「Krush.77」日中対抗戦は中国が制する 卜部弘嵩は再起戦でまさかの敗北

【写真上】卜部(左)はジェンの重い蹴りに手こずる【写真下】判定を聞き呆然(撮影・小黒冴夏)

「Krush.77」(7月16日、東京・後楽園ホール)で「日本vs中国・6対6全面対抗戦」が行われ、中国が4勝2敗で日本を圧倒した。

 メーンに組まれた最終第6試合はジェン・ジュンフェンvs卜部弘嵩。卜部は2月のK-1で大雅に敗れ、K-1スーパー・フェザー級王座を失って以来の再起戦だ。

 ここまで2勝3敗とリードを許した日本。卜部にとっては復活を印象付ける大きなチャンスだった。1R開始早々から軽快な動きを見せる卜部だったが、ジェンのパワフルな前蹴りを食らい大きく吹っ飛ぶ。前日計量後、68kgまで戻したというジェンは見た目にも体が一回り大きく、もつれたときにも卜部を簡単になぎ倒すなど終始パワーで圧倒。長い手足で懐も深い。ジェンのローが効果的で卜部はなかなか射程内に入れない。2R序盤にはジェンのローで卜部の足が流れる場面も。中盤、ジェンの打ち下ろすような右フックで卜部は腰を落とすが、なんとか踏みとどまりダウンは回避。しかし大きなダメージを負う。後がない3R、卜部は右ローで追い込み、距離を詰め倒しにいくがジェンも応戦。残り1分半で時計をちらりと見た卜部だったが、なかなか攻めきれない。残り30秒、ラッシュをかけ強烈な右ストレートを何度も打ち込むが時間切れ。

 ジャッジは1人目が30-29でジェン。2人目が29-29.3人目が29-28とコールされたところで延長ラウンドを確信した卜部だったが、まさかの「ジェン!」のコールに呆然。信じられないといった表情を見せ立ち尽くした。

【写真上】ワン(右)が里見を圧倒【写真下】試合後、武尊(左)とワンが互いにエールを送る(撮影・小黒冴夏)

 第1試合はワン・ジュングァンvs里見柚己。里見はK-1グループの新ブランド「KHAOS」で名を上げた、今売り出し中の19歳。一方のワンは“中国の武尊”の異名を持つ攻撃的なファイターだ。

 ワンは1Rから強烈なプレッシャーをかけ前へ出るや手数でも圧倒。里見は左のロー、ミドルで反撃するが下がりながらの攻撃で、しかも単発なこともあり、印象は良くない。2Rになってもワンの突進は止まらず、コーナーに詰めてはパンチの連打で里見を追い込む。チャンスとみるやパンチをまとめポイントを奪うワンに反撃の糸口がつかめない里見。後がない里見は3R開始早々に左ハイの5連発で主導権を取りに行くが、中盤以降、盛り返したワンの突進を止められない。セコンドから「打ち合っていい!」という指示が飛ぶが里見はこたえられず、2-0の判定でワンが勝利を収めた。

 試合後、ワンは「目標は武尊と戦うこと。もし希望がかなうのなら次は武尊と戦いたい」とアピール。リングサイドで試合を観戦していた武尊はエプロンに上がると「久しぶりにこんなにアグレッシブで気持ちの強い選手を見たので、殴り合いをしたくなりました。バチバチの殴り合いをやりましょう」と返答。実現すれば面白いカードとなりそうだ。

【写真上】佐野(左)の強烈なローがユンを襲う【写真下】瑠輝也(左)の飛びヒザでドンはバッタリ(撮影・小黒冴夏)

 第2試合はユン・チーvs佐野天馬。ユンは昨年からK-1、Krushに参戦し、小宮山工介、神戸翔太という実力者に勝利。敗れはしたが武尊、小澤海斗という王者とも対戦。昨年からの中国旋風の先駆者的な存在だ。佐野は19歳にしてKrushの-60kg王座決定トーナメントに出場するなど次代を担う若手のホープ。ユンを破ってもうひとつ上のステージに進出したいところ。

 試合はユンの重いパンチに佐野が強烈な右ローで対抗。1R終盤、早くもユンがローを嫌がる素振りを見せる。しかしユンの重いパンチは止まらない。ローを食らっても、すぐにパンチの連打をまとめるなどうまい試合運びでジャッジの難しいラウンドが続く。ともに取りにいった3R。佐野は右ローでユンを止めると、パンチに飛びヒザと多彩な攻撃。ユンも応え激しい打ち合いを見せたが、無念のゴング。ジャッジ3者とも30-29で佐野を支持。佐野にとっては大きな1勝となった。

 第3試合はドン・ザーチーvs瑠輝也。瑠輝也はK-1の2月大会で、戦慄の二段げりで水町浩をKOし注目を浴びた。相手のドンは中国でウェイ・ルイとライト級のトップを争う強豪。

 瑠輝也は速いミドルで前に出ると強烈な右ロー。左ミドル、前蹴りと攻め続ける。ドンのパンチは速いが大振り。瑠輝也はそのパンチを交わすとカウンターの左ジャブからロープに詰め、右ストレート。ドンの右フックにカウンターで右の飛びヒザ一閃。アゴにまともに食らったドンはばったりと倒れ、即座にレフェリーがストップ。1R1分53秒、瑠輝也が失神KO勝ちを収めた。

渡部(左)とティエはバチバチの殴り合い(撮影・小黒冴夏)

 第4試合はティエ・インホァvs渡部太基。

 日中を代表する激闘派同士とあって、真っ向から打ち合い、そしてともに下がらない。渡部は1R中盤、ティエのキックに左フックを合わせぐらつかせるが、ティエも反撃。一進一退の攻防が続く。しかしラウンドが進むにつれ、ティエのパンチが的確に渡部をとらえ始める。一方の渡部は手数は減らさないものの、やや確実性に欠け決定打を放てない。最後まで立ち続け打ち合う2人に最終ラウンドは会場から大きな歓声が送られたが、試合は判定に。30-27、29-29、30-29とジャッジもばらつく難しい判定となったが、2-0でティエが勝利を収めた。

チューのバックスピンが鮮やかに決まる(撮影・小黒冴夏)

 第5試合はチュー・ジェンリャンvs小宮由紀博。チューは中国で“中量級最強の男”といわれる存在。小宮は4月にKrush-65kg王座決定トーナメントの決勝で敗れており、ここで勝利を収め、再浮上のきっかけとしたいところだった。

 1R序盤からローを中心にベテランらしい試合運びを見せる小宮。チューが中盤から頻繁に繰り出していた右のバックスピンキックも冷静にさばいていたのだが、残り10秒、とうとうバックスピンをもろに食らってしまいダウン。立ち上がってすぐにゴングとなったものの、ダメージは歴然。2R以降もどんなポジションからも飛んでくるチューのバックスピンに手こずる小宮。チューはパンチでも小宮にダメージを与え、小宮はローでバランスを崩しスリップダウンするなど、ダメージはたまるばかり。3Rになるとともにホールディングで注意を受ける場面も多くなり、結局試合は判定に。3者とも30-26でチューが完勝した。