そもそも代々木公園は現在どういう状況なのか?【渋谷未来デザイン 金山淳吾理事インタビュー(中)】

 渋谷区の外郭団体である一般社団法人「渋谷未来デザイン」は昨年9月に、代々木公園エリアにスポーツとエンターテインメントの聖地としての3万人規模のスタジアムパーク『SCRAMBLE STADIUM SHIBUYA』を建築しようという構想を打ち出した。以降、公園や施設の利用者や完成後に利用者となりうる関係者などを集め「クロストーク」という形でさまざまな意見を吸い上げている。同団体の金山淳吾理事へのインタビューの2回目ではそもそも現在の代々木公園はどうなっているのか、といった話を聞いた。

※インタビュー上はこちら
さまざまな角度からスタジアム構想を語る金山淳吾氏(撮影・蔦野裕)
「今回の計画を機に代々木公園を再デザインして新たな付加価値をつけていけるのではないか」

 渋谷区民にとって代々木公園とは?

「僕は渋谷区民でもあるので、仕事の人格と渋谷区民の人格の半々でいうなら、代々木公園が区民のものという意識はあんまりないんです。他の区民も渋谷区にいい公園があると思っている感覚は実はあんまりないと思います。多分外から来ている人たちが、なんとなく駅から近くて、繁華街からも近くて使いやすい公園という印象しかないと思うんですよね。僕も子育てをしていますが、代々木公園に子供を連れて行くということはほとんどない。遊具もなければ、子供が走っていってしまうとどこに行っちゃうんだろう、誰がいるかも分からなくて怖いということになってしまう。子供が遊ぶべきゾーンというものも設定されていない。なので今回の計画を機に、そういうような子供を安全に遊ばせられるような場所を再デザインしてみようとか、そういう付加価値をもっともっとつけていけるんじゃないかと思っているんです」

 今の代々木公園は広すぎて、野放しすぎて使いにくいという感覚?

「規制されるものとされないものの差があいまいでグレーゾーンなんです。何十年も前にできた都市公園法というもので一律に規制されているんですけど、都市公園法の中には演劇行為というかパフォーマンス行為というものは基本的に禁止されている。でも世界の基準でいうと、ニューヨークのセントラルパークやハイラインパークはパフォーマーがいて、そこで育ってスターになる人がたくさんいたりする。代々木公園では規制されているんですが、そういう人たちがいないかというと、いるわけですよ。だけど公にテレビのロケをやっていたら怒られる。でもYouTuberが撮影していても怒りようがない。特定の団体が占拠して利用するのはダメなんだけれども、大学の駅伝の練習とかはやっているわけですよね。すごくグレーなんです。グレーだからこそいい調和になっているという側面もあるんですけど、片や、渋谷で生まれ育った子供たちが代々木公園でブレイクダンスを練習してプロになりたいというときにグレーゾーンの中でやらないといけない。管理人に見つかったら怒られるという規制されている中で練習しなければいけないというのはすごく良くないことだと思っていて、今回の改装を機に、公園法をどう読み解くかということも含めて、代々木公園の形だけではなく、使い方のデザインをすっきりさせたいという気持ちはあります。ドッグランもあるので、愛犬家の方は代々木公園に行くと思うんですが、そういうものの子供版、パフォーマー版があればいいのではないかと思います。“親が安心して子供を遊ばせられる場所はここ”というように。パフォーマーもただ広場だけ与えるのではなくて、ダンサーだったら鏡があって練習できるような構造があったほうがいいだろうし。そうであれば管理事務所の壁面が鏡になっていれば、管理事務所の裏側でパフォーマーが練習して、なにかあれば管理人が注意しに来れるし、逆にこういうことをやっていいかということを聞きに行けるというような交流関係が作れるような、そういうことを細かくやっていきたい。大きい公園なだけに、ポテンシャルはすごく高いんじゃないかと思うんです。そんなことを考えています」

