「家具の彫刻家」と讃えられる北欧家具の巨匠 知っておきたい名作家具(4) フィン・ユールの美しき世界

出典名:Finn Juhl Art Museum Club

■デンマークの家具を世界に知らしめた巨匠の生
 20世紀中頃、それは北欧家具の黄金期と呼ばれた時代。その時代に大活躍したのが、名作家具を次々に生み出したデンマーク人のフィン・ユールです。先に述べましたが、彼の家具のいちばんの特長は、その美しい曲線と考え抜かれた完成美にありました。

 まずは、デンマークが生んだ巨匠フィン・ユールの生涯について触れたいと思います。

 1912年、彼はデンマークのコペンハーゲンで生まれました。デンマーク王立美術大学で建築を学び、1934年に大学を卒業。その後、建築家のヴィヘルム・ラオリッツェンの事務所で働き始めました。

 建築学を専攻していたフィンのデザインは、当時のインテリアマイスター達のものと大きく異なっていました。そのため、彼のデザインの独創性の部分ばかりが悪目立ちしてしまい、実際の家具構造については脆弱さが見え隠れしていたのです。

 そんな彼に対する世間の評価が変わったのは1937年のこと。当時スネーカーマスター(技を極めた家具職人の最高位)として有名だったニールス・ヴォッダーという人物とパートナーを組むようになり、キャビネットメーカーの展示会に出展します。

 ヴォッダ―とパートナーを組んだ途端、それまでは世間から否定されていた彼の「脆さと独創性」が、世間から魅力的な個性として認められるようになったのです。さらにフィンは、加工がむずかしいといわれたチーク材を積極的にメイン素材として取り扱うことにも成功しました。

 そうして1940年、彼はあの『ペリカン・チェア』を発表します。