清久健也「常に“一番乗り”が成功とは限らない。タイミングを見極める目が大事」

事業を成功に導くために必要な“読む力”

 ITを活用してお金の請求・入金・管理・運用を行う株式会社ROBOT PAYMENT。今後ますます金融とITの融合であるFinTechが世の中に浸透していく中で、時代のニーズが求めるものを見抜く力も問われていく。世界のトレンドともいえる事業を成功に導くにあたって必要なことを代表取締役の清久健也氏に聞いた—。

清久健也(きよく けんや) 1970年、山口県生まれ。1993年に東京大学工学部を卒業後、株式会社電通に入社。国内大手自動車メーカーのコマーシャルやモーターショーといったプロモーション業務などに携わる。2000年にインターネット決済代行サービスを手がける株式会社J-Paymentを設立し、代表取締役に就任する。2017年に社名を株式会社ROBOT PAYMENTに変更。創業以来17年間で蓄積されたノウハウを生かした『請求管理ロボ』は、ベンチャー・中小・中堅・大手企業も含めて500社以上に導入されている。

「お金のやり取りをよりスピーディーにする一翼を担いたい」と語る清久氏が率いるROBOT PAYMENTは、決済代行事業「オンライン決済サービス」とクラウドサービス事業「請求管理ロボ」を主たる事業内容として展開している。

「前者はECサイトやネット通販ショップとクレジットカード会社などの間に立ち、クレジットカード決済・口座振替などさまざまな決済手段を提供するサービス。会社設立当時から行っている事業で3000社ほどのお客様がいます。後者は、今から3年ほど前にスタートした新事業。これまでエクセルと手作業で行っていた請求・消込・催促の作業を全て自動化し、請求管理業務に必要な管理をまとめて操作できるクラウドサービスです」

 請求管理ロボは、開始3年で自社の決済代行事業に匹敵する年間約350億円の売り上げを記録。「“自分たちの勝てる領域のサービスは何か”を徹底的に考えたからこそ結果につながっている」と清久氏は振り返る。

「我々は“継続課金”と呼ばれる毎月生じるお金を動かすことが得意分野だった。よくよく市場を見渡すと(お金を回収する)請求書に関するクラウドサービスがなかった。これはチャンスだなと(笑)」

 子どもの頃からパソコンやゲームに勤しむ、俗にいう「オタク気質」だったという清久氏。脱サラして起業を決意したとき、頭をよぎったのはITの世界で勝負してみたいという思いだった。

「サイバーエージェントの藤田社長が20代で上場を成し遂げるなど、同世代が活躍する姿を横目で見ていて触発されるものがありました。2000年当時は、ITビジネスの波が日本にも到来していた時期。ITに明るいと自負していたので俺にだってできる、と。とはいえ、同じことをしても意味はない。次に何が求められるか?を考え、アメリカで台頭していた決済代行事業を始めるに至りました」

 起業をする上で「時代を読む力が必要」と力説する清久氏だが、「ただ読むだけでは上手くいかない」とも釘を刺す。

「タイミングが大事。早すぎても良くないし、遅すぎるのはもっと良くない。決済代行サービスは、日本で市場ができつつある中で、4番目に参入したため現在も後手に回っている感が否めない。対して、管理請求ロボは我々がパイオニア。しかし、その分トライ&エラーも多くコストもかかった。最も賢い方法って、1位を追い抜ける位置にいる2番手をキープすることだと思うんです。先頭を走る1位がどんな展開をして、どこにスキがあるか見極める…そこにこそ読む力が問われている。事業を成功させるには、“2番でいい”という感覚も必要だと思います」

 さらに会社を成功に導くためには「人には得手不得手があるので、不得手な分野に関しては人に頼ることも大切」と清久氏は続ける。

「私は何かを考えたり、人と人をつなぐことが得意である一方、マネジメントなどは不得意(笑)。不得意なものは、得意な他の人に任せたほうがいい。仮に自社にそういった人材がいないのであれば、信頼できる外部の人を頼るべき。他力本願ではなく、他力を上手に賢く使うことも経営者にとって必要なことだと、最近痛感するんですよね」

 今後ますますFinTechは拡大していくといわれている。清久社長の次なる一手は何だろうか?

「お金のやり取りは、より利便性が高いものに、スピーディーなものに変容していきます。請求管理業務の市場は、拡大の余地がたくさんある。例えば、データを入れて未収金が発生した場合、まだ人間によるチェックが必要ですが、それすらもクラウド上で管理し、自動化していくでしょう。そのためのサービスを構築していきたい。我々が誇る決済インフラを生かせるオプションを増やすことで、これまでとは違う入り口から新しいニーズを増やし、シナジー効果を狙いたい」

 最後に、これから起業を目指す人たちへメッセージを聞いてみた。

「一緒に楽しもうということですね。起業と聞くと何か孤独なイメージがあるかもしれないけど、起業家同士が抱える苦楽って似たり寄ったりなんです。社員が育たないとか売り上げが伸びたとか。実は共有できることがたくさんあって、その醍醐味は起業した者にしか分からない(笑)。ですから、“一緒に楽しみましょう”と伝えたいですね」

起業をする人・考える人への応援メッセージ
一緒に楽しみましょう!
清久健也
清久健也セミナー「新規事業の立ち上げから現在まで」(仮)2月開催予定
(株式会社ROBOT PAYMENT 代表取締役)


【開催日時】2018年2月開催予定
【場所】Startup Hub Tokyo
 金融とITの融合であるFinTechがますます世の中に浸透している現在、ITを活用してお金の請求・入金・管理・運用を行うサービスを立ち上げ成長を遂げている株式会社ROBOT PAYMENTの清久健也氏が登壇。

Startup Hub Tokyo
【住所】千代田区丸の内2-1-1 明治安田生命ビル TOKYO創業ステーション1F
【時間】平日 10〜22時 土日祝 10〜18時
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