 公園の使い方ということについては、こういうきっかけがないとなかなか考える機会はない。

「ハロウィーンなんかが渋谷のいい例なんですが、今、渋谷区民が22万7000人くらい。その全員が“ハロウィーンに渋谷に来ないでほしい”と思っても、来たいという人が100万人くらいいるから声として負けてしまう。そうであれば、楽しみたい人にはここで楽しんでほしいという折り合いをつけていくべきだと思うんです。また、ダンスなどでいうと今は教育のカリキュラムに入っていて、ブレイクダンスがユースオリンピックの種目に入っている。これからオリンピックの種目に採択されて行くと思うんですが、それを規制する法律ってなんだろうと思うんです。教育のプログラムに入っていて、オリンピックで日本代表の日の丸を背負う人が出てくるのに、ブレイクダンスを練習する場所が街中にないという状況は矛盾をはらんでいる。その矛盾をひとつひとつ解いていく一つの場所として公園をうまく使えないかということをテーマにできればいいんじゃないかと思うんです。スケートボードもそうですよね。スケートボードを練習できる家に住んでいる人なんかほとんどいない。でもスケートボードパークが潤沢にあるかといえばそうでもない。渋谷ってもともと宮下公園を中心にスケーターが多かった。でも宮下公園があればいいかというと1個じゃ足りない。オリンピック選手を出そうと思ったらいくつも練習場がなきゃいけない。じゃあそういうものも一緒に作っていけないか、とか。そういうことを考えていきたいと思っています」
昨年11月1日にはスタジアム利用者に近い人々を呼んで話を聞いた。写真は第1部に参加したJリーグサポーターの面々
「公園空間を静かに暮らしたいという人たちに賛成してもらうのが一番難しい」

 一番の問題は静かに暮らしたいという人にどう納得してもらえるか、なのかと。

「静かさを求める人の中には、近隣に住んでいて静かに暮らしたいという人と公園で静かに過ごしたいという人の2種類があると思うんです。近隣に住む人たちの静かさの担保というのが課題としては一番大きい。例えば、スタジアムを作るとした時に全天候型かどうかということでも大きく変わってくる。今の日本のサッカーの規定は天然芝、もしくはハイブリッド芝を敷きましょうとなっている。そうなるとなかなか全天候型というのは厳しいんですけど、全天候型にすることで音はかなり遮ることができる。音の問題はそれでかなり解決できる可能性があるんじゃないかと思うんです。そうなるとスポーツ、特にサッカーで使うときにどういう不都合があるのかということをひとつひとつ解いていかないといけなくなる。もう1個の騒音は、そこから流れるもの、例えば音楽のイベントをやった時の音は、“それくらいの騒音は仕方ない。今でもイベントはやっていますよね”ということでクリアできたとしても、人が毎日3万人集まることについてはどうなんだ、ということになっていくと思うんです。今でも、B地区では例えば渋谷区民フェスティバルというものを11月に2日間やっているんですが、30万人くらい人が来る。それに毎週あそこには4万~5万人の人がフードフェスティバルなんかで来ている。そういう場所なので。まあ終日でばらけてはいるんですが、この延長線上で土日になにかうるさくてたまらない、という声があるかといえば、そこは意外とないんです。あとはみんな365日使うと思っていますが、音楽のイベントだと仕込みなどで3日間くらい取るので結局週末型になるというか、せいぜい使って木金土日くらいなので、そこら辺をちゃんと説明して現実的な稼働日数だとか想定される人の流れとかを整理していくと意外と理解は得られるんじゃないかと思っています。もちろんそれでも反対される方はいると思いますが」

 100%賛成はあり得ない。

「難しいですね。公園空間を静かに暮らしたいという人たちが一番難しくて。なぜなら、やはり都民全体のものなので、そういう人たちに対して、どういう静けさというものをエリア的に担保できるかというのが非常に課題なのではないかと思います。なので、現在発表している構想では“B地区で”としているんですが、例えばA地区にB地区にあるバスケットコートや陸上のトラックの機能を移設するというシナリオも合わせて考えないといけないと思っています。その時にA地区の、芝生があって森があってという公園の中で、静かに過ごしたいという人たちの場所をどう作ってあげられるかというのが課題になってくると思います。ただ、東京都の公園は維持管理費の問題などがあって、いい付加価値サービスができていないと思うんです。こういう大きな興行を担えるような機能があれば、そこで稼げたお金でほかの部分の整備もやれるとすれば、そういう静かに過ごしたい人たちのための居場所とか景色を作ってあげられることはできるんじゃないかと思っています。例えば代々木公園の池がありますよね。噴水機能もあるんですが、うまく使えていないんです。そんなにうまく循環できていないし、あそこに子供が入っていくと汚いんじゃないかって心配になる。そういうところを再整備してあげられるとか、ということができる可能性がありますよね」  (本紙・本吉英人)