【インタビュー】チャン・チェン 日本の片田舎に流れ着いた殺し屋を好演!

 人気と実力を兼ね備える台湾の国際派俳優チャン・チェンが『弾丸ランナー』『天の茶助』のSABU監督とタッグを組んだ映画『MR.LONG/ミスター・ロン』が公開! チャン・チェンが本作で演じるのは無口で凄腕の殺し屋役。ところが撮影現場では、テクノポップユニットPerfumeのTシャツを着たり、料理を作ったり温泉に入ったり…!? チャン・チェンの新たな魅力を引き出した日本ロケの舞台裏とは?

撮影・小黒冴夏 

「一緒に仕事したい日本の俳優は、たくさんいます。お会いしたことがある方だと、妻夫木聡さんやオダギリジョーさんとか。いつか何かの作品で共演してみたいですね」と日本の映画人とも交流のあるチャン・チェン。今回は以前から作品のファンだったというSABU監督とタッグを組んだ。

「もともと僕はSABU監督の作品はほぼ全部見ていて、以前から一緒に仕事をさせていただきたいと思っていたんです。SABU監督の作品は走るシーンが特徴なので、本作でも走るシーンがあるかなと思っていたんですが、走るより屋台を引いているほうが多かったですね(笑)」

 念願の初タッグで演じた役とは、ナイフを使う凄腕の殺し屋ロン。六本木での暗殺の仕事をしくじり、北関東のとある田舎町に流れ着いたロンは、そこで台湾人の母親を持つ少年ジュンや世話好きな住人たちと出会い、気づけば牛肉麺(ニュウロウミェン)の屋台で働くことに…。

「本作の脚本を読んだときはまずコメディーとしての面白さを感じました。暗殺者が言葉も通じない異国で、ごく普通の人たちと暮らすことになるという物語が面白いと思いました。細かいところにもコメディー要素がありますけどね、PerfumeのTシャツとか(笑)」

あのテクノポップユニットPerfumeのロゴ入りTシャツを着て料理を作る彼の姿は、ファン必見。

「Tシャツについては最初から脚本に書かれていたので着ることは分かっていたしPerfumeのことも知っていたんですが、どんな服かまでは分からなくて。もしピンクとかキラキラしてたらどうしよう、と思っていました(笑)

撮影・小黒冴夏 

 劇中で披露する料理姿がかなり板についている様子。

「基本的に調理師の方が作ってくださっているんですが、僕も作りましたよ。自分でも食べて、おいしかったです(笑)。けっこう普段から料理するんです。今は、子供に朝ご飯を作ってあげていますし。それ以外だと、これからの季節は火鍋がいいですね。あれが一番簡単(笑)」

 日本のスタッフや共演者に囲まれ日本で撮影した本作は、これまでとは違う苦労もあったのでは?

「スケジュールが少しハードだったことを除けば、大変なことは特にありませんでした。日本のスタッフは皆プロフェッショナルですしね。役については自分で、ある程度の役作りをし、現場に入って監督とすり合わせながら最終的に仕上げていきました。でもロンについての僕と監督の考えはほぼ同じだったので、大変な作業ではありませんでした。それに監督は基本的に役者に自由に演じさせ、それを生かしていくスタイルの方ということもあり、今回は比較的自由に役を演じさせてもらいました。ただコメディー演出については監督にゆだねる部分が大きかったです。僕はそこまでコメディーに明るいわけではないので(笑)。監督に相談したところ、そこは任せてと言っていただいて。笑いの場面はすごくテンポが重要だと思うんですが、そのテンポだったり笑いの芝居の強弱だったり、丁寧に指示をいただいて、自然に作っていくことができました」

 ハードボイルド調で幕を開けた物語は、気づけばユーモラスでシュールな状況に。

「もともとコメディーは好きなんですが、本作のようにシュールなユーモアが好きなんです。ブラックジョークやヴィヴィッドな笑いのある作品が好きですね。例えばロイ・アンダーソンの作品とか。奇妙な構図のなかにごく普通の人々が存在している、あの独特な構図が好きです。ああいうギャップにユーモアを感じます」

 プロの殺し屋と幼い少年の間に生まれる不思議な絆を軸に、笑いと悲しみ、絶望と希望というギャップが本作の魅力になっている。
「僕が一番気に入っているシーンは、ロンとジュンと母親が一緒に野球を楽しむシーン。撮影的には特別なことは無かったんですが、和やかに楽しむ3人が本当の家族のようで、希望にあふれていて、僕の中でも好きなシーンなんです」

 ロンと傷ついた母子は、いつしか温かい絆で結ばれ、ささやかな希望の光が彼らを照らしていく…。日光に温泉旅行にでかけ、つかの間の幸せをかみしめる3人の姿が印象的。

「実は日光には以前にも行ったことがあるんです。日光江戸村にプライベートで観光に行ったんです(笑)。今回は撮影がタイトだったので、あまりゆっくりはできなかったのが残念です」

 もし台湾でSABU監督と休日を過ごすとしたらどんなプランを?

「僕は山登りが好きなので、監督と一緒に山歩きを楽しみたいですね(笑)。台湾の山は地形の関係で自然環境がけっこうユニークなんです。1〜2時間で登って降りてこられるし、山と海が近いので1日に両方楽しめたりもするし。日本の皆さんも台北に観光にいらっしゃる方が多いと思いますが、良かったら自然も楽しんでもらいたいです」

 そして食べてもらいたいのは…。

「牛肉麺(笑)! お店によって味も違うので、いろいろ食べ比べしてみるのも楽しいですよ。一番大切なのは、旅の相手ですけどね(笑)」

 本作を見た後に台湾で牛肉麺を食べたらチャン・チェンと旅している気分になれるかも!?      
(本紙・秋吉布由子)

©2017 LiVE MAX FILM / HIGH BROW CINEMA
『MR.LONG/ミスター・ロン』

監督:SABU 出演:チャン・チェン、青柳翔、イレブン・ヤオ他/2時間9分/HIGH BROW CINEMA配給/12月16日より新宿武蔵野館他にて公開 https://mr-long.jp/https://mr-long.jp/