海外ブランドも注目。時代に合わせ進化する伝統工芸「こぎん刺し」の世界

同展に展示された『東海道五十三次』。一枚あたり数十〜数百の色糸を使うという。

「広重ブルー」に惹かれ、30年

 そんな髙木さんの集大成ともいえるのが、こぎん刺しによって描かれた『東海道五十三次』だ。浮世絵師・歌川広重の傑作を、こぎん刺しで一枚一枚再現。「広重ブルー」と呼ばれる鮮やかな藍色に惹かれて作品づくりに着手してから、55枚の完成までに30年あまりの歳月をかけた。昨年、27人の生徒たちの協力でついに完成し、全55作品が初公開。細かな人物描写や、海と山々の美しいグラデーションなどの高い技術は、海外の有名ブランドの目に留まり、作品オファーを受けたほどだった。同展では、30年前に初めて着手した作品から、昨年完成したばかりの新作まで、さまざまな表情の『東海道五十三次』を鑑賞することができる。

「現代の生活に合う、新しい作品にも挑戦していきたい」と髙木さん。作品づくりは数ヶ月から数年単位に及ぶ根気のいる作業だが、それでも夢中になる魅力は「ゼロから始まるところ。チクチクと(刺し)目を拾っていくごとに、一段一段絵柄が出てくるのが面白いんです」と、目を輝かせる。伝統を大切にしながら、新しい現代の風を吹き込む。こぎん刺しの魅力は限りない。

「第46回悠美会国際美術展」は5月10日まで、東京都美術館で開催中。