新型コロナは私たちと「住まい」への価値観をどう変えたのか『SUUMO』編集長に聞く

 新型コロナウイルスの影響によって、暮らし方の様相を大きく変えた東京の街。外出自粛制限やテレワークの普及などにより、平日も休日も、生活のルーティンが全く変わってしまったという人も多いだろう。

 新型コロナウイルスは私たちの東京での暮らしを、どのように変えたのか。そしてアフターコロナが来る時、東京はどうなっているのか。新型コロナの影響を踏まえた、東京居住者の現状や今後の予測について、住宅情報サイト「SUUMO」の池本洋一編集長に聞いた。

世帯での住替えはアフターコロナでの資産価値を考慮するべき



 東京で最も大きかった暮らしの変化といえば「テレワーク」であることは、東京居住者であればみなが実感しているところだろう。池本編集長によれば、想定以上のスピードで浸透したテレワークが、人々の住まい探しにも大きく影響を与えているという。

「皆さん実感されていることとは思いますが、やはり平日・休日問わず圧倒的に『家の近所で過ごす時間が増えた』という人が多いですよね。東京では9月現在でも、全体の50%近くの人が部分的、または全面的にテレワークを続行しています。

まず、最も素早く引っ越しに向けて動いたのは小さなお子様をもつ家庭で、もともと賃貸の住み替えを検討していた人たちです。子どもが少し大きくなったら家を買おう、と思っていた人たちですね。広さ不足や小さな子どもによる騒音問題で、家の中で仕事をすることが困難だった人たちは、6月から本格的な住み替えをスタートしたようです。

そういう人たちは、首都圏ではずっと価格帯が下がり続けていた郊外の一軒家に住み替えていっています。結局賃貸でもっと広い家を、と思うと家賃が上がってしまいますから。頭金0で購入できる一軒家を、少し都心から離れても購入してしまう、という人が増えました。

しかし東京郊外の一軒家が人気、というのは瞬間風速的なものかもしれません。住まい関係の業界全体の大きなトレンドとしては、人気があるのはずっと都心。アフターコロナでも資産性が高く維持されるのは都心部だと考えられます」

小さな子どもに「家の中で動き回るな」とは言えない。するとどうしても、子ども部屋と両親の仕事部屋が広めに確保できる家を買わざるを得なくなる。そうなると、急いで買うなら都心から離れて、土地の余る郊外で安めの物件を見るしか選択肢がなくなるのだろう。

「単純に平米数が広い家、というだけでなく、間取り数の多い家を選ぶ人も増えています。これはコロナに関係なく、数年前からじわじわと浸透してきていた流れです。昔はリビング広めで部屋数は少なめの間取りが人気だったのですが、ここ数年はコンパクトでも部屋数の多い家が人気です。

コロナによるテレワークが普及する前から、在宅で仕事ができる人というのは徐々に増えてきていましたから、リビング脇に小さなワークスペースがあるような家も増えてきてはいたんです。それがコロナで一気に加速して、同じ平米数でも広めの1LDKより、コンパクトな3DKの方が注目されています」

池本編集長によれば、郊外に住み替えるというブームは一過性のものであるが、コンパクトな間取りの家をという志向は不可逆なトレンドであるという。もし買い替え前提で家を購入するなら、郊外の一軒家よりもなるべく都心に近い場所で、狭くても間取り数が確保できる家を選んだ方が、資産価値は下落しづらいということだ。
1 2 3>>>