日本の美を描くため…モネ自ら造園した『睡蓮』の庭の四季を見つめた写真展

© Takuya Tsukahara

 その一例が、立春の池に浮かぶいくつもの水の輪の写真。


「これを撮影したのはクローズ期間中の2月。風もなく水面が鏡のように木々を映していて、それを撮影していると、水面にときおり波紋が浮かぶのです。最初は雨かなと思ったのですが、雨は降っていないし、よく見ているとどうも水中から湧いてくる。実際どういう現象なのか定かではありませんが、僕にはまるで、冬の池で眠っていた睡蓮が呼吸し始め、春の訪れを知らせているように思えました」


 約2年かけて日本から何度も訪れ、庭の四季を追った塚原さん。撮影した風景は、一部だけに色を付けたモノクローム作品で表現した。また、作品は敢えて写真用紙ではなく伊予和紙にプリント。和紙による不思議な温かみと立体感が、作品のコンセプトとイメージを見事に表現している。


「僕は、植物や庭そのものを記録したかったのではなく、モネが運んだジャポニズムをとらえたかったのです。日々の献立から祭事まで、日本の文化には四季という自然の営みが根付いています。そんな、自然とともにある日本の美にモネは引かれたのではないかと、自然あふれる庭を撮影しながら、僕は思いました」


 当時は家庭菜園もあったという。モネも四季折々、旬の野菜を楽しんでいたのかもしれない。


「あの時代、モネほど日本人のような感覚で草花を愛で、自然を愛した人はいないんじゃないかと思うほど、日本の美と相通じるものをこの庭に感じました。また、モネが愛した浮世絵は庶民が謳歌した江戸文化の一つですが、ヨーロッパにおいて王侯貴族のものだった庭園文化とはまったく異なるこの庭は、民主主義の広まりとともに、自由で新しい文化を作り上げていこうという、あの時代の芸術家たちの思いを象徴しているようにも思えましたね」


『塚原琢哉写真展 モネが愛した水の庭園』は3月18日まで六本木・ストライプハウスギャラリーにて開催中。