金なんか要らない! バズらなくても良い! 本物は必ず大成する。牛乳石鹸良い石鹸!〈徳井健太の菩薩目線第291回〉
“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第291回目は、老舗について、独自の梵鐘を鳴らす――。
ボディソープを変えたせいか、突然、風呂場のカビが目立つようになった。次第に、ボディソープを使うたびに目もかゆくなってきた。直接目に入ったわけではないから、成分的なものによる刺激なのかもしれない。「これはダメだ」。
いいボディソープはないかと調べていると、Xで「ミルキィ」のボディソープがバズっていた。当該のツイートを見ると、「ミルキィ」を使うだけで浴室床まできれいになるらしい。先のボディソープはカビが目立つようになったのだから、商品次第でカビの増減が起こるのは不思議ではない。
触発されたユーザーたちは、こぞって「ミルキィ」を使用し、「うちもきれいになった」といった声を寄せていた。これは我が家も試してみるしかない。思い立ったが吉日。早速ドラッグストアへ行き、商品を購入し、実際に使ってみると……信じられないくらいカビが落ちた。目もかゆくならない。ナニコレ。タココラ。
「ミルキィ」は、牛乳石鹸――牛のイラストが描かれた赤い箱のパッケージが印象的なあの石鹸を作っている、牛乳石鹸共進社が発売しているボディソープだ。その歴史を調べると、牛乳石鹸が長年培ってきた「石けんのやさしさ」を、現代のボディソープとして、1998年に「ミルキィボディソープ」として発売したという。
驚くべきは、牛乳石鹸共進社が百年企業だという点だ。創業は、1909年(明治42年)。満州のハルビン駅で伊藤博文が暗殺された年だから、今を生きる僕らからすれば、はるか昔のように感じる。それほどまでに歴史ある企業が、令和のSNSで大バズリする。SNSには悪い面と良い面があるけれど、この再発見はSNSのおかげといわざるを得ない。
この反響を受け、牛乳石鹸の公式Xが反応する。そのアンサーも、僕の胸を打ち抜いた。要約すると、
・注目いただきありがとうございます
・浴室床の洗浄効果について当社から保障・確認することは難しい
・本来の用途とは異なるため、滑りやすくなるなど安全面での影響が生じるかもしれない。そのため異なるご利用は控えてほしい
・赤ちゃんから大人まで家族全員で心地よく使えますので、日々のボディケアに今後ともお役立ていただけたら
スマート。ソー スマート。一切のおごりがありません。なんだったら絶賛されている用途は、「控えてほしい」とまで言う。僕は、ここに百年企業のすごみを見た気がした。良いものを突き詰めて作った結果、たまたまそうした効果がある(のかもしれない)という副作用を生んだにすぎない。狙いに行く姿勢ではたどり着けない領域。何事も、妥協をしない姿勢に勝るものはないということだろう。
老舗が、どうして良いものを作れるのだろうと考えたとき、商業主義的な観点がまだ乏しかった時代だからではないかと邪推した。100年前の日本は、日清・日露戦争に勝利し、列強の仲間入りを果たしていく最中とは言え、十分にモノが豊かではない。そうした中で起業し、商品を生み出していった人たちは、本当に必要なもの、本当に求められているものを作ったのだと思う。おそらく、敗戦直後も同じような思いを抱えた、当時の起業家は多かったのだろう。
だけど、どんどん豊かに、コマーシャルになるにつれ、「本当に必要なもの」「本当に求められているもの」より、「どうすればお金を使ってくれるか」「どうすれば選ばれるか」の方に比重は傾いていく。我が家の風呂場にカビが増え、僕の目がかゆくなったのは、時代の驕りそのものだ。うちの浴室床は、商業主義に侵食されたのだ。
牛乳石鹸が掲げている企業メッセージは、「ずっと変わらぬ やさしさを」。ずっと変わらない。それがどれだけすごいことか。「愛用」されるとはどういうことか。あらためて、その言葉の意味を知るきっかけとなった「ミルキィ」、ありがとう。牛乳石鹸共進社さん、ありがとう。
公式ツイッター:https://twitter.com/nagomigozen
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UC-9P1uMojDoe1QM49wmSGmw
講演依頼:https://www.speakers.jp/speaker/tokui-kenta/
https://www.sbrain.co.jp/keyperson/K-19533.htm
https://youtu.be/VqKYn26Q2-o?si=M7p7KLIyjLBrgIk0

