就寝前の家族対抗Netflix大会。AIよりも知人友人の口コミに勝るおススメなし!〈徳井健太の菩薩目線第292回〉
“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第292回目は、口コミについて、独自の梵鐘を鳴らす――。
かれこれ4 ~5年は続いているだろうか。寝る前に、家族でNetflixを見ることが習慣になっている。ただし、うちの奥さんには厳しい制約がある。
一つ、残酷なシーンがダメ。二つ、ユーモアがなければダメ。三つ、展開がスピーディーでなければダメ。これらをかいくぐって、面白い作品を見つけなければならない。お察しの通り、めっちゃ難しいです。
例えば、世界的なヒット作である『イカゲーム』なんて論外。『地面師』もNG。『九条の大罪』もごめんなさい。『ストレンジャーシングス』は、最初こそ面白く見ていたものの、途中から離脱してしまいました。
残酷だったりブラックだったり、いわゆるR18的なシーンがなかったとしても、物語に進展がないようなものは、「面白味が欠ける」ということで、奥さんは打ち切ってしまう。偏食が過ぎるのです。
では、一体、何だったら受け付けるのか? 一番最初にハマったのが、『プリズン・ブレイク』でした。劇中、残酷なシーンがあるっちゃあるものの、残酷なシーンを前提とした作品ではないこと、さらにはストーリーが圧倒的に面白いということで、最後まで完遂。『イカゲーム』は典型的ですが、ブラックなシーンを前提とした物語は、即座にシャッターが閉じられてしまうのです。
『プリズン・ブレイク』に始まり、『僕のヒーローアカデミア』などなど、厳しい制限を交わしながら、4~ 5年観ているわけですが、自分たちの趣味――というか、奥さんの味覚に合う面白い作品を見つけることは、徐々に難しくなってきている。
先日、『よしもとドラマ部』にお邪魔してきた。同部は、福田恵悟(LLR)、村上健志(フルーツポンチ)ら、テレビドラマが大好きな吉本興業所属の芸人たちによる総称で、国内ドラマの魅力をYouTubeなどで発信している。
彼らは主に国内ドラマについて話すわけだけど、「何でもいいからおすすめしてください」ということで、『プリズン・ブレイク』を紹介することにした。ところが、ドラマ部のメンバーは誰一人として『プリズン・ブレイク』を「観たことがない」と言い、僕はひっくり返りそうになった。『よしもとドラマ部』と銘打っているのだから、海外の王道作品くらいは、誰か一人でも見ていてほしい……というのは、こちらの独りよがりか。とは言え、『プロレス部』なるものがあったとして、「国内のプロレスしか見てません」では説得力に欠けるような気もするだけに、海外ドラマ担当のポストも作るべきではないかとも思う。
僕のプレゼンで、彼らが『プリズン・ブレイク』にハマってくれたらうれしいなぁなんて思いながら収録を終えると、一人のスタッフさんが、「徳井さん、僕も『プリズン・ブレイク』、めっちゃ好きなんですよ」と声をかけてくれた。こんなところにいたのか、同志よ。少し話し込むと、彼は、
「徳井さん、『サバイバー』を見てください」
と、まるで秘密の合言葉を授けるように去っていった。気になった僕は、『サバイバー』の概要を調べると、同作は『24 -TWENTY FOUR-』のキーファー・サザーランドが主演を務める国家転覆サスペンスということらしい。 連邦議会議事堂がテロによって爆破され、大統領や主要閣僚が全員死亡すると、下位閣僚のトム・カークマンが、突如としてアメリカ合衆国大統領に就任することに。政治経験の浅い学究肌の彼が、陰謀うずまく政界で国家の崩壊を防ぐため奮闘する――。
結論から言えば、僕ら夫婦をとても満足させる作品で、めちゃくちゃ面白かった。観終わった後、奥さんは「もう出会えない」「終わってしまった」と失意の底に沈んでしまった。彼女は、面白い作品を見終わると、決まって「楽しみがなくなった」と落ち込んでしまう。そのたびに、僕は「いやいや、そうは言うけど、しばらくすると面白い作品に出会えているじゃない。またあるから」と、よくわからない励ましの言葉をおくる。「いや、もうないよ」、「絶対にあるから」。このラリーも4~5年、続いている。
「ある」とは言ってみるものの、先の条件に鑑みると、奥さんの味覚に合致する作品を探すことは容易ではない。そこで僕は、AIに先述した条件を入れ、そして、今まで自分たちが面白いと感じた作品を列記し、「これらを踏まえた上で僕らが面白いと思えるような、Netflix上の作品を提案して」とお願いした。
AIは、かなりの数の作品を挙げ、僕らはその提案に従って、1つずつ見ていった。だけど、そのすべてが2話以降、見る気にはなれないものばかりだった。極めてつまらなかったのだ。
「やっぱり、もうない」
「絶対にあるから」
ある日、仕事で向かったボートレース戸田で、共演者の芸人たちに「こういう条件で面白いのない?」と聞いてみた。すると、ボートレース芸人のすーなかが、「僕の奥さんが『おつかれさま』という韓国ドラマがめっちゃいいって言ってました」と教えてくれた。その話を横で聞いていた他のメンバーたちも、「泣けるって話題ですよね。めっちゃ面白いらしいです」と沸き立った。先日のAIは、『おつかれさま』なんてドラマはまるでおすすめしていなかったのに。
早速、すーなかの助言に従って、『おつかれさま』を観ると、めっちゃ面白かった。最高だった。
完走すると、また奥さんは沈んでしまったが、僕は「AIって何だろう」と思いふけっていた。やっぱり口コミじゃないか。
Netflixに加入したばかりで、「何を見ればいいかわからない」状態なら、AIはいくつかのおすすめ――最適解を提示してくれると思う。だけど、自分にそれなりの知識やこだわりがある状態では、AIは良いアドバイザーであるとは限らないのではないか。自分がゼロの状態であれば……いや、ゼロだと騙されているかどうかもわからないから、やっぱりヒト対ヒトなんだと思う。僕らは便利なものを頼ってしまう。でも、本当に自分にとって栄養価のあるものは、周りの人間からでしか得られないのだと思ったのです。
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