アルコール類購入の方は身分証提示必須)
【URL】https://butterfly-tokyo.com/
◆プロフィール◆よしむら・ たかし 1980年北海道生まれ。2000年、東京NSC5期生同期・徳井健太と平成ノブシコブシを結成。“破天荒”を自称するキャラクターで注目を集め、テレビ、ラジオ、コラム執筆など、多岐にわたって活躍中。2017年から『Buttefly東京~ボーイレスクショー~』の座長を務める。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。
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