「令和」へと拓く遺言「平成の死 追悼は生きる糧」


 平成に亡くなった200人超を取り上げた『平成の死』には、その時代を彩った多くの人生のリアルが描かれている。第一章「昭和の残照」では、「平成は女王と神様の死で始まった」とし、昭和の終わりと平成という時代の幕開けを予感させる美空ひばりと手塚治虫(ともに平成元年没)の死を取り上げている。第二章「ガンとの戦死」では逸見政孝や松田優作、中村勘三郎、小林麻央ら現在も死因のトップであるガンに倒れた著名人を。そして第三章では「自らを殺すという生き方」とし、自死を選んだ人の死を振り返る。その他、突然死や事件・事故など、我々は平成の間、さまざまな人たちの死に遭遇してきたのだと実感させられる。この世において平等なことは“人は必ず死ぬ”という事だ。生まれた時から人は死に向かってカウントダウンをスタートしている。“死”を思うことは“生”を考える事。同書に収録されている死にゆく者が残した言葉から浮き彫りになる“生きる”という事は、非常に尊く、とても重い。

【著者】宝泉薫【発行】KKベストセラーズ【定価】本体1600円(税別)