【新世代応援】早稲田大学教授が語る日本の「学生起業」 アカデミアと行政の連携にも期待
「中には強引に学生に起業を決意させるようなことを言う人も…」求められる健全な起業支援コミュニティー
――大学と行政の連携には、健全な起業支援という点も期待できますね。
「そうですね。学術機関は、学外の支援施設や団体を安易に学生に紹介することはできません。学外の、いわゆる“支援者”や起業家たちの中には“本気で起業するなら大学を辞めたほうがいい”、“今すぐ起業を決断したほうがいい”というような、強引に学生に起業を決意させるようなことを言う人も、ときにはいるのです。本人が自分で考えてそういう結論を出すならまだしも“今、決断ができないならこの先も起業しても無駄だ”というようなことを言って、修学中の学生を苦悩させるのは違うでしょう。私も起業講座では“変な大人には引っかかるなよ”とよく言っています(笑)。そういう意味でも、学術機関と行政が連携するなかで、学生が健全な起業家コミュニティーと出会う機会を作ることは有意義なことだと思います」
――海外に比べると日本の学生の起業意識は低いといわれていましたが、2024年度は大学発ベンチャー数が過去最高を記録しました。
「環境が整ってきたということが大きいと思います。海外、特にアメリカやイスラエルなどは、起業意識に触れたりトレーニングを受ける環境が整っていて、学部教育の中にもアントレプレナーシップ教育が取り入れられています。日本だと、アントレプレナーシップ教育が文系の学部にだけ入っていることがあるのですが、本来は文系理系関係なく必要なもの。むしろ文系理系、どの学部でも、さらには大学の垣根も超えてつながることができるアントレプレナーシップ教育の場が必要だと思います。そして、そんな学生たちが自然と集まる場作りも大切だと思います。アントレプレナーシップを持った学生が大学の垣根を超えて集まることができて、 OB・OG、企業や行政ともつながる場があれば、そこからどんどんネットワークが広がっていくはずです。現在も、大学や行政が作ったインキュベーションの場はあるのですが、実際に行ってみると大抵すごく静か(笑)。大学や行政がそういう空間を作って終わり、ではなく、若い学生たちが積極的に集うことができる活気あふれる場にすることが大切です。例えば、大学キャンパスの近くにそういう場がどんどんできれば、やがてシリコンバレーならぬ“東京バレー”が生まれるかもしれません」
――起業を意識する多くの学生に向き合ってきた朝日先生ですが、起業に向く学生と向かない学生はいると感じますか。
「確かに最初から起業に向いている学生はいます。しかし最初はフィットしていない学生でも経験とトレーニングを受けて起業家として成長する人は少なくありません。ですから私は、大学のアントレプレナーシップ教育においてはまず“何をやりたいのかまだよく分からないけど、何かをやりたい気持ちはある”という学生を増やすことが大事ではないかと思っています」
――最後に、起業を意識する学生や若い世代にアドバイスを。
「“何かをやりたい気持ち”があって起業を選択肢の一つとして意識したなら、まずは自分の大学の起業講座などに参加してみてください。大学の中に無ければ、自治体や起業支援が充実した企業のプログラムに参加してみるのもよいでしょう。結局、起業するにしても、アカデミアの研究者や企業人になっても、自分が何をしたいか、どんな新しいことに挑戦したいかを考えて、実行することが大事です。とくに学生のうちは、失敗は経験にしかなりませんから」
(TOKYO HEADLINE・秋吉布由子)

