SIRO−A 言葉を使わず音楽と技術を融合したショーでジャパンカルチャーを発信

 言葉を使わず、テクノミュージックとプロジェクションマッピング、そしてダンスやパントマイムなどを融合させたパフォ−マンスを行う、エンターテインメント集団の白Aが注目を集めている。3月に上演し好評を博したショー「That’s ZENtertainment!」のロングラン公演が先日、前回と同じ浅草でスタート。外国人観光客だけでなく日本の観客も笑顔にしている。

左から荒井寿也(パフォーマー)と本間健太郎(DVJ・パフォーマー)撮影・蔦野裕

 今年3月、浅草で、少し風変わりなショー「That’s ZENtertainment!(ザッツ・ゼンターテインメント)」が上演された。言葉を発しないノンバーバルのエンターテインメントで、出演者は忍者のような、僧侶のような出で立ちの顔を白く塗った男たち。仏具が鳴り、下駄が鳴り、カラフルな傘が回転し、漢字でバトルを繰り広げる。わずか30分間のショーだったが、盛りだくさんの内容を詰め込んだステージで、大人も子供も国籍も関係なしに、観客を根こそぎ笑顔にしてしまった。

 ショーを行ったのはエンターテイメント集団の白Aだ。2002年に仙台で結成されたグループで、国境を越えて活動。2014年にはアメリカの国民的人気のオーディション番組「アメリカズ・ゴット・タレント」に出場して人気者に。音楽とプロジェクションマッピングのようなテクノロジーを融合させた彼らのパフォーマンスを見たいと今も世界中から声がかかる。

荒井寿也(以下、荒井)「ずっと世界でパフォーマンスをしたいと思っていたので、EBIKEN(蛯名健一)さんも出た『アメリカズ・ゴット・タレント』は絶対出たいと思っていました。1回戦で敗退していたら全然ダメだと思いますけど、残ることができれば、世界への、本当の意味での近道ですから。優勝できなかったのは悔しいですけど、あのステージに立てたことで、学んだことも多いです」

本間健太郎(以下、本間)「ハートの大切さ、ですよね。決勝に残ったのはみんなハートがちゃんと伝わる演出をしてました。僕たちの演出はテクニックを見せることにこだわりすぎている部分もあったのかなと思うんです。それが分かってからは、演目も変わってきたようにも思います」

「That’s ZENtertainment!」は彼らの新しい挑戦だ。訪日観光客の数が増えるなかで、さまざまな文化背景を持つ観光客が楽しめるエンターテインメントも増加傾向にある。「白Aがやるとしたらどうなるだろう」。そう思ったことがきっかけだという。

本間「ニューヨークにザ・ライドっていうのがあるんです。ニューヨークの街が舞台になっていて、お客さんはバスで街中を移動しながら楽しむショーです。1日に何回か公演があって、ショーの時間は長くないので参加する人も隙間時間をうまく使って楽しんでいると聞いて、そういうのはあまり日本で聞いたことはないし、僕たちがやってみる価値があるんじゃないかと」

 ショーの長さは30分に設定。訪日観光客はもちろん、足を運んでくれたお客さんに楽しんでもらうために、メンバーでブレインストーミングした。

本間「演目を作っていくうえで最初にするのがブレインストーミングなんです。15分1ラウンドで2時間。どんなアイデアも否定しないというルールで、アイデアが出尽くすまでするんです。テーマがあるときもあれば、まったくないときもあります。絶対実現できないアイデア出しなんていうお題もありますね」

荒井「そういうことをしないと枠をとっぱらうことができないからです。そのあとは、出たアイデアをこうしたらもっといいんじゃないかとか、それぞれの得意分野のことを付け足して、ブラッシュアップしていきます。プレゼンテーションしてみて、デモを作って、とりあえずやってみます。この『That’s ZENentertainment!』もそういった作業の繰り返しでした」

 日本文化に焦点をあてたエンターテインメントは、伝統にとらわれすぎたり、海外から求められてる日本のイメージを裏切らないようにしたいという思いで、自ら型にはまって行ってしまうことがよくある。白Aがそこから抜け出せているのはブレストとデモのなせる業かもしれない。

荒井「俗にいう和風演出はこれまでの白Aの作品にはないから、自分たちが和や日本を表現するなら中身、日本人のアイデンティティみたいなものを入れたいよねって。醤油をかけたら和風みたいなのは違うな、って思うんです。以前、スコットランドのエジンバラで小さな筒みたいなのに入るパフォーマンスをしたら、言われたんです、日本人がやってるってすぐ分かったって。ルックスとかじゃなくて、日本人らしいパフォーマンスだって感じたんだそうです。そういうところを取り入れたい」

 ロングラン公演のプレビュー公演も終了。ショーもさらにブラッシュアップされて、いよいよ本公演の幕が上がる。

本間「ロングラン公演では、内容もブラッシュアップされていますし、さらに楽しんでもらえると思います。3月に見ていただいた方は変化も楽しんでいただけると思います。ぜひ足を運んでいただけたら」

荒井「お客さんも演目になるようなライブ感というか、そこから派生していく楽しさもあります」

 今後の活動のなかで、「That’s ZENtertainment!」は、ひとつの軸になっていく。

本間「世界各国を回ってパフォーマンスをしていると、世界が分断されていってる時代の流れを体感することが多いです。そのなかで、みんなをつなげる仕事ができてるのかなとも思うんです」

荒井「エンターテインメントの力だよね。15年経って、そういうのも感じられるようになってきたよ、始めた当初はおもしろいことがしたかっただけなのに(笑)。これからも面白いと思うことはやっていきたい」

「やらない理由ばかり考えていくんじゃ何も分からない」、と荒井。キャリアを積んでも、メンバーが増えても、活動の場が広がっても、その精神は結成当初から変わることはないようだ。その思いがある限り、白Aはさらに彼らにしかできないエンターテインメントを作り出していく。(本紙・酒井紫野)

SIRO-A Presents「That’s ZENtertainment!」本公演
【日時】5月29日(月)〜6月27日(火)の毎週月、火曜と6月18日(日)。月曜は13時、15時、17時、19時、21時。6月19日(月)は11時公演もあり。火曜は、11時、13時、15時、17時、19時。6月18日(日)は、13時、15時、17時、19時、21時。 ※入場は各公演の30分前【会場】浅草六区ゆめまち劇場【料金】全席自由一般1500円、グループブッキング4名5,000円 ※ドリンク代別(500円〜)、3歳以上有